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明日の情シスが担うべき職種、データサイエンティストとはすご腕アナリスト市場予測(4/5 ページ)

» 2014年07月17日 10時00分 公開
[眞鍋 敬IDC Japan]

IT技術者がデータサイエンティストとして活躍してこそ課題解決が可能に

 以上の3つの領域の課題に共通するのは、人間の経験や勘を、データ分析に落としこむことが十分にはできていないということだ。特定の人の手を介さずに、常にビッグデータから問題点を探し出し、問題が特定できたら、なるべく自動的に解決していける仕組みを作りたい。

 もちろん一度仕組みができたからといって終わりにはならないので、継続してその仕組みを改善、発展させていくことが重要。その仕事を担う職種として、将来性に期待されているのがデータサイエンティストだ。ここからは、IT部門の技術者がデータサイエンティストに向いている理由と、キャリア移行のポイントについて考えてみよう。

 データサイエンティストにまず必要な能力は、分析軸(例えば顧客セグメント、購入金額、居住地域、年収などの複数次元)を設定することだ。何を分析すれば、どんな結果が出てくるのか、それがビジネスにどう生かせるかを予測しなければ分析軸が決められない(仮説設定)。

 分析のための分析にならないようにするには、考える順番をこの逆にすることが望ましい。ビジネス上にどんな意思決定が必要かを想定して、何を分析すれば解答に近いものが得られそうかを予測する方が、役立つ結果を導きやすいはずだ。その見通しを得るために、データの所在を社内のどの部署よりも熟知しているIT部門はアドバンテージを持っている。

 分析軸の次に大事なのが分析手法だ。社内でデータ分析手法に誰よりも詳しいのはマーケッターである場合が多いだろう。ただし、マーケッターは社内の各部門、各サービスのデータにどんなものがあるのかはにわかにピンと来ない。

 それが分かるのはIT部門だ。マーケティングオートメーションを全社に適用する場合や、事業戦略に基づいた売上向上などを的確に行うには、IT技術者の関与は不可欠。マーケッターの知識やノウハウとIT部門のそれとが一体化すれば、最強の分析チームができるはずだ。そのときマーケッターがIT知識を学ぶより、IT技術者がマーケティングを学ぶ方が、越えるべき障壁が低いのではないだろうか。

 データサイエンティストを目指すなら、IT技術者としてはマーケティングに積極的に参加し、データ分析の手法を学ぶことがよいキャリアパスになりそうだ。

 リスク管理にもいろいろあるが、システム障害対応や情報セキュリティ対策の面では当然情シスが他部門よりもはるかに経験を積んでいる。センサーデータやソーシャルデータなどの収集や分析においてもデータ形式をよく知り、効果的な活用の仕組みを考えられるIT技術者が行うほうが効率がよい。

 ただし、その他のビジネスリスクに関しては、総務部門や各業務部門の方が詳しい場合が多いだろう。従来、業務部門のデータ分析は各部門がツールを導入して利用している場合が多く、部門間でサイロ化しているケースも見受けられる。ゆくゆくはそれらを統合し、より幅広い領域のデータを特定視点で分析できることが望ましい。その統合が効率的にできるのは、やはりIT技術者なのではないだろうか。

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