1971年に東邦精工として事業をスタートしたTHKは、日米欧、アジアで機械要素部品の製造開発、販売を手掛ける機械大手企業だ。2020年8月25日には経済産業省の「DX注目企業2020」に選定されている。同社は約10年の歳月をかけて財務経理業務の改革を推進する。事業が拡大し、海外進出を強化する中で、目が行き届きにくくなりやすい海外拠点の会計情報を把握するために同社は何を変えたのか。
本稿はブラックライン主催のイベント「BeyondTheBlack TOKYO2020」における対談をベースにその模様を再構成してお届けする。聞き手はブラックラインの古濱淑子社長、話し手はTHK財務経理統括部の中根建治統括部長だ。
中根氏は2005年に財務課長に就任している。就任した時点であまりの手作業の多さと、承認作業の煩雑さに参ってしまったことから、何らかの業務の見直しをしなければいけないと考えたのが、業務改革のきっかけだという。
「当社は事業のグローバル展開を続けており、拠点が増える過程にありました。財務経理部門は多忙でしたが、その中でどう時間を作るか、忙しいからこそ無駄な作業を見つけてなくしていこうという意識がありました」(中根氏)
そこで中根氏は、まず「課題一覧表」を作り、作業の無駄やムラを書き出すことにした。さらに書き出した無駄やムラの要因が何なのかを紙に書き出し、改善の難易度や期待効果、関与する人や組織を調べながら、付加価値の高い業務や負担の大きい業務に着目して効果が出やすい領域をさぐっていった。
課題をまとめた後で最初に改革に着手したのは「厄介な現物」だった。「現物」とは具体的には現金出納と手形の手続きだ。
「現金出納の作業は、時間はかかるものの付加価値は生みません。支払い手形の作業も同様です。このような部分の手作業のプロセスをなくす施策からとりかかりました」(中根氏)
このように徐々に財務経理部門の業務を改善してきた中根氏は、ついに2013年から「共通会計プロジェクト」をスタートする。このプロジェクトは全体で5〜6年をかけて国内外のグループ企業全体で標準化と可視化、統制強化を進めるプロジェクトだ。その背景には財務経理の合理化と最適化による組織力強化の狙いがあった。
組織力強化は、2008年に発生したいわゆる「リーマンショック」による危機からの脱出を目指す取り組みの一環だった。
お詫び:公開当初、中根建治執行役員のお名前と肩書きに誤りがありましたので訂正し、再公開いたしました。関係者の皆さまには謹んでお詫び申し上げます(22 Oct 2020 10:21:52 +0900)
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