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「PC調達は投資」の時代はもう終わり? Device as a ServiceはPC運用の在り方をどう変えるのか

今まではPCを必要分だけ一括調達して使い回していた。しかし、人材の流動性が高い現代において、従来のPC運用はマッチしていない。現代におけるPC運用の在り方とは。そして、Device as a Serviceは今までのPC運用をどう変えるのか。

» 2020年12月04日 07時00分 公開
[松尾太輔横河レンタ・リース]

 連載第2回目は、日本マイクロソフトが提唱する「Device as a Service」の導入モデルのSTEP1「CAPEXからOPEXへ」について解説します。STEP1はDevice as a Serviceの基礎的な要素です。前提と言ってもいいでしょう。

マイクロソフトが提唱するDevice as a Serviceの運用に関する4つのステップ(資料提供:日本マイクロソフト)

著者プロフィール:松尾太輔(横河レンタ・リース)

自社開発ソフトウェア「Flex Work Place」の開発責任者を務める。「デバイスをサービスとして提供するとはどういうことか」「モノのサブスクの本質とは何か」「企業のPC運用のベストプラクティスとは何なのか」を問い続けながら、「Windows 10」の導入コンサルティング、Device as a Serviceの啓蒙(けいもう)活動を行う。


なぜDevice as a ServiceにWindows 10が必要なのか

 「Windows 10」は、言わずと知れた「Windows as a Service」(以下、WaaS)をコンセプトに掲げるOSです。WaaSは、第1回でDevice as a Serviceのキーワードとして説明した「as a Service」のポイントを基に考えると理解しやすいと思います。つまり、「ユーザーに直接」「継続的なアップデート」を提供するということです。

 WaaSを取り入れたWindows 10がリリースされてから、Windowsのアップデートの考え方や仕組みは以前と比べて大きく変わりました。しかしながら、Windowsのアップデートを制御、管理する仕組みである「Windows Server Update Services」(以下、WSUS)は全く変わっていません。これは、Microsoftの「WaaSは制御するものではない」という思いが見え隠れします。「as a Service」ですから当然です。

 「Microsoft Teams」や「Box」「Slack」「Zoom」といった最近のアプリは、ほとんどがスマホのように自動的にアップデートされます。これは「as a Service」で提供されているためです。全てのアプリが「as a Service」で提供されれば、WaaSでも困ることもありません。WaaSは、PCを「as a Service」で提供するDevice as a Serviceの前提でもあります。

 しかし、まだ多くの企業でレガシーなアプリが残されています。それらは互換性の問題もあり、利用する時には事前にIT部門での検証や段階的なアップデートが必要です。全てのアプリが「as a Service」ライクになるまでは、当社のWindows 10運用ソリューション「Flex Work Place Unifier Cast」のようなサードパーティ製のアップデートツールで、うまく付き合っていく必要があるでしょう。継続的なアップデートはセキュリティの確保のためにも必要です。PCのセキュリティをしっかりと確保するためにも、WaaSという継続的なアップデートの仕組みを持ったWindows 10が必要であり、WaaSと同じく継続的なアップデートを提供するDevice as a Serviceにとっても必要な要素なのです。

PCを「設備投資」から「運用費」へ

 上部の図(マイクロソフトが提唱するDevice as a Serviceの運用に関する4つのステップ)のSTEP1にある「CAPEX」はCapital Expenditureの略で、直訳すると「資本支出」ですが、ここでは「設備投資」を意味します。対して「OPEX」はOperating Expenseの略で、「運用費」、つまり「経費」を意味します。Device as a Serviceの導入におけるSTEP1で伝えたいことは、「モノとして購入していたPCをクラウドサービスなどと一緒に、しかも月額で調達すべきだ」ということです。

 クラウドはサービスですので、もちろんモノとして買うものではありません。会計上は運用費、経費として扱われます。PCなどモノの購入の場合は、大きなイニシャルコストがかかります。Device as a Serviceは必要なユーザー分の利用料を月額で支払う、新しいお金の支払い方(モダンビリング:Microsoftが呼ぶ月額課金のこと)を採っています。Device as a Serviceにとって基礎的な要素の一つであり、「PC調達の簡素化」ともいえます。

時代は「長期リース、資産運用」から「短期レンタル」へ

 PCの運用管理もIT資産管理に含まれることがあります。なぜ、IT資産管理かというと、従来PCやPCにインストールするソフトウェアは資産として持ち、新しい社員が入社すれば、購入した在庫を使い回し、在庫がなければ買い足していました。人が辞めれば、使えるところで在庫を使い回し、使えないようであれば廃棄していました。今までは、PCなど購入したものを社内で使い回すために資産管理(在庫管理)が必要だったわけです。物理的なモノの管理には手間暇がかかります。これが簡素化されるだけでも管理者の負担は大きく減るでしょう。

 今は人とモノを別々に管理していて、それが管理者の大きな手間になっています。昔は日本の人材の流動性が今ほど高くなく、人が動かないので「モノ中心の管理」だけで良かったのです。しかし、最近は日本でも人材の流動性が高まり、手間がかかるようになってきたということです。

 コロナ禍のテレワーク中心の働き方により、いよいよ日本でもメンバーシップ型の雇用からジョブ型雇用が進むとも言われています。人材の入退社に合わせて柔軟に対応するために、PCも資産として保有したり長期的なリース契約を結んだりするのではなく、柔軟な解約が可能な短期レンタルをベースにした調達が最適と言えるでしょう。「一括月額調達」と併せて「Device as a Service」の重要な基礎的要素です。

レンタルPCとDevice as a Serviceの本質的な違い

 進化し続けるWindows 10のデバイスが、資産としてではなくクラウドサービスとともに一括月額で提供され、PCの運用も月額で提供されれば、調達が簡素化されるだけでなく、日々の運用も相当軽くなると考えるのがIT管理者の思考としては自然でしょう。一般的なPCの運用とは、PCのキッティングやクローニングといった初期セットアップ、利用中のサポート(修理交換対応やヘルプデスクなど)、リプレース時のPCの回収やデータ消去、物理的な廃棄といったところです。これらをPCと一緒にアウトソーシングサービスとして受けることで、IT管理者の負担は大きく軽減されます。

 「あれ、これってレンタルPCそのものでは?」と感じた方もいらっしゃるでしょう。その通りです。Device as a Serviceの最初のステップは、レンタルPCサービスの利用であり、当社などからレンタルPCを既に利用している方は、すでに最初の要件を満たしていることになります。

 しかし、ただPCをレンタルするだけではDevice as a Serviceの本質的なメリットである「ユーザーに直接」、「継続的なアップデート」を受けることはできないのです。それは、レンタルPCはあくまでモノをCAPEX(設備投資)からOPEX(運用費)に変えて、柔軟性を与える「モノを中心とした調達と利用の方法」であるからです。もちろん、モノを柔軟に利用するという点でレンタルPCは優れたPC運用モデルであり、多くのメリットがあります。しかし、Device as a Serviceはもっと劇的な変化をもたらすものです。

 その変化をもたらすのが次回に解説するSTEP2「ユーザー中心の管理モデル」です。STEP1のレンタルPCをよりうまく運用するためのコツとも言えます。どうぞ、お楽しみに。

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