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» 2020年10月21日 06時00分 公開

FAXを断線しアナログ排除、ITリテラシー皆無だった明治19年創業企業のDX成功の道

"ITリテラシー皆無"だった老舗企業カクイチは、どうやって組織を変革したのだろうか。カクイチの執行役員、鈴木琢巳氏(事業戦略部 部長)に話を聞いた。

[野依史乃,キーマンズネット]

 ものづくりメーカーから端を発し、ガレージや倉庫、物置事業や国内の農業を支援するテクノロジーを提供するカクイチ。国内に28の営業拠点、3つの工場、77店舗の直営ショールームを持つ。明治19年に創業し、従業員の平均年齢は46歳という同社は、2018年まで従業員は会社からメールアドレスを与えられていなかったという。

 つい最近までそんな“ITリテラシー皆無”だったカクイチだが、今ではリモートでのコミュニケーションも円滑な企業へと姿を変えている。デジタル化による組織改革の道筋についてカクイチの執行役員、鈴木琢巳氏(事業戦略部 部長)に話を聞いた。

「個人アドレスは情報漏えいの元」という考えだったカクイチ

 「カクイチは農家が主な顧客です。紙と電話とFAXがあれば事足りていました。私が情シス部長となった2018年当時は従業員の個人アドレスさえありませんでした」。鈴木氏はIT情報システム部の部長に就任した2018年(2020年4月より現役職)のことをこう振り返る。鈴木氏が情シス部長となる以前、カクイチ社内は「個人アドレスを与えるなどのIT化は情報漏えいの元」という考え方で運用されていた。

 当時、国内の営業拠点28箇所にはノートPCが1台配布されているだけで、各拠点の営業担当者5〜10人が共有のメールアドレスを使っていた。ショールーム事業も手にかけている同社だが、就任当時は店舗にWi-Fiすら設置されていなかったという。鈴木氏が情シス部長となる1年前、2017年段階で一部の従業員に社用スマホとして「iPhone」が導入されたものの、バックオフィス業務に携わる従業員には個人アドレスがないまま、社内のコミュニケーションはオフラインによるものだった。

 「月1回の支店長会議が本社で開かれ、営業所やバックオフィス部門の従業員など、末端に伝わるのはそのおよそ1週間後でした。今思うと、情報伝達のコストが高すぎます。しかも、年功序列のピラミッド型かつ以前はオーナーの一強組織だった当時のカクイチでは、情報を握っている上長が部下にどう伝えるかで情報の質も変わってしまいます。部単位や営業所ごとに違った解釈をしてしまい、結果、社長や執行部が求めている行動とは違う結果になるという課題もありました」(鈴木氏)

カクイチの組織の変化図、現在はネットワーク型の組織となった(提供:カクイチ)

アナログを徹底排除、FAXのコンセントはハサミで断ちデスクを破壊

 この旧態依然としたアナログな業務スタイルを改革する必要があると感じた鈴木氏は、組織のデジタル化に踏み切った。

デジタル化の道はじめの1歩

 鈴木氏はまず、従業員全員にiPhoneを配布し、チャットツールの「Slack」と従業員エンゲージメント向上ツール「Unipos」を導入した。「SlackとUniposはほぼ同時期に導入を進めました。導入テストも本導入もUniposの方を少しだけ先にしたことが功を奏したと思います。というのも、当時、他業界の情シス部長仲間からは『Slackを入れたら現在の情報ヒエラルキーが崩壊してしまう。アナログな会社の良いところが無くなる恐れがあるからやめたほうがいい』と止められもしました」と鈴木氏は振り返る。

 実はSlackとUniposを導入する半年ほど前に、「Gsuite」と「LINE WORKS」を導入していたという。「LINEなら誰でもストレスなく使えるかと思って導入したのですが、それまでITの素地がなかった従業員はなかなか使ってくれませんでした。プライベートの延長のように捉えられ、社内の利用率は正直てんでダメでした」(鈴木氏)。では、Slackの全社規模導入はなぜ成功できたのだろうか。

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