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15年前のWi-Fiルーターが今も売れている? その人気の理由とは:596th Lap

とある理由で15年前に販売されたWi-Fiルーターが、今でも人気を博しているという。いったい、どういうことなのだろうか?

» 2021年01月22日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 家族が同時にネットを使うのは当然の時代。PCやスマートフォンを各自が所有し、コロナ禍で在宅勤務も増加している。自宅のWi-Fiルーターを新調したという人も少なくないだろう。Wi-Fi 6に対応するなど最新のWi-Fiルーターも多数登場している。

 しかし、2005年に発売されたWi-Fiルーターが今も継続して人気を博しているという。いったいなぜ、その真相とは――?

 Tech系ニュースメディアTadiumは2021年1月13日、「15年にもわたって売られているWi-Fiルーターがある」と報じた。記事によると、いまでも販売されているWi-Fiルーターは「WRT54GL」だ。有線ルーター機能は100Mbps、Wi-Fiは802.11b/gにしか対応していないのだが……いったいなぜ人気なのか。

 冒頭で触れたような「家庭にWi-Fiルーターが必要」という状況は、1990年代末から2000年にかけ急速に訪れた。「Windows 95」が登場して以降、インターネットにつながるPCを個人宅で所有することが一般化した。同時に、家庭には常時接続、ブロードバンドのインターネット環境が整い始め「家庭向けのWi-Fiルーターが必要」という状況になった。

 そして当時のニーズにいち早く応えようとしたメーカーの一つが、話題となっている15年売れているWi-Fiルーター「WRT54GL」を産んだLinksysだ。

 ネットワーク機器は当時、専門知識を持つエンジニアが扱う製品だった。そこで、同社は知識の乏しい素人でも設定と運用ができる製品を提供し始めた。代表的な製品が「WRT54G」シリーズだ。初代モデルの価格も比較的安価で、同製品を含めて同社の販売する製品の売れ行きは好調だった。かくしてLinksysは家庭向けルーター市場で一時代を築くこととなった。

 そこに目をつけたのがネットワーク機器メーカーCiscoだ。2003年にLinksysを5億ドルで買収した。主として企業向けのネットワーク機器を販売しているCiscoは、個人ユーザー向け市場への展開を目的とした。買収こそされたものの、Linksysブランドはその後も生き続けている。

 では、なぜ今でも「WRT54G」がここまで人気があるのか。「WRT54G」はファームウェアがLinuxベースで、カスタムファームウェアをユーザーが自由に書き換えられることがその理由だ。

 Ciscoはこの事実を知らず、製品を販売していたLinksysも、開発の委託先であったBroadcomすらもファームウェアがLinuxであることは承知していなかったという。もちろんスペックとして文書化もされていなかった。

 ファームウェアにLinuxが採用されていることはある製品レビューによって明らかになった。LinuxのライセンスはGNU GPLで、ファームウェアのソースコードの公開が必須だ。Linuxのカーネル開発者であるAndrew Miklas氏はCiscoおよびLinksysの担当者にソースコードの公開を要求したが、なしのつぶてだった。そこで独自にそのファームウェアを解析して公開した。

 それ以降「安価なルーターでLinuxが動く」と世界のネットワークエンジニアたちが注目したという。ハードウェアとしての限界は当然あるが、Linuxベースで機能を追加すれば、ルーターの性能を向上させられる。そしてハードウェア的な強固さも備えている。そこで有志が集って「WRT54G」向けのプログラムを書き、SSHサーバやVPNといった独自の機能を多数追加しているという。

 Ciscoは2005年、いったん「WRT54G」のファームウェアをLinuxベースではない製品として発売した。しかし、世界中から反対意見が相次ぎ、Linuxベースのファームウェアを搭載した「WRT54GL」を発売した。

 そして今もこの「WRT54GL」は製造され、販売され続けている。これこそが「15年売れ続けているWi-Fiルーター」の真相だ。Linksys自体は2013年にCiscoからBelkin傘下となっているのだが、この状況はそのまま変わっていない。ECサイト「Amazon」でも購入できるが、発売当時よりも高額になっている。


上司X

上司X: 15年も前から同じスペックで売られているWi-Fiルーターがある、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: うわあ。Linksysですか。懐かしいですねえ。


上司X

上司X: だよなあ。あの青と黒の筐体がもうね。記憶に染みついているというか。


ブラックピット

ブラックピット: いや実際僕、「WRT54G」使ってましたもの。あの当時「ド定番」だったような感じが。


上司X

上司X: 国内メーカーもそれなりに頑張っていたとは思うけどな。


ブラックピット

ブラックピット: でもほら、なんとなく海外製品がってことで(笑)。あと当時の某IT製品ランキングサイトでトップだったり、価格的にも手を出しやすかったりして……。


上司X

上司X: ま、そういう買い物もあるわな(笑)


ブラックピット

ブラックピット: しかしまあ、もしかしたら今も自宅のカオスな空間に、あの懐かしの青×黒の筐体が眠っているかもしれません! 掘り起こして中古品として販売したらいくばくかの……。


上司X

上司X: そりゃ好きにすればいいと思うが、その「自宅のカオス空間」ってなんだよ。汚部屋の一角ってことなんだろうがな。ともかく15年売れてるWi-Fiルーターはすごいな。これからもまだまだ売れ続けて欲しいもんだな。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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