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» 2018年06月26日 10時00分 公開

「マナミさん」「AIリーガルbot」の実力とは? チャットbot最前線IT導入完全ガイド(4/6 ページ)

[土肥正弘,ドキュメント工房]

AIサービスを使ってメンテナンス工数を削減、対応品質を向上

 順調に利用数を伸ばしてきたマナミさんだが、裏側では運用上の課題が明らかになっていた。対応ログが増えるに従って、問い合わせと回答の整合性や結果への満足度を向上させるためのメンテナンス作業に時間がかかり、改善までのサイクルが長期化していたという。そこで2017年に大きな改修が行われた。会話エンジンを、IBM Watsonの機械学習エンジンに替えたのだ。

 メンテナンスの問題点は、顧客からの問い合わせに対して、回答の精度を上げるチューニングが難しく、工数がかかることだった。それまでは専門技術者が問い合わせメッセージの内容を解析して最適な回答にひも付けるための高度な作業が必要だったが、その作業をIBM Watsonの日本語版APIに肩代わりさせた。国内ではほぼ前例のない取り組みではあったが、すでに2年間にわたり積み重ねたチャットbot運用の経験が生き、エンジンの移行はスムーズに進んだという。新生マナミさんは2017年2月にリリースされた。  

 「この改修でメンテナンスにかかる工数はほぼ半減しました。サービス改善のサイクルが短縮化し、それに伴って顧客満足度も向上しました」(小宮氏)

B to Bサイトには「アオイくん」が登場

 マナミさんの成功を受け、2017年4月には、同社のB to Bサイト「ASKUL」にもチャットbotがデビューした(※「SOLOEL ARENA」では2016年9月から)。さわやか系でおちゃめな青年キャラクター「アオイくん」を用いて、顧客企業の発注担当者に愛されるサービスにすることを心掛けているという。ブルーを基調としたB to Bサイトデザインにもマッチするキャラクターになっており、イメージカラーを基に「アオイくん」と名付けられた。

 「アオイくん」の開発・運用にあたる横田 香菜子氏は「注文完了画面にアニメーションを表示したり、『仕事中に椅子の高さを変えるだけで、いつもと違う景色が刺激になって眠気覚ましになるらしいですよ!』といったリラックスできるようなメッセージを送ったりと、働く人の心をほぐすような応答を心掛けています」と語る。B to Bサービスでも顧客とのエンゲージメント強化を追求する姿勢に変わりはない。

「アオイくん」の対応例 図5 「アオイくん」の対応例(出典:アスクル)
「アオイくん」キャラクターの表情は6種類 図6 「アオイくん」キャラクターの表情は6種類(出典:アスクル)

 初代マナミさんを担当していたのは新卒採用の女性で、以降のチャットbotの運用担当者は全て新卒者が任命されてきたという。若い感性とアイデアがサービスに反映されていることも、顧客に愛される秘密なのだろう。同社では、従来チャットbotに関連した業務はコンタクトセンターが担当していたが、2018年4月からはチャットbot専門部署として独立し、さらなる改善に注力する。

次の課題はパーソナライズされた顧客対応によるエンゲージメント強化

 今後の構想として、まずはLINE以外のチャネルにおいても、チャットbotから有人対応への切り替えを盛り込むことが予定されている。また、その次のステップとしては、有人対応あるいはWebサイトからの操作が必要になっている部分をなくし、全ての対応をチャットbot上で完結させることがテーマだ。

「FAQベースで共通の対応を行うばかりでなく、個別に1 to 1の対応をできるようにしたい」(横田氏) そのためには、配送日の変更といった顧客の個別情報が必要な問い合わせにも対応する必要がある。実際に、他の業務システムとデータを連携させるオペレーションを取り込む計画もあり、すでに開発を進めているとのことだ。2018年内には、大きな機能拡張が実現しそうである。

 こうした進化の軸にあるのは、やはり顧客満足度の向上だ。「チャットbotはコスト削減策ではなくお客さまとのエンゲージメントを高める手段。顧客満足度を上げることを目的にするべき」と、あくまで顧客エンゲージメントに重きを置いているのが、同社のチャットbot開発、運用の特徴といえるだろう。

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