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» 2020年10月07日 08時00分 公開

「HoloLens2」で出張なしの技術指導も 中小企業が実践したコロナ禍対応を見る

コロナ禍でITを活用した業務改革やワークスタイルの見直しが急速に進む。中小規模の企業もSaaSやVRなどを駆使して、蜜を避け、人の移動を伴わない中で生産性を高める組織が出てきた。実践例を紹介する。

[齋藤公二,キーマンズネット]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を好機と捉え、業務改革や働き方改革を加速させている企業は少なくない。日本マイクロソフトが2020年9月16日に開催したプレス向けラウンドテーブルでは、ニューノーマル(新常態)時代に向けた中小中堅企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の事例が紹介された。

 実際のところ、テレワークはこの半年でどれほど普及したのだろうか。日本マイクロソフトが顧客600社超を対象に実施したヒアリング調査によれば、3月初めは19%だった中小企業のテレワーク実施率が5月初旬には89%にまで伸び、6月は52%と一時的に低下したものの、8月中旬には再び68%に上がった。テレワークが「新しい日常」として受け入れられ、継続的に取り組むべき施策だという認識が広まっているという。

全社テレワークのインフラは間に合ったが……従業員有志が作り上げた「新文化」

 まず、SIerのクレスコの改善事例について紹介したい。同社は「顧客のDX推進を支援」を旗印に、アプリ開発、ITインフラ、組み込み開発などの事業を展開している。東京・品川を本拠に、ニアショア開発向けで北海道と沖縄に、オフショア開発向けではベトナムに拠点を有する。そんな同社では、働き方改革の一環としてテレワークの整備を進めてきていたが、コロナ禍によって、取り組みを前倒しで進めることになったという。

 クレスコの高津 聡氏(サービスコンピテンシー統括本部 テクノロジーサービスユニット 先端技術事業部 事業部長)はこう話す。

クレスコ 高津 聡氏(左)、同 梶 翔馬氏

 「2020年夏に向けて在宅勤務制度を開始しようと、比較的緩やかに準備を進めていました。ただ、年があけると新型コロナウイルスのために対策が待ったなしの状況になり、急きょ3月から在宅勤務をスタートさせることになりました。情報共有やセキュリティ面などの不安がありました」(高津氏)

 そこで採用したのが「Microsoft 365」を活用したテレワークだ。サポートを受けながら、Web会議ツールとして「Microsoft Teams」を活用した在宅勤務制度を整備し、情報共有やセキュリティの不安を払拭した。在宅勤務開始後8割異常の従業員がテレワークに移行し、さらに取引先にもリモート環境での整備を提案できるようにもなったという。

「いいね」の数が会社を変える? ニューノーマル時代の組織変革

 だが、テレワークへの移行は一筋縄ではいかなかった。インフラ整備こそなんとか成し遂げたものの、新たなルールの策定や意思決定の仕組みが整っていなかったのだ。

 「インフラ整備は課題に直面しつつも、DX推進室を中心にスムーズに移行を完了させられました。ただ、ルールを急に変えたり、準備ができていないところもあり、それらについては、継続した決定や改善プロセスが必要だと感じました」(高津氏)

 そこで、クレスコが取り組んだのは改善のためのプラットフォームの設置だ。このプラットフォームは社内で「ヨクスル」と呼ばれる。クレスコの梶 翔馬氏(コーポレート統括本部 経営戦略統括部 経営企画室 アドバンストジェネラルスペシャリスト)は次のように説明する。

「ヨクスル」とは
組織エンゲージメント向上の取り組み

 「ヨクスルは、会社や社員、家族、顧客をより“ヨクスル”ためにクレスコ社員自身が気楽にまじめな提案ができる場です。Teamsを活用して全社員参加型の提案&カイゼンプラットフォームとして新設されました。ヨクスルでは『いいね』の数が会社を変えていきます」(梶氏)

 「いいね」の数が組織を変革していくヨクスルの仕組みは次の通りだ。

 オーナー(社長)とライン職有志が事務局となり、提案が投稿された後に社員から一定数の「いいね」が集まると、提案者と事務局が実現に向けてタスクフォース化する。もしオーナーの「いいね」がついた場合は提案は即採用されるという仕組みだ。各提案ステータスは「Planner」で可視化されているため、社員全員が取り組み状況を確認することができる。

 ヨクスルは、クレスコの経営理念の1つである「クレスコは皆が経営する会社である」の具現化施策だ。Teamsを使ったテレワークでは、ヨクスルの新設の他「社長チャネル」と「感謝を伝えるチャネル」の解説など新たな気付きを得るきっかけになったという。

 社長チャネルは社長から社員へ思いを伝える場であり、Teamsでダイレクトに社員に発信することでメールでは難しかった「感情共有」ができるようになった。また、感謝を伝えるチャネルでは、コロナ禍で対面で感謝を伝えにくい状況の中、双方向のコミュニケーションの場を醸成できた。

 それを受けて高津氏は「新たな気付きを得ることで新たな取り組みがはじまり、それが新たな文化につながりました。またこのようにして醸成された文化を既存のビジネスを補強し、顧客の業務効率化支援にも役立てています」と、テレワークがビジネスにも好循環をもたらしたと説明した。

「HoloLens2」で出張なしの技術指導も 中小企業が実践したコロナ禍対応

武蔵精密工業 衛藤明頼氏

 次に紹介する武蔵精密工業の事例は、コロナ禍で「HoloLens2」と「Dynamics 365 Remote Assist」を用いたリモート支援の取り組みだ。同社は1934年に創業し、自動車向けパワートレインやリンケージ&サスペンション、二輪向け部品の製造・販売を手掛けている。

 武蔵精密工業では、従業員の多くが海外で働くこともあり、海外技術支援の在り方を再構築する必要性を感じていたという。これまでは、海外に技術者が渡航し、フェーストゥフェースで技術・スキルを伝達していたが、コロナ禍で渡航制限が行われたことにより、従来の技術支援が困難になった。

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