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» 2020年10月01日 11時00分 公開

ジョブ型雇用だけではない日立の人事戦略 30万人を変える10年の計落ちこぼれの日本をグローバル標準に引き上げる

世界30万社員の中でジョブ型が実践できていないのはほぼ日本のみ。日立の人事制度改革は、日本企業の組織変革ではなくグローバル企業から見て「落ちこぼれ」の日本地域を標準化することが目的だった。日立グループ人事トップが描く30万人の人材戦略とは。

[指田昌夫, 原田美穂,キーマンズネット]

 2020年5月、日立製作所(以降、日立)は同社「2021中期経営計画」の進捗(しんちょく)発表の中で、国内約3万人を対象に「ジョブ型」を適用すると発表した。これに先立つ2020年1月には日本経済団体連合会(経団連)による、企業側労使交渉の指針「2020年版 経営労働政策特別委員会報告」でも今後は既存のメンバーシップ型雇用に加えてジョブ型の雇用を組み合わせて専門性の高い人材を適切なポジションに受け入れやすい組織を作るべきとの提言が示されていたことから、この話題はコロナ禍で新しい働き方への移行が進む中、日本型の雇用システムが転換期を迎えつつあることを実感させるニュースとして広く注目を集めた。

 日立がジョブ型の人材登用を宣言したのは2020年のことではあるが、その土台には約10年に及ぶ事業戦略と一体となった人事戦略に基づく計画があった。

 本稿は、ワークデイ日本法人がオンラインで開催した年次イベント「Workday Elevate Digital Experience」で、日立製作所 代表執行役執行役専務 コーポレートコミュニケーション・オーディット責任者兼CHROの中畑英信氏による同社が進める人材改革に関する講演の内容を紹介する。

約8000億円の赤字からのV字回復した大改革とは

 講演で登壇した中畑氏は1983年に日立製作所に入社し、以降、日立アメリカや日立アジア(シンガポール)などの海外赴任を経て、2004年から日立本社の人事戦略室部長、2008年から国際事業戦略本部 経営企画部長を歴任、2014年からはCHRO(Chief Human Resource Officer)兼人財統括本部長としてグローバル全体の人材戦略を指揮する。CHROとして各国のグローバル企業の人材部門とも積極的に交流し、世界で通用するHRのプロフェッショナル組織確立を目指す。

日立製作所 代表執行役執行役専務 コーポレートコミュニケーション・オーディット責任者兼CHROの中畑英信氏

 日立は1910年創業、グループ全体の売上収益は2019年度で8兆7672億円、うち海外の売り上げが48%と約半数を占める。連結の社員数は30万1056人でこちらも海外比率は46%だ。子会社815社の大半が海外企業だ。直近では米国のエネルギー取引サービス企業「ABB」の買収などもあり、さらに海外比率は高まっている。エネルギーやモビリティ、ITなどの事業もグローバル化が進む。実はわれわれが生活の中で身近に知る白物家電メーカーとしての日立は同社全体の収益から見るとわずか5%ほどにすぎない。

 中畑氏によれば同社はもともと海外でも事業を展開していたが、グローバル企業としてのプレゼンスを高める動きが進んだのは、2008年前後、大赤字の決算がきっかけだったという。

2.5兆円分の事業構造を5年で入れ替える

 日立の売り上げの推移を見ると1980年から現在までに売上金額を3倍に成長させたが利益は頭打ちの状況が続いていたという。特に2008年度の、いわゆる「リーマンショック」直後は収益が大きく落ち込み、決算では7873億円もの巨大な赤字を計上することになった。この危機からの脱出に向け、日立が実行した事業構造改革は非常に大胆なものだった。

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