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iPhoneが“タダ乗りされる”ってどういうこと? AirTagを使った謎技術の真相:625th Lap

2021年4月にAppleは「AirTag」という、今までとは“毛色”の違う製品を発表した。このAirTagの仕組みを使ってAppleのネットワークに入りこめてしまう怪しい技術が開発されたという。

» 2021年08月20日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 2021年4月にAppleは「AirTag」を発表した。500円玉よりも小さい円盤形のもので、いわゆる「紛失防止タグ」と呼ばれる製品だ。発表当初は「Appleがちょっと変わったデバイスを送り出した」と注目を集めた。

 そうした中で、AirTagの仕組みを利用して、Appleのネットワークに入り込めてしまう技術が発見されたと話題になった。しかも、われわれの「iPhone」や「iPad」を踏み台に、“タダ乗り通信”してとのことだ。

 そもそもAppleのネットワークとは? そして、AirTagの仕組みを使った謎技術とは?

 この“タダ乗り通信”の詳細について、セキュリティ企業Positive Securityが2021年5月12日に自社ブログで公表した。

 AppleのAirTagは、「iPhone」や「iPad」とAirTagをBluetoothでひも付けすれば、「探す」アプリを使ってその位置を特定できるというものだ。AirTagを財布や鍵などに付けておけば、紛失したり置き忘れたりしてもすぐに発見できるというわけだ。

 iPhoneやiPadと距離が離れていて、Bluetoothの電波到達距離(約10m)を超えていたとしても、AirTagを見つけることできる。それは、世界中のiPhoneおよびiPadが作り出している「Find My」ネットワークを利用しているからだ。「探す」アプリも利用しているこのネットワークは、たとえAirTagが地球の裏側にあったとしても、周囲にiPhoneやiPadが存在すれば、その位置を把握できる仕組みだ。

 今回の「タダ乗り」は、そのFind Myネットワークを利用したものだ。その仕組みを説明しよう。

 AirTagは初期設定時に、公開鍵と秘密鍵をペアで生成することでユニークなデバイスとして確立する。そして2秒ごとにBluetoothの信号を使って外部に公開鍵を発信し、Find Myネットワークに接続する。iPhoneやiPadはAirTagのBluetooth信号を受信すると、その位置情報を、公開鍵を使って暗号化してAppleのサーバへと送信する。

 ユーザーは「探す」アプリでiPhoneやiPadに登録された公開鍵を使ってAppleのサーバにアクセスして問い合わせ、該当するAirTagが見つかったら、秘密鍵を使って暗号化された位置情報を復号することで、その場所を特定する。

 この時、AppleはAirTagがどの公開鍵と関連付けられているのかは把握していないという。Positive Securityは、この公開鍵を偽造してデータを埋め込むことで、世界中に張り巡らされたFind Myネットワークにタダ乗りしてデータの送信が可能になると考えたのだ。

 データの送信側は、送りたいデータを1ビットごとに分割して、偽造した公開鍵に埋め込む。公開鍵のデータサイズは28バイトで、1つの公開鍵には最大16バイトのデータを埋め込むことができるという。このニセ公開鍵をFind Myネットワークに流すことで、受信側は公開鍵を受け取って復号、必要なデータだけを受信する。

 たった16バイトと思うかもしれないが、連続してニセ公開鍵を送信、受信して復号というプロセスを繰り返すことでそれなりのデータが送受信できるのだという。

 実際にPositive Securityは送信用のハードウェアと受信用のソフトウェアを開発し、毎秒3バイトでデータ送信し、16バイトのデータを最大5秒で受信するのに成功したという。

 同社によれば「この仕組みを使えばインターネットに接続していないデバイスからデータを送信することも可能になる」という。ちなみにこのタダ乗りの仕組みは「AirTagの仕様上、防ぐのは困難だろう」とのこと。同社はこの仕組みを「Send My」と名付け、ソフトのソースコードを公開している。

 このタダ乗り技術、ちょっとしたIoT(モノのインターネット)技術に転用できそうだが、果たして何か実用的に使われることはあるのだろうか。


上司X

上司X: Appleのネットワークにタダ乗りして通信できる技術が発見された、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: なるほど。Find Myネットワークに。


上司X

上司X: いつの間にか俺たちのiPhoneが全部ネットワーク化されていたというね。


ブラックピット

ブラックピット: まあそういうこともあるでしょう。世界に何千何万とiPhoneが存在してるわけですから。


上司X

上司X: これだけ台数が出ていればそういうこともあるか。しかし「探す」アプリがそういう理屈で動作しているとはつゆ知らず……。


ブラックピット

ブラックピット: 確かに、AirTagにしても紛失したiPhoneにしても、なんで位置が分かるのかなとは思っていましたが、そんなカラクリがあったとは。


上司X

上司X: ま、数の勝利ってことだな。世界中にどれだけのAppleデバイスがあるのか、という話だ。そしてこのタダ乗りだよ。


ブラックピット

ブラックピット: そもそも、自分のiPhoneやiPadが誰かのAirTag探しや「探す」アプリのために常に「タダ」で使われていることを考えれば、実害がないなら別にデータ送信されていてもいいんじゃないんですかね。別にどうってことないんじゃないですかね。別に悪いことに使うってワケでもなさそうですし。


上司X

上司X: それはまあ確かにそうかもしれないけど……。この「タダ乗り」が悪用か否かはAppleが判断するとして、まあ今のところ別に何がどうなっているワケでもないから、キミの言う通り「実害はない」ということなのかもしれん。「いったい何に使うのか」っていう疑問は残るが……。iPhoneユーザーとしては、タダ乗りにしてもできれば有効に使ってほしいものだよ。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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