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話題のAI資格「G検定」とは? 数学苦手の記者が育休中に受けてみた編集後記

AI(人工知能)の基礎的な知識が身に付くとして認知度を上げているG検定。数学苦手の“ド文系”で、育児休暇中の記者が受験してみました。20日で挑んだ際の勉強方法やおすすめの参考書、受験のメリットをまとめます。

» 2021年04月30日 11時00分 公開
[溝田萌里キーマンズネット]

 AI(人工知能)分野の資格試験として「JDLA Deep Learning for GENERAL」(G検定)という試験があります。AIに関する基礎的な知識が身に付くとして認知度を上げており、2020年の11月にキーマンズネットで実施した「IT関連の資格保有に関するアンケート」でもG検定に興味を持っているとのコメントを多くいただきました。

 この編集後記では、筆者がG検定を受験した体験についてお伝えします。別途「G検定とは?」(仮題)という記事を公開する予定ですが、本記事はド文系の筆者がドタバタの育休中にG検定をほぼゼロから受験した感想、勉強時間を確保する方法、おすすめの参考書、受験のメリットなどを書きました。「感想が10割」ですが、AIについてゼロから学びたい方、G検定の受験を考えている方の参考になればうれしいです。

G検定とは

 G検定は日本ディープラーニング協会が開催する資格試験で、公式Webサイトに「ディープラーニングを事業に生かすための知識を有しているかを検定する」と記載されています。試験名に「for General」とあるように、幅広い職種のビジネスパーソンを対象としており、非エンジニアも合格を目指せる内容です。

G検定のシラバス

  • 人工知能分野の問題
  • ディープラーニングの概要
  • ディープラーニングの社会実装に向けて
  • 人工知能を巡る動向
  • 機械学習の具体的手法
  • ディープラーニングの手法

 筆者は、2020年の11月にG検定「JDLA Deep Learning for GENERAL 2020#3」を受験しました。育児休暇中でしたが、子供の夜泣きが減り、他のことを考える余裕が出てきたので「AIのことでも勉強してみようかな」と軽い気持ちで受験を決めました。

 結果なんとか合格できました。例年合格ラインは非公開ですが、合格率は5〜7割程度。自宅からオンラインで受験できるので、試験中はWebや書籍で分からない単語を調べられます。とはいえ120分間で約220問を解かなければならず、全てを調べていては時間が足りません。対策なしで合格は難しそうです。

受験前の知識はゼロ(あっても1程度)、数学は悲しい状態

 受験前は、AIに関して「多量のデータから何らかの傾向を導き出し、未知のデータについて推論するものなんだな〜」という漠然とした解釈とともに、「何かのデータを入れたらガラガラポンと答えが返ってくるもの」というイメージを持っていました。機械学習やディープラーニング、教師あり(なし)学習、強化学習……といった用語について何となく知っている程度だったと思います。

 AIに関する取材の機会はあったものの、取材を受けてくださる方々は平たい言葉で分かりやすく説明してくれるので、「ガラガラポン」の中身がどうなっているのか、きちんと理解していたとはいえませんでした。また筆者は文系出身で、大学時代は数学と無縁でした。数字や数式に対する苦手意識があり、見るだけで気持ちが沈むような状態でした。

数学は必要? 文系にも合格は可能?

 「AIの試験だから難しい数式が出てきそう」と不安になる方もいらっしゃると思いますが、G検定は計算が必要な問題はごくわずかでした。仮に計算問題を落としてしまっても他の問題で十分カバーできると思います。

 ちなみに、AIの本質を理解するためには「微分、積分」「ベクトル、行列」「指数関数、対数関数」「多変数関数の微分」「確率、統計」について分かっていなければならないそうです。試験勉強をはじめた当初は私も「数学をきちんと勉強しよう」と意気込みました。しかし、人が数年かかって勉強することを一朝一夕で身に付けられるはずもなく、微分の導関数を自動的に求める方法だけ覚えて試験に臨みました。

勉強時間とおすすめの参考書

 試験の数カ月前に、AIの概要を解説した本をちらりと眺めていましたが、試験勉強に費やした時間は試験前の20日間ほどでした。多いときで1日2時間、たいていは30分〜1時間ほど勉強できれば御の字というところ。子供のお昼寝の時間、就寝前に取り組んでいました。ちなみに「今日は寝たい」という日は遠慮なくお休みしています。人間というもの、英気を養わなければ何もできません。

 以下が、使用したおすすめの参考書と学習方法です。

(約2〜3カ月前)日本ディープラーニング協会の公式テキストを見て挫折

 『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト』(翔泳社)を読み始めましたが、途中でどうも理解できないことが多くなって挫折しました。重要単語が簡潔にまとめられていて良い本なのですが、平たい言葉で解説されているが故に、私のような初心者にはどうしてもイメージしきれない部分がありました。結果、他の本で理解を深めてから用語集として活用し、とても役立ちました。

(約20日前)良書を見つけ、機械学習やディープラーニングの手法を理解する

 『エンジニアなら知っておきたいAIのキホン 機械学習・統計学・アルゴリズムをやさしく解説』(インプレス)という本を読みました。一番におすすめしたい本です。文体は小難しくなく、「ちょっと頼りない上司がAIについて部下の麻里ちゃんに教える」というストーリーの中で、機械学習やディープラーニングの具体的な手法が解説されています。図やグラフを交えた説明に例え話が挟まれ、難しいアルゴリズムの話も身近な事象でイメージできるよう工夫されていて、著者の苦労と情熱がひしひしと伝わってきます。

 一般のビジネスパーソン向けにAIの概念を易しく説明する本では物足りないけれど、数式がたくさんの技術的な本には歯が立たない……といった方には、とてもおすすめできる本です。私はこの本を読んだ後に、公式本の内容がさくっと理解できるようになりました。いつか著者の方に寄稿を依頼したい、とひそかに熱い視線を送っています。

(約10日前)問題集を解き始める

 『最短突破 ディープラーニングG検定(ジェネラリスト)問題集』(技術評論社)を解き始めました。2020年9月に出版された本で、G検定の対策本としては比較的新しく、出題範囲も網羅されている印象です。解説が豊富で、章末にまとめられた用語集が見直しや復習にとても役立ちました。問題ごとに星マークの数で重要度が判断できるようになっているので、優先順位も付けやすいです。

(7日前)無料の模擬試験を受けてみる

 Webサイトで公開されている無料の模擬試験を受けました。正答率は6割ほどで、合格には少し不安な点数です。「無理かも」と気弱になりましたが、とにかく間違えた部分を見直せる状態にしました。

(4日前)公式本、問題集の復習

 基本的な単語は覚えて解答できるように、公式本を眺めたり問題集で間違えたところを見直しました。余談ですが、その後熱を出して「知恵熱だ」と家族をざわつかせ、試験を受けられるか危うい状態になりました。

(2日前)無料の模試を受けてみる、カンペ作り

 上記したものとは別のWebサイトで無料の模擬試験を受けました。正答率は確か7割ほどだったと記憶しています。

 その後は、試験当日に活用するためのカンペ作りです。模試や問題集で間違えた箇所を中心に、重要度が高そうな単語をWordにまとめて自分用の単語集を作りました。その他、今まで読んだ本について、どこにどの情報が記載されているのかを把握して、重要なページはすぐに開けるように付箋を付けたり、ハイライトを引いたりしました。

いざ本番、所感は?

 時間内に終えることを意識して、「分からない問題はすぐ飛ばす」「すぐにWebで調べられそうな内容だけ調べる」「覚えていることは余分に調べない」を意識したところ、5分ほど時間を残して問題を解き終えました。

 例年、G検定はAI分野の動向に関する問題が出題されるのですが、2020#3に関しては個人情報保護法に関する問題が多かったです。

G検定合格のメリットは? 役に立ったのか?

 G検定に合格したことによって、何か劇的な変化があったわけではありませんが、機械学習やディープラーニングの仕組み、具体的な分析方法について学び、これまでの取材でぼんやりとしか理解していなかったことがクリアになりました。他にも幾つか思い付いたメリットを書いてみます。

  • G検定やE資格の合格者が招待されるSlackのグループに参加できる。
  • 人工知能についての概要が理解できた(と思う)。
  • G検定に合格すると名刺に認定マークが入れられる。
  • 求人サイトを見ると、必要な資格にG検定を含んでいる職種もある。

 G検定や、その延長線上にあるエンジニア向けのE資格の合格者が招待されるSlackのグループは、AI関連の職種についている方々も在籍していて、最新の情報が飛び交っている印象です。このためだけでもG検定を受けてよかったと思いました。

 後は私的な話ですが、育児や家事でドタバタな中、自分のための勉強ができたことが心の余裕につながりました。「時間は余りないけれど、AIについて何か学びたい」と思う方は、受けてみて損はないと思います。気力体力のバランスを取りつつ、ぜひ本だけでも読んでみてください。長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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