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» 2020年10月20日 07時00分 公開

コロナ禍で得た教訓を生かす テレワークの“理不尽”から生まれた不公平感とは

2019年までは働き方改革のもと、生産性向上や隙間時間の有効活用を目指してテレワークが進められてきた。ところがコロナ禍におけるテレワークは感染症対策の必然性から生じたもので、事業継続を目的としている。2019年までのテレワークとは本質的に異なる。強制的ではあるものの、実践することで課題も見えてきた。これからの働き方改革の方向性をあらためて考える。

[加山恵美,キーマンズネット]

 2018年6月に働き方改革関連法案が成立し、テレワーク対応は徐々に進められてきた。ところが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生で、テレワークを強行せざるを得なくなった。「コロナ禍」と呼ばれる通り災いではあるものの、緊急事態宣言下にテレワークを実践することで未解決の課題が顕在化し、克服しながら前進できた。何が変わったのか、教訓は何だったのか、改めてITR シニアアナリスト 舘野真人氏が振り返る。

突然のテレワーク 私たちはどう動き、何が変わったか

 セミナー冒頭は参加者にいくつかアンケートを実施した。「どこから視聴しているか」では「自宅から」が33%で、いまだに在宅勤務が多いことが分かる。「現在の職場のテレワーク実施状況」では、在宅と出社の割合は多少異なるものの、テレワーク優勢の企業が多数を占めた。

 このアンケート結果はITRが実施した結果とも一致する。テレワークを制度として採用した企業は年々リニアに増加していたところ、2020年には急上昇して34%となった。制度の有無によらず、大企業におけるテレワーク実施状況を見ると、コロナ禍以前ではテレワークを何らかの形で実施していたのは33%にとどまっていたが、コロナ禍以後には71%まで増加した。コロナ禍でテレワークへのシフトが一気に進んだことが分かる。

図:国内企業におけるテレワーク実施状況の変化(出典:ITR講演資料)

 ITRが2020年4月に実施した「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」から詳細を見ていこう。コロナ禍において、国内企業が「緊急措置として実施し、完了した」ものの上位にテレワーク関連が並ぶ。テレワーク制度の導入、リモートアクセス環境やコミュニケーションツールの導入、デバイスの購入や支給などだ。

 コロナ禍はIT戦略テーマの優先度も変えた。優先度が上がったIT戦略テーマとして企業が回答したもののトップに「従業員の働き方改革」(34%)がある。前年の12%から大きく飛躍した。前年のトップだった「業務コストの削減」は52%から半減。業務コスト削減から働き方改革へと、視点がシフトした。

 コロナ禍が収束したら、テレワークを継続するか。2020年7月調査によると、「勤務形態の一つの標準として、テレワークを全社的に推進・定着させる方針」(47%)、「特定の部門や役職、スタッフに対してはテレワークを推進・定着させる方針」(37%)と、コロナ禍収束後でもテレワークを定着させようとする意向が多数を占めた。パンデミックで強制された形だったものの、テレワークは今後の標準となりつつある。

 緊急事態宣言下でのテレワーク実践から得られた教訓は何か。まずはテレワークそのものについての理解が深まったといえる。2019年まで進められてきたテレワークは働き方改革を実現するものであり、生産性向上やワークライフバランスの確保、隙間時間の有効活用などが目的に掲げられていた。対象は希望者のみ、業務を実施する場所に特に制限はなかった。そのため、生産性を阻害しないコラボレーション環境が必須であり、仕事の成果を測る指標が必要とされていた。

 一方、コロナ禍におけるテレワークは感染症対策が発端にあり、オフィス封鎖や移動制限がある中で事業継続することが大きな目的となっていた。対象は全従業員であり、業務の実施場所は自宅を原則としていた。個人の希望ではなく、会社や行政からの要請であることも大きな違いだ。子育て中の家庭における在宅勤務には困難も多かった。

 テレワークは近年進められていたものの、コロナ禍におけるテレワークは目的や事情が異なることを留意しておくべきだろう。

 適用範囲と効果について見ていこう。テレワークを広範囲に実施したか一部で実施したかで比較すると、全般的に前者のほうが効果の実感度が高かった。以前から実施していたか、新たに実施したかについてはさほど差はなかった。テレワークの効果は経験の有無よりも、広範囲に実施したほうがいいようだ。ただし新規顧客の獲得については、適用範囲によらず、新たに実施した企業において効果実感度が低かった。新規顧客の獲得においては、テレワーク経験がないと苦戦したようだ。

テレワークの“理不尽”から生まれた不公平感とは

 テレワークで効果を出せた業務、出せなかった業務は何か。テレワークは思いもよらぬ不公平感を生み出したようだ。

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