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» 2019年05月15日 08時00分 公開

指摘される5Gのボトルネックとは? 6Gにつながる「Beyond 5G」最前線(3/4 ページ)

[土肥正弘,ドキュメント工房]

テラヘルツ帯の電波を使って一気に高速化

 図1上部に示した無線機器本体とアンテナの2点間を無線でつなぐ部分に注目しよう。これまでの携帯電話網はスマートフォンなど人が使うデバイスを中心に構築されてきたため、通信のカバーエリアは人口カバー率で示されることがほとんどだったが、IoTデバイスによる環境モニタリングや田畑をはじめとした圃場管理、畜産管理などの用途では人のいない農場や離島なども広くカバーする必要がある。その視点から見ると、現在は全土の6割程度しかカバーしていないことになる。光ケーブルを敷設することが難しい広いエリアでは、基地局間、あるいは基地局の装置とアンテナを結ぶ通信を、無線にするほうがシンプルな解決になる。そのためには、遠距離間を高速で通信できる無線通信システムが必要だ。

 そこで、遠隔地の2点間無線通信には、広い帯域が利用可能なテラヘルツ帯域(100GHz〜10THz、波長3mm〜30μmの範囲の周波数帯域を指す)の利用が有望視されている。現在のところ世界の周波数帯割り当ては275GHz以下の帯域でのみ決められており、それよりも上の、例えば300GHz帯では、従来の割り当て周波数帯では到底期待できない幅広い帯域幅(帯域幅が広ければ広いほど通信は高速化できる)が割り当てられる可能性があるからだ。この帯域で十分な帯域幅が確保できれば、5Gの目標データレートの10倍、100Gbpsの高速通信も実現可能になり、通信容量不足の心配がなくなる。また波長が短いことからアンテナの格段の小型化が期待でき、例えば照明器具へのアンテナ搭載などもラクになりそうだ。さらに消費電力面でも、高速化が進めば進むほどエネルギー利用効率が高くなるため、利点が大きい。

Beyond5G向け技術としての実用化を目指すプロジェクト

 そこに着目したのが、「大容量アプリケーション向けテラヘルツエンドトゥーエンド無線システム」開発プロジェクトだ。この研究では、図2に示すように、コアネットワークからのデジタル信号を、すでに技術がこなれてきている60GHz帯の無線信号を出力する信号処理ユニットで無線信号に変換し、それを大出力進行波管アンプで増幅して300GHz帯の電波として送信する。この部分に、日本側がもつ高速無線信号処理およびテラヘルツ帯増幅技術と、欧州側がもつテラヘルツ帯半導体回路技術が組み合わせられている。送信された電波は1キロ離れた場所にある受信側のアンテナが受信し、複数の基地局にやはり無線か光ファイバーで信号を送るという仕組みだ。

 このプロジェクトでは、実際に屋外で使える100Gbps超級のテラヘルツ利用システムを実現し、Beyond5G向け技術としての実用化を目指している。ひとまずの目標は、実験室内では100Gbps、実環境では40Gbpsの高速伝送だが、ドイツでの予備実験ですでにその目標値の6割程度は実現しているという。

 実環境での40Gbpsという目標値は現在利用可能なモデム性能などの制約によるもので、ゆくゆくはテラヘルツ帯での無線通信の国際標準としてすでに策定済みのIEEE802.15.3d(物理層の規格)に準拠した、315Gbps伝送システムへの拡張も可能だとのことだ。また伝送モデル構築や標準化への貢献も目的の一部だ。

図2 大容量アプリケーション向けテラヘルツエンドトゥーエンド無線システムのイメージ 大容量アプリケーション向けテラヘルツエンドトゥーエンド無線システムのイメージ(早稲田大学 川西研究室)

 なお、このような2点を結ぶ高速無線ネットワークは、一般的な光ファイバーネットワーク障害時のバックアップ回線として利用もできるだけでなく、災害やイベント開催時などの臨時回線設営にも便利に使うことができる。山間部などのラストワンマイルとしても利用価値が高い。

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