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» 2020年10月14日 06時00分 公開

高精細動画を半分の帯域で配信できる最新規格「H.266/VVC」とは?

4K/8K、VR/AR、360度映像と映像データ量の増加傾向は今後ますます増加し、臨場感ある映像用途が増えてくることになる。しかし、限りあるネットワーク帯域での配信は難しくなるケースも。そんな課題解消を担う新コーデック「H.266/VVC」とは。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

「H.266/VVC」とは?

 「H.266/VVC」とは、2020年7月に動画符号化方式の国際標準として発表された最新規格だ。現在4K放送やネットでの映像配信に活用されている「H.265/HEVC」の後継となる規格で、H.265/HEVCと同等の品質の動画を約半分のデータ量で実現する次世代符号化方式として注目される。

「H.266」と「VVC」はどういう意味?

 規格名称の「H.266」は、前身であるH.264やH.265と同様にITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)のVCEG(Video Coding Experts Group)による呼び方で、「VVC」(Versatile Video Coding)は、もう一つの動画符号化方式標準化団体であるISO/IEC JTC 1のMPEGワーキンググループによる呼び方だ。こちらは正式規格名でなく、いわば通称である(MPEGワーキンググループではMPEG-I Part3 VVCが正式名称)。

 同じ規格に対する2つの標準化団体の呼び方を併記するのが慣例になっており、これまでの規格も「H.264/AVC」「H.265/HEVC」のように表記されてきた。

 「多様な」を意味するVersatileが含まれた「VVC」は、その名の通り、広い色域・高い輝度のダイナミックレンジ(HDR)を持ちながら、4K/8K(16K動画は8K動画×4に分割した後に符号化可能)、立体動画、マルチビュー動画、パノラマ動画といった用途に用いられることとなる。現在人気の360度動画やVR/ARコンテンツに対しても豊かな臨場感を与えることが期待でき、高精細映像によるこれまでにない“超高臨場感"映像サービス登場の契機ともなりそうだ。

動画の標準規格は今どうなっているの?

 動画データの配信に重要なのが「コーデック」とも呼ばれる符号化方式で、Webで多用されている「H.264/AVC」(MPEG-4 AVCとも呼ばれる)と、4K動画配信・放送に利用され、8K動画にも対応する「H.265/HEVC」が広く普及している。これらに加え、Googleが開発した符号化方式「VP9」を基礎とした動画符号化方式「AV1(AOMedia Video 1)」(NPO団体のAlliance for Open Media〈以下、AOM〉が開発元)も主要なブラウザやビデオプレーヤーが対応し、動画ストリーミングサービス用として利用が拡大しているところだ。

 AV1はH.265/HEVCを上回る高い圧縮率をもつ符号化方式で、H.265/HEVCの特許権者が多数にのぼりライセンスが複雑(複数のパテントプールがあり、ライセンス条件を提示していない特許権者もある)かつ高額になることもあって、GAFAをはじめとした世界の有力ネット企業が参加するAOMが、ロイヤリティーフリーを目標としながら提供しているものだ。

 今回のH.266/VVCは、H.265/HEVCはもとよりAV1をしのぐ高圧縮率を実現しており、「イマーシブ(臨場感)メディア用」符号化方式と呼ばれることがある。2つの国際標準化機関、100社超の企業が参画しているため、今後の普及への期待感は大きい。

新規格「H.266/VVC」、結局技術的には何が変わったのか?

 H.266/VVCは、H.265/HEVCに盛り込まれた技術をさらに発展させたもので、基本的には従来の規格の技術を引き継ぎながら、より高度で複雑な方法で動画データを圧縮する。表1に、H.264/AVC、H.265/HEVC、H.266/VVCの仕様の一部の比較表を示す。

既存規格とH.266/VVCの比較表(資料提供 KDDI総合研究所) 表1 既存規格とH.266/VVCの比較表(資料提供 KDDI総合研究所)

 圧縮率を高めるのに特に重要なのが、動画中の画像から符号化対象とするブロックを切り出す方法と、変化する画像の画素移動を予測する技術(上表の画面内予測と画面間予測)だ。これについて以降で解説したい。

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