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サービスデスクツールの効果が分かる3つの事例IT導入完全ガイド(7/7 ページ)

» 2015年06月22日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
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セルフサポート、セルフメンテナンスの可能性も十分検討

 インシデント量を抑えるのに効果的なのが、ユーザーが問合せを行う前に自己解決してくれるセルフサポートや、自分自身でメンテナンスできるセルフメンテナンス、セルフサービスだ。

 セルフサポートは、インシデント管理の結果から出来上がるナレッジをどう公開するかがポイントで、多くはFAQの形で個人ポータルから参照できるようにしている。もっともFAQ作成の手間も大きな問題だ。ツールによってはインシデントの解決法のナレッジをそのまま公開できるものもある(図10)。なるべく管理者の手間をかけずに、自己解決が可能なコンテンツを提供していける機能が必要だ。

ナレッジのユーザーへの公開例 図10 ナレッジのユーザーへの公開例。ソリューションのナレッジをユーザーに向けて公開(出典:ゾーホージャパン)

 セルフメンテナンスやセルフサービスは、従来運用管理部門が業務部門や開発部門からの依頼を受けて作業していた運用管理操作の一部を、ITユーザー自身が自由に行えるようにする仕組みのこと。操作そのものは業務部門や開発部門が必要な都度行ってよいが、必ずサービスデスクツールに操作記録など結果が残るようにする方法だ。例えばサーバ再起動やpingによるネットワーク死活の確認など、リスクの少ない特定操作を業務部門や開発部門に任せれば、運用管理技術者が煩わされずに済む。

 また別のツールの組み合わせにより、もっと複雑な操作も簡単に自動化できる。例えば、業務部門や開発部門が自分でActive Directoryのアカウントロック解除やパスワード再設定ができる機能を提供するツールもある(図11)。Active Directoryのパスワード間違いによるアカウントロックについての問合せは、全体の30〜50%を占めるとも言われているが、厳密な認証機能により安全性を確保しながら使えるこうしたツールがあれば、簡単に問合せの数と対応負荷を減らせる。

アカウントロック解除セルフサービスツールの動作イメージ 図11 アカウントロック解除セルフサービスツールの動作イメージ。ManageEngine ADSelfService Plusの場合(出典:ゾーホージャパン)

 なお、開発部門のクラウドサーバの利用、システムへのユーザー登録などのように、恣意的な運用がリスクを招く場合は承認者を介在させ、安全面に配慮しながらワークフロー内でなるべく手間を省けるようにするとよい。ワークフロー機能と運用管理ツール、ジョブ管理ツールなどとの連携が可能な製品が望ましい。

運用管理コストの可視化とベンダーの評価ができるか

 運用管理コストは可視化が難しいといわれるが、サービスデスク業務や運用管理業務に関してツール上でKPIをまとめたレポートを作成できるため、運用管理改善の資料として、また予算申請の場合の資料として利用できる。また、外注先のITベンダーに関する情報をサービスデスクツールに統合し、標準化したKPIをもとにパフォーマンスやコストを作業内容別に分析することも、ツールによっては可能になっている(図12)。

ベンダー管理機能のイメージ 図12 ベンダー管理機能のイメージ(出典:ユニリタ)

 運用管理の改善を考えるとき、外部業者の協力抜きには難しいケースがほとんどだろう。外部業者との情報共有や、場合によってはワークフロー内への組み込みなど、従来よりも緊密な関係性の構築が必要になってくる。対応スピードや正確性などの把握と改善、コスト最適化のためにも重要だ。

 以上、今回は3つの事例を中心に、サービスデスクツールがどう活用できるかを眺めてきた。大事なのは「運用管理プロセスの整理」、そのプロセスを効果的にツールに「実装」すること、そしてツール利用を「定着」させることだ。あるベンダーでは「現状の運用管理業務を合理化するだけでは必ず行き詰まる」と断言した。これはITの進化に合わせて運用管理業務も変化することを念頭に、将来のあるべき姿を見据えてツール選びや機能実装をしていくべきという意味だ。機能性やコストもさることながら、未来に向けての柔軟性、対応力が確保できるような製品選びをしたいものだ。

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