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明日の情シスが担うべき職種、データサイエンティストとはすご腕アナリスト市場予測(5/5 ページ)

» 2014年07月17日 10時00分 公開
[眞鍋 敬IDC Japan]
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IT部門はどう変わるべきなのか?

 さて、IT部門そのものは今後どのようになるのだろうか。冒頭に挙げたようにIT部門解体、再生を強い論調で薦める向きがある。それほどドラスチックに行わなくてもよいだろうが、ビジネスの中でどんな役割が果たせるのかを明確にしていくことは不可欠だ。

 クラウドサービスが業務部門で簡単に使えるようになった今、IT部門の意義が問われている。それに対する解答は、売上や利益を上げるための存在だということでなければならない。部門の存続を図るなら、経営層や他部門に存在理由を納得してもらう必要がある。

 すると、単にシステムの安定稼働だけを目的とした業務の継続は、存続の根拠が薄いと言わざるを得ない。クラウド化やアウトソーシングにより、部門から切り離すことを考えなければならないだろう。

 しかし、例えば常に変更がある生産管理情報システムの運用やメンテナンス、改修という運用管理部門の仕事は売上や利益に直結している。これは今後も継続していく十分な理由がある。またリスク管理の要となる情報セキュリティも今後ますます重要になる仕事だ。こうしたビジネスに貢献できる仕事で、しかもIT部門が組織として対応すべき仕事だけが今後残っていくことになるだろう。

 だが、それだけでは足りない。経営が求めているのは企業間競争力をさらに強めるための取り組みだ。例えば、ある国内メジャー流通業者では総額1000億円といわれるビッグデータ利用システムを作ろうとしているが、その入札条件にはシステム上のデータ分析能力の他、マーケティング能力が指定された。これに応えて入札できた単独企業はなく、システムベンダーと広告代理店、あるいはデータ分析専門企業が加わった幾つかの共同チームだけだった。

 この事例は今後のITと業務部門との関わりを端的に示すものといえよう。ITはプロジェクトを推進する中心になるが、IT技術だけでは経営の目的完遂には不十分、他部門との協業や融合が必要だということだ。

 同じような考え方で、IT部門を解体して業務部門のIT担当に配置替えをした企業の事例もある。トップの決断でIT部門のリソースを、さらに売上に直接貢献できるよう業務部門に移転した例だ。既にIT部門の解体と再編成は始まっている。IT部門に所属する技術者も、従来のままの仕事を続けているだけでは存在意義がなくなる可能性がある。新しいキャリアパスとしてデータサイエンティストは有望な職種だ。

データサイエンティストに必要なスキルは?

 さて、ビッグデータ時代のデータサイエンティストに必要なスキルとは何だろうか。1つはIT知識やノウハウであることは疑いない。特にBAなどの分析ツール、CRM、SCM、ERP、EAといった基幹系、情報系システム、CMS、Web解析、ソーシャル分析などのツールのデータに関する知識や管理ノウハウ、あるいはデータ統合のスキルは大いに役立つだろう。

 これらに共通するのはデータベースに関わるスキルだ。既存RDBMSに加え、インメモリ型やカラム型などビッグデータ分析に必要な高速データベースの知識は最も大事なものになる。

 次いで重要なのは、統計学の基礎知識と、データモデリングのスキルだ。これを身に付けるには、個人で勉強する必要があるものの、管理者としては分析ツールベンダーなどにコンサルを求め、コーチングを受けるような形で部員のスキルアップを図ることを考えてもよいだろう。コンサルタントや教育サービス業者も、しっかりとした教育サービスを提供しているところがある。社会調査や統計学のトレーニングコースもある。

 そして、最終段階で重要になるのがプレゼンテーションスキルだ。分析結果を基にした提案を、経営層や業務部門に提示して、ビジネス判断に生かしてもらうことが究極の目的だ。そのためには数値の羅列ではなく、ダッシュボードやインフォグラフィクスを多用したプレゼン資料作成などを使い、理解、納得してもらえるプレゼンを行うスキルが必要だ。

 そして、全てに共通する根本のスキルが「仮説」を作る能力だ。ビッグデータを相手にしても、データ分析は基本的に仮説の検証になる。ただしこのスキルを単独で伸ばす方法はない。上述のさまざまなスキルを身に付けていくと同時に、経営戦略や事業戦略はもちろん、業務部門の仕事の目的や中身を理解していくことが、この能力を発展させることにつながる。

 以上、データサイエンティストがIT技術者が目指すキャリアとなり得るかどうかを考えてきた。IT技術者は今のままではいけないものの、他の誰よりもデータサイエンティストに近い存在なのではないだろうか。ぜひIT技術を活用し、企業と社会を動かしていける存在として、輝いていただきたいと願っている。

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