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サーバの発熱問題をアレで解決? Microsoftが明かした“新発明”の全貌:608th Lap

環境問題が深刻になる中で、サーバなどIT機器の熱問題は見過ごせない。しかし、Microsoftは“新たな発明”によって、一般的な手法とは真逆とも思える方法でサーバの発熱問題を乗り切ろうとしている。

» 2021年04月16日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 データセンターが抱える問題の一つに熱処理がある。サーバの発する熱をどう処理するか、冷却にかかる電力消費をどう抑えるかなど、環境配慮が叫ばれる中で熱処理に関する課題は運用担当者の頭を悩ませる。

 こうしたサーバの熱処理問題を意外な方法で解決する、Microsoftのある“発明”が注目を集めている。一見すると、一般的な方法とは真逆にも思える手法だが、Microsoftはサーバの熱処理問題をどう乗り切ろうというのか?

 なんと、Microsoftは“煮えたぎる液体”で自社データセンターのサーバを冷却しているという。2021年4月6日に、同社の公式ブログでそのことが発表され、話題になっている。

 Microsoftの従業員が利用する電子メールやコミュニケーション関連のシステムを運用するデータセンターがワシントン州クインシーにあるという。そのデーターセンターには、サーバを格納した鋼鉄製のタンクがあり、“煮えたぎる液体”で満たされている。

 液体と聞くと、まず水が思い浮かぶ。水の沸点はセ氏100度なので、煮えたぎると言うと手を入れれば火傷するほど熱いという思い込みがある。しかし、煮えたぎっているように見えるその液体は沸点が約セ氏50度(カ氏122度)なのだ。しかもその液体は電子機器にとって無害な「高機能液体」と呼ばれるものであり、この液体が満たされたタンクに、サーバ機器が沈められている。

 高機能液体による冷却技術は実はそれほど珍しいものではないそうで、スーパーコンピュータや他の企業でも導入されているのだという。しかし、今回Microsoftがわざわざ大きくこの冷却システムを公表したのは、これが「二相式液浸冷却技術」であるからだという。

 従来の「単相式」の冷却技術は、冷媒となる液体はずっと液体のままであり、高温になった液体は外部の熱交換器へ送られ、冷却されてまた戻ってくるという「循環」システムが仕組みの基本となっている。

 しかし「二相式」の冷却技術は、液体は循環せず、冷媒である液体が発熱する機器に触れると蒸発して気化し、気化熱として熱が運びさられ、気化した液体はタンク上部の凝縮器で冷却されて再び液体に戻り、タンク内に降り注ぐというサイクルになっている。だからこそ、ぐらぐら沸き立つようなビジュアルになるのだ。

 この二相式液浸冷却システムを採用したデータセンターは、一般的なデータセンターよりも消費電力を5〜15%ほど減少させることが可能なのだという。それだけでなく、冷却のために余分な水を消費することもない。Microsoftが掲げるSDGs(持続可能な開発目標)に関する取り組みの一つ「Water positive by 2030(2030年までに消費量よりも多くの水を供給する)」にも寄与するとして、大きな期待が寄せられている。

 ただ、密閉されたタンクの中にサーバ機器を入れっぱなしで、故障したときはどうするのか、という疑問もある。

 Microsoftは、海底にデータセンターを丸ごと沈めて海水で冷却する「Project Natick」を完遂した。2年にわたって海底に沈んだデータセンターを維持してきたMicrosoftにとっては、今回の煮えたぎる液体を使ったデータセンターでも、問題なく運用できるという自信があるのだろう。

 Microsoftでは、この冷却技術を採用したデータセンターは、まだここだけだそうだが、徐々に増やすとしている。世界中が求めているサステナブルな未来の実現に、Microsoftが寄与していくかもしれない。

お詫び:公開当初、「ぐらぐらと沸き立つその液体の温度はセ氏100度以上だという」としておりましたが、記述に誤りがあったため訂正いたしました(2021年4月28日 20:30)。


上司X

上司X: Microsoftが煮えたぎる液体にサーバを浸したデータセンターを構築した、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: 煮えたぎる液体っていうのが、なんというかミスリードのような気が。


上司X

上司X: だってMicrosoftのブログのタイトルだって「To cool datacenter servers, Microsoft turns to boiling liquid(データセンターのサーバを冷却するために、沸騰した液体に目を向ける)」だもん。


ブラックピット

ブラックピット: 「boiling liquid」ですか……。そりゃ煮えたぎる液体だね。


上司X

上司X: そのブログにも沸騰してる液体の中にサーバが浸されている画像が掲載されているんだけど、なんというかなかなかシュールな感じだよ。


ブラックピット

ブラックピット: 僕らの主観からは機械に液体はNGだし、沸騰する液体が冷却するとは思いませんもんね。


上司X

上司X: そんなわけで、これでもしかしたらデータセンターの常識が変わるかもしれないというね。サステナブルな世界の実現にMicrosoftが一役買うかもしれないな。


ブラックピット

ブラックピット: これをきっかけに、データセンター業界でもSDGsやサステナビリティについての議論が“沸騰”していくことに期待したいものですね!


上司X

上司X: なんだ、その「うまいこと言った」という顔は。ともかく、データセンターの熱と電力問題はなんとしても改善していかなければならないことだろうからね。今後も新しい技術が沸き立ってくることに期待したいものだよ。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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