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» 2018年06月27日 10時00分 公開

米国のイベントに見る、海外ブロックチェーン事情すご腕アナリスト市場予測(4/4 ページ)

[亀津敦,野村総合研究所]
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 もちろん、現在のところブロックチェーンは成熟した技術ではなく、まだまだ発展途上の段階にある。そのため、これまで述べたようなビジネスの転換に寄与するまでには超えなければいけない課題も多い。

仮想通貨のハッキングで露呈した、セキュリティリスクへの対応

 まず挙げられるのが、セキュリティに関する取り組みだろう。仮想通貨の取引所のハッキングが日本だけでなく海外でも話題となっているが、セキュリティリスクは仮想通貨が保管されているウォレットを狙ったものだけではない。

 ブロックチェーンに記述されたスマートコントラクト(契約を自動実行するプログラム)の不備を突いて不正な契約を実行し、結果として不正にトークンを搾取するといった攻撃が行われている。金銭的な価値を盗むことを目的としたハッキングだけではなく、自動実行される組織間の契約を不正に制御できてしまう可能性もはらんでいるのだ。

 スマートコントラクトのプログラム環境の成熟度が上がることによってバグやエラーは減るであろうが、ブロックチェーンに埋め込まれたコードを監査する技術が最近注目を集めている。

トランザクション確認が必要であるが故のパフォーマンス

 パフォーマンスの問題も重要な問題である。ブロックチェーンの技術は「分散台帳」といわれるように、簡単に言ってしまえば取引の結果を記述した台帳(Ledger)を複数のノードで共有・確認することで改ざん不可能な監視体制を引くというものである。

 原理上一つのトランザクションの確認を複数のノードが行うために時間がかかり、例えばビットコインのブロックチェーンであれば秒間7トランザクション程度、イーサリウムであれば秒間15トランザクション程度のパフォーマンスしかこなせないのが現状だ。従って、オンライントランザクション処理のようなごく短時間のレスポンスが必要なアプリケーション開発には向かない。

 トランザクションの高速化を図るための技術開発は既に始まっており、ブロックチェーンの“レイヤー2”技術、と呼ばれている。しかし、当面のところはブロックチェーン技術の特性を見きわめて、特性にあった使い方をしていく必要があるだろう。

人材不足が叫ばれるブロックチェーン技術者の確保

 ここで大きな問題となってくるのが、ブロックチェーン技術者の少なさである。コンセンサスに参加した中国系のブロックチェーンプロジェクトの有識者によれば、米国と中国を合わせてもブロックチェーン技術者は数百人程度しかおらず、人材が逼迫(ひっぱく)しているという。

 そのような背景も反映しているのであろうか、Microsoft、Amazon(AWS)、SAP、IBMなどの大手プレーヤーやベンチャーから、ブロックチェーン開発をアジャイルに進めるための開発環境の提供が相次いでいる。

 ニューヨークのブロックチェーンテクノロジー企業Consensysは、Consensus 2018の会期中にAmazon AWSと提携した企業向けイーサリアム開発環境をSaaSとして提供する(Kaleido.io)と発表した。また、Microsoftは5月初頭のMicrosoft Buildカンファレンスで「Azure Blockchain Workbench」を発表している。クリックだけでコンソーシアム型ブロックチェーンを構築でき、ブロックチェーンのPoCを迅速化するのが売りだ。

 いずれも、ユーザー企業が一からブロックチェーン基盤を自社リソース上で構築し始めなくても早くブロックチェーン基盤を開発することができることを目指している。「ブロックチェーンは技術が難しい」というのは、ブロックチェーンプロジェクトの大きな障壁となっているが、開発環境の充実によって、企業の取り組みが加速することが期待できそうである。

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