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仮想化時代のソフトウェア資産管理、ライセンス違反で億円単位の請求も?IT導入完全ガイド(1/3 ページ)

Oracle DBやVMなどのライセンス管理はしっかりできているか。煩雑化しがちなサーバ仮想環境のライセンス管理を怠ると数億円レベルの請求があるかもしれない。

» 2016年09月20日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 企業システムの運用管理は「システムを止めない」ことが重要だ。しかしクラウド、モバイル、オープンソースソフトウェアなど、従来のシステム運用管理がそのまま適用できない技術の導入、運用の必要性が高まっている現在、課題となっているのがライセンス違反を犯しやすいソフトウェア資産の管理だ。

 管理されていないソフトウェアはセキュリティリスクともなり、TCOの適正化を妨げるものでもある。今回は、特にライセンスのバリエーションについて、クラウド/仮想化環境やモバイル環境の場合を含めて考えてみる。次回は、ソフトウェア資産管理の意義とメリットについて基礎的部分から解説する。

ライセンスコストを3億円削減、ソフトウェア資産管理の効用

 従来の「ソフトウェア管理」はシステム運用管理の効率化とセキュリティの標準化を主な目的としてきたが、「ソフトウェア資産管理」はこれにライセンスや利用実態をひも付け、ライセンス契約の利用条件と利用実態とを「見える化」して、ライセンス違反を犯さず、無駄な契約を見直し、コンプライアンスを徹底、ソフトウェアベンダーなどによる監査の際にも説明責任を果たせるようにする目的を加えたものといえる。

 この考え方は国内では数年前から広がり始めたが、そのきっかけはリーマンショック後のソフトウェアベンダーによるユーザー企業のライセンス使用状況の監査だ。一部のソフトウェアの使用状況(統計的情報)は通信経由でベンダー側が管理可能になっており、監査の対象になって「〇〇本のライセンスが不足しているので監査補正料金を支払って欲しい」といわれると、自社にデータがなければ唯々諾々と従うしかない。

 しかしベンダーは「ライセンス不足」は指摘しても「過剰」については監査しない。実際には導入したもののあまり利用されていないソフトウェアもあったりするもの。ライセンス契約内容にもよるが、その情報が確実に取れていれば、ベンダーとの交渉の余地がある。ある著名ERPツールのユーザー企業の中には、監査によって毎年ライセンス追加を求められ、億円単位の支出がその度にあったという。

 これではたまらないと自社でソフトウェア資産管理を行ったところ、毎年増えるユーザーライセンスがある一方で、減るユーザーライセンスもあり、総合的なライセンス数は過剰になっていることが分かった。そのデータをもとにベンダーと交渉し、何と約3億円のライセンスコスト削減に成功した。

 このような効用がソフトウェア資産管理のメリットの1つだが、別にベンダーの監査に対抗するのが目的ではない。経営上のガバナンスを高め、コンプライアンスとセキュリティを徹底し、その上でライセンスの適正化やTCO削減を図るという大きなスコープを持つものだ。

 ソフトウェア資産管理の重要性が認識されるにつれ、IT資産管理ツールの側でもライセンス管理機能を備え、インストールされているソフトウェアを分類してライセンスの詳細や、ライセンス契約情報の所在、あるいは内容そのもの(証書画像やテキスト、書類など)をひも付けて管理できる機能を付け加えている(図1)。

図1 IT資産管理ツールによるソフトウェア資産管理画面の一例 図1 IT資産管理ツールによるソフトウェア資産管理画面の一例(出典:ディー・オー・エス)

 管理対象とするのは、クライアントPCや業務サーバ、管理用サーバなどのソフトウェアが導入されるデバイス全てである。また社屋内のデバイスにとどまらず、外部のデータセンタ内で運用されるサーバ、IaaSやPaaSも対象だ。サーバ仮想化、クライアント仮想化を行っている場合も、仮想サーバや仮想PCおよび物理サーバそのものが対象になる。

 特にクラウドサービスやオンプレミスの仮想サーバ、仮想デスクトップ環境では、ソフトウェアライセンスが適切に守られているか判別できないケースが増えてきた。厄介なのは環境が短時間で簡単に増強・縮退できてしまうことだ。リソースに対応してライセンス料金が異なるソフトウェアの場合、知らず知らずのうちにライセンス違反を犯しているケースが珍しくない。

 ソフトウェア資産管理はそのようなケースを早期に発見して是正できるのがメリットの1つだ。ソフトウェアライセンスは後述するようにバリエーションが無限と思えるほどある。人手での管理は、システム規模がよほど小さい場合でなければ不可能に近い。そこでツールが利用されるが、ツール側でも全てのケースに対応できるわけではない。とはいえ、普及している代表的なソフトウェアについては、簡単な操作でライセンスの過不足などがひと目で分かるような機能が盛り込まれているツールがある。

図2 ソフトウェアのライセンス一覧(上)とライセンス過不足の判定(下) 図2 ソフトウェアのライセンス一覧(上)とライセンス過不足の判定(下)(出典:ディー・オー・エス)

 では、このようなツールを使わなければ分からないソフトウェア資産とはどのようなものだろうか。以下に管理を難しくしているライセンスのバリエーションについて述べる。

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