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次世代のRPA活用とは? Blue Prismとマイクロソフトに聞く【後編】

突然の出社制限で過去のやり方が通用しなくなった。新たな状況やミッションに即応し、事業展開に貢献できるRPA導入を各社が目指す中で、テクノロジーベンダーからはどのような提案が示されるのだろうか。

» 2021年03月03日 10時00分 公開
[PR/キーマンズネット]
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 突然の出社制限で過去のやり方が通用しなくなった2020年以降「業務の流れを見直すことなく、手作業をそのまま置き換えるだけでは不十分」という、RPA活用について繰り返されてきた主張の正しさを実感する機会は格段に増えた。

 では、今後新たな状況やミッションに即応し、また新たな事業展開に貢献できるRPA導入を各社が目指す中で、テクノロジーベンダーからはどのような提案が示されるのだろうか。“老舗”のBlue Prism、この分野では“新顔”のマイクロソフト、そして両社製品の導入を支援する日商エレクトロニクスを交えた座談会の模様を伝える本記事は、両社製品の沿革や協業関係に触れた前編に続き、今後重要となる機能や活用戦略、またそこでのユーザー像について、それぞれの見解を紹介する。

時間削減から価値創造へ、推進力の転換が必要

青木 俊氏 青木 俊氏(日商エレクトロニクス DX第二事業本部 本部長)

青木 俊氏(日商エレクトロニクス DX第二事業本部 本部長): ここまで、お二方からは「Blue Prismのツール操作は難しくない」「Microsoft Power Automateは全ての人にインテリジェントな自動化をもたらす」といったお話がありました。確かに業務自動化に用いる手段は、かなり身近なものになったと思います。

 では、それらを使って成果を出すことも容易になったのか。業務効率化に携わる方々が現在抱く関心の所在は、むしろこちらにある気がします。組織文化に自動化の活用を根付かせるためには、今後どのようなアプローチが望ましいでしょうか。

小林伸睦氏(Blue Prism Japan CTO兼製品戦略本部長): Blue Prismの導入方法を体系化した「Robotic Operating Model(ROM)」の中でも触れられていますが、やはり「何を目的に自動化を行うのか」というビジョン、あるいは「こうありたい」という組織の将来像が明確であるほど大きな成果につながりやすいと思います。

 これまでは「作業時間を簡単に節約できるようだ」と、いわばブームに乗る形でデスクトップ型ツールを導入したユーザーも少なくなかったと思います。確かにPCの作業の一部を代替するアプローチは手っ取り早く、即効的な時間創出の効果もありますが、これだけでは遠からず頭打ちになってしまいます。加えて、セキュリティや稼働の安定性がインストール端末の管理状態に左右される点は、用途を狭める一因となりえます。

 そのため現在では「デスクトップ型ツールを入口に業務自動化のきっかけをつかんだ後、組織としての変革を目指し、重要な業務をはじめ広範で多様な業務の自動化を安定して実装できるソリューションを求めている」というユーザーも増えています。こういったユーザーには、多様な自動化関連技術との連携、安定稼働、高いセキュリティ、監査に配慮して設計されているBlue Prismが重要な選択肢になると考えています。

川端祐人氏(マイクロソフトコーポレーション ビジネスアプリケーション事業本部アジア グローバルブラックベルト テクニカルスペシャリスト): かつて国産RPAの研究開発と技術営業に携わっていた経験も踏まえて言うと、デスクトップ型RPAには「従来手作業で行っていたものが自動化される」という目に見える変化があり、特に現場やマネジャー層にとって導入効果が試算しやすいと思います。それ自体はもちろん重要なことですが、ともすれば経営的な観点からの効果がとらえられにくい傾向もあると思います。

 一方、外部サービスとのAPI連携で自動化するアプローチ(Power Automateの「クラウド フロー」など)は、シナリオ次第ではデスクトップ型RPA以上にさまざまな自動化が実現できるものの、ユーザーが気付かないほどスマートにサービスが連携するため、「目に見えて人手の処理が置き換わった」というRPAのような感覚をもたらしづらい面があります。そのため、変化への手応えをもって取り組みの推進力とすることがやや難しく、現場からの支持がなかなか得られないケースも散見されます。

 以上から私も、業務自動化の推進に関しては「自動化によって組織全体を変革し付加価値を高めていくため、RPAを用いるべきなのか、API連携を用いるべきかといった判断も含め、経営から現場までの判断を一気通貫で行う」ことが重要と考えます。そのためには小林さんがおっしゃる通り、最終的に達成したい変革のビジョンを示すという経営層、マネジメント層の役割がさらに増していくと考えています。

青木氏: Blue Prismとマイクロソフトの協業で、新型コロナウイルスの抗体検査の受付体制が迅速に整ったという英国の例がありましたが(前編参照)、「医療スタッフが本来業務に集中できる自動受付の仕組みを素早く立ち上げ、検査の早期実現に貢献した」というのは、紛れもなく大きな価値の実現ですね。

 “現場受け”や削減時間もさることながら、本質的には「自動化でもたらされる価値」のほうが大切なのは間違いありません。導入事例などでも、つい「何時間創出されたか」にばかり目が行きがちですが、そうした数字は実際のところ、生み出された価値を推し量る参考程度にとどめたほうがよいのかもしれません。

「AI活用を円滑に」「自律的な効率化」―進化するRPAの提供価値

小林伸睦氏 小林伸睦氏(Blue Prism Japan CTO兼製品戦略本部長)

青木氏: 業務自動化で価値創造を目指すユーザーに対し「製品のこうした側面を打ち出したい」といった、マーケティングの観点からもお話をうかがえますか。

小林氏: 2021年から Blue Prism は「インテリジェントオートメーション」という言葉を使っています。これは、従来の自動化に加えて AI などの自動化関連技術を駆使してビジネス変革を実践いただくこと、それによって価値創造や競争優位を実現いただくことを意味しています。

 既に、単なる業務自動化だけでは競争優位の実現は難しくなりつつあります。より早く変化を認識し、対応するための業務プロセス変革を実現するには、インテリジェントオートメーションの活用が欠かせません。ですから私たちは、単なる業務自動化ではなく、Blue Prismのプラットフォームを通してAIの能力をスピーディーにビジネスへ組み込むことに主戦場を移していきたいと考えています。

 一般的に、労働生産性は投入された労働量あたりの付加価値量で計算されます。したがって、生産性向上を図るには、労働量という「分母」を減らすか、得られる価値という「分子」を増やすかのいずれかが必要です。

 時間の節約を主眼としてきた従来のRPA活用はもっぱら前者、つまり分母を減らすアプローチで、これだけでは限界があります。従って、インテリジェントオートメーションを通じて価値を創出し、分子を増やす方向での上積みも狙っていく。現在のBlue Prismは、以下の図でいう右上部分に向けたソリューションといえます。

インテリジェントオートメーション 単なる業務の自動化から、インテリジェントオートメーションに主軸を移す

 インテリジェントオートメーションで「分子を増やした」例をいくつか挙げると、例えば「サポート受付のシステムを自動化するとともに技術スタッフ派遣の必要性を分析する仕組みを組み込み、不要な派遣を省くことで解決までの時間を短縮した」企業があります。これは人件費の抑制にとどまらず、より速い解決という価値を顧客に提供しています。

 また、自然言語処理の活用で事業上リスクとなるようなやり取りがお客様との間で行われていないかモニタリングしている事例や、業者選定のルールを徹底するため従業員に代わってメールの読み書きまで行うケースもあります。これらも「定型業務の単なる自動化」という従来型のRPAにとどまらず、「安定したビジネス基盤の構築」という新たな価値を創出していることがお分かりいただけると思います。

川端氏: AIやクラウドなどと連携しながら、この右上の領域を狙う点に関しては、Power Platformも全く同様の戦略です。

青木氏: Power Automateをはじめとする、マイクロソフトの業務自動化関連の領域では、今後どのような展開が見込まれますか。

川端氏: 既存業務を置き換えた時間削減の効果だけを見ていても、いずれ頭打ちになるのは明らかであり、より広範なビジネス変革のほうへ目を向けていく方向性については、いまお話しいただいたBlue Prismの戦略とほぼ重なると思います。

 そうした中で、マイクロソフトならではのトピックといえそうなのが、2020年12月9日にプレビュー版を公開したPower Automateのプロセスマイニング機能「Process Advisor」です。従来型のRPAでは、日々の業務の中で自動化が必要な潜在的な業務プロセスを知ることが難しいという課題がありましたが、Process Advisorでは、Power Automate Desktopのプロセスレコーダーを通じて自動化すべき業務プロセスの可視化、推薦を行ってくれるようになります。

 さらに、ここからは個人的な見解になりますが、あと数年内に「記録されたどのプロセスを自動化するのが効果的か」をPower Automateが自律的に判断・提案し、さらに実装・運用するところまでの全てを半自動的で引き受けてくれるようになるのでは、と想像しています。

Process Advisor Process Advisorによって、自動化すべき業務プロセスが可視化できるようになった

加速する自動化トレンドの中で、ワークスタイルの変化に対応

川端祐人氏 川端祐人氏(マイクロソフトコーポレーション ビジネスアプリケーション事業本部アジア グローバルブラックベルト テクニカルスペシャリスト)

青木氏: AIによって、RPAツールそのものも、よりインテリジェントになっていくのですね。

 少し費用面についてもお聞きしたいのですが、例えば業務自動化の担い手を積極的に増やす「市民開発者」の理念を実践したとき、開発端末のコストが膨らむことはないですか。

小林氏: 「ツールの導入」ではなく「デジタルワーカーの稼働によって得られる成果」から対価をいただくというのがBlue Prismの方針であり、課金の対象は本番稼働するデジタルワーカーの実行環境だけに限定しています。したがって開発環境をどれほど増やしても、その部分について費用はかかりません。

 実行環境の同時実行数に応じてライセンス数が決まり、基本的には1ライセンスで24時間の処理スケジュールをうまく組むことにより稼働率を高められるため、「費用対効果が非常に高い」との評価もいただいています。さらに、こうした運用では完全自動化しかできないように思われがちですが、デスクトップ型ツールと同様、ユーザーがインタラクティブに処理を開始させる機能も提供しています。

川端氏: デスクトップ型のPower Automate Desktopもクラウド型のPower Automateも、課金の単位はフローの実行と作成ユーザー数単位となっており、フロー開発環境、開発に必要な高度な機能が全て付帯して提供されます。また、Power Automate Desktopには管理機能が付帯しており、管理のための追加費用が発生しないことも特徴です。

青木氏: 着実に実用化が進むAIと、コロナ禍がもたらしたインパクトで、自動化を活用したワークスタイルも今後さらに様変わりしていくことでしょう。そうした中で業務変革に携わっている読者の方々へ、最後にメッセージがあればお願いします。

川端氏: ローコード開発で業務自動化を実現できるPower Automateを活用することにより、自動化プロジェクトを“自分事”と捉える社内人口は大きく増えるはずです。何よりこの製品を送り出したマイクロソフトがクラウドへの転換を図り、オープンソースを取り込んでいったように、失敗を学びの機会と捉える「グロースマインドセット」を軸に組織を変革してきた歴史を持っています。

 「2024年までに、25%以上の業務が自動化される」との予測もみられますが、実際にそうなるかどうかはともかく、DXの不可逆的なトレンドがコロナ禍によってさらに勢いづいたことだけは間違いありません。引き続き、自動化を通じて社内変革に挑むユーザーを支えつつ、さきに触れた英国の例のように、ベンダーの垣根を超えた協業事例を日本からも発信していけたらと思います。

小林氏: コロナ禍により非対面での業務遂行と事業継続がクローズアップされ、チャットボットによる顧客対応などが広まっていますが、これを皮切りにAIの活用と自動化が進めば、近い将来、本社機能がデータセンターの中で完結するようになるかもしれません。

 もしそうなれば、私たちの働き方は必然的に大きな影響を受けますが、高度な信頼関係を必要とする顧客エンゲージやイノベーションといった領域を人間が担う状況は当面変わらないでしょう。こうした領域に従業員をフォーカスさせるための戦略や投資が欠かせませんし、そういったテーマで社内の議論を深めていく必要もあるように思います。

 Blue Prismは、このように激動する経済社会環境を乗り越えるために必要なプラットフォームを提供していくことで、皆さまのお力になれたらと考えています。今後もビジョンを同じくするパートナーと協業しつつ、インテリジェントオートメーションを実現していきたいと思います。

青木氏: お二方からお話しいただいた自動化のビジョンが、予想以上に近いことに驚いています。われわれも含めた3社で、ぜひアイデアと得意分野を持ち寄り、早急に形あ

るものを仕上げましょう。発表できる日が楽しみです。



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