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» 2021年03月10日 08時00分 公開

「IoT DEP」とは? 激増するIoT通信データをインターネットで効率的にさばく国際標準

IoTデバイスの通信を効率化するために考案されたICNと一般のインターネット通信を、共通のIPネットワーク上で共存、両立させることを目的に開発された日本発の国際標準を解説する。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

 数百億に上るIoTデバイスが送受信するデータがネットワーク帯域を圧迫し、遅延が増大してサービスがうまく機能しない……そんなことがないように既存IPネットワークでもスムーズなIoT通信を可能にする日本発の技術が国際標準になった。それが「IoT DEP」(Data Exchange Platform、ISO/IEC 30161)だ。

IoT DEPとは何か?

 IoT DEPは、激増するIoT通信データをインターネットの基盤上で効率的にさばくために作られたデータ交換プラットフォームだ。IoTデバイスの通信を効率化するために考案されたICN(Information Centric Network/情報指向ネットワーク=IPアドレスを前提としないネットワーク)と一般のインターネット通信(HTTPやFTP、メールなど)を、共通のIPネットワーク上で共存、両立させることを目的に開発された。

 実際のネットワークでの稼働はこれからだが、研究室レベルではIPネットワークを流れるIoT通信の遅延時間を約10分の1に、全体のトラフィック量を5分の1程度に抑えることに成功した。つまり、IoT通信のリアルタイム性を確保するとともに、トラフィック量を抑えることで一般のインターネット通信への影響を低減できる可能性を示している。IoT通信がスムーズにできて、しかもインターネットの帯域逼迫(ひっぱく)を防ぐことができる一石二鳥の新技術だ。

 研究と国際標準化への取り組みは、金沢工業大学の横谷哲也教授が中心なり、同大学の研究チームと複数の国内大手ITベンダーの協力によって2016年から進められてきた。その成果として2020年11月に国際標準ISO/IEC 30161として発行されたわけだ。この研究は日本がいま積極的に進める「戦略的国際標準化加速事業」(経済産業省)の一環でもある。

 図1にIoT DEPの利用イメージは図1のようになる。既存のサービスネットワーク(TCP/IPまたはUDP/IPネットワーク)にIoT DEPによるネットワークを仮想的に重ね合わせる。IoT DEPネットワークのノード同士はIPアドレスを利用して接続するが、エンドポイントのIoTデバイスとIoT DEPノード間、IoT DEPノードとサーバ間はICNで結ばれる。

IoT DEPネットワークのイメージ 図1 既存インターネット基盤上にオーバレイするIoT DEPネットワークのイメージ(出典:金沢工業大学)

なぜIoT DEPが必要なのか?

 インターネットのバックボーンネットワークは高速化しているものの、サーバとデバイスが移動せずに1対1で通信することを前提に構築されているため、ちょっと意外なほど、インターネットはトラフィック増加に弱い。1対多、多対多の通信ではサーバにアクセスが集中するだけでなく、サーバとデバイスの位置が移動する場合には最適経路を決定するためにDNSサーバが保持する経路情報を頻繁に更新しなければならないためだ。

 さらに多くのモバイルデバイス、コネクテッドカー、その他各種のセンサーなど多様なIoTデバイスが増加し、既存のIPネットワークに乗り合わせることを想定すると、通信のオーバーヘッドが幾何級数的に増加することが見込まれる。DNSサーバの名前登録・解決処理能力を超えるようになると、インターネットが機能不全になることもあり得ないとは言えない。

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