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» 2020年09月28日 08時00分 公開

電子契約の法的効力は? イチから分かるクラウド型電子契約サービス

新型コロナウイルス感染症の影響で、「脱・紙、ハンコ」といった言葉に見られるように、バックオフィスのデジタル化に関心が集まる。最近では、電子契約サービスの利用も進んでいるようだが、法的視点で見て本当に問題ないのだろうか。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

 2001年の電子署名法施行から2005年のe-文書法施行と電子帳簿保存法改正で日本のビジネスのデジタル化が一気に進むかに思われたが、15年以上たった現在も完全なデジタル化に踏み切れずにいる企業はまだある。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によるテレワークの普及で、紙中心の業務フローの非効率性があらためてクローズアップされるようになり、潮目が大きく変わってきた。

 なかでも、契約に紙文書を使わない電子契約への注目度が上がり、クラウド型電子契約ソリューションベンダーでは、引き合いが増えるなど活況を呈している。本特集では、電子契約の仕組みと法対応、そして安全性などについて解説する。

気になる電子契約の法的効力と運用コスト

 電子契約の効果は大きく分けて3つ考えられる。1つ目は、既存の契約フローからアナログ要素を排除し、契約締結先企業ともに作業負担の削減が見込めることだ。書面の作成や印刷、製本、署名押印、送付(あるいは人による手渡し)、契約書保管にかかる手間が軽減され、契約企業双方で時間とコストの削減が見込める。

図1 電子契約による契約業務フローの簡素化

 2つ目の効果は印紙が不要なことだ。契約ごとに納める印紙税(収入印紙)が必要なく、特に毎月大量の契約書を作成する企業では大きなコスト圧縮ができる。3つ目は契約書のファイリングや長期保管が簡略化できることだ。鍵付きロッカーを置くスペースもいらず、仕分けしてファイルに整理する手間も不要になる。

 こうしたメリットがある一方で、電子契約の導入に関して「本当に法的に有効なのか」「導入や運用コストがどれくらいかかるのか」という不安があるのも確かだ。ここからは、そうした電子契約の懸念点について、一つ一つ見ていく。

なぜ電子契約はもっと早く普及しなかったのか

 まず法的な有効性についてだが、もともと電子契約は民事訴訟法の準文書として扱われるので有効性はあると考えられてはきた。しかしまだ裁判で電子契約サービスの法的有効性が争われた事例がなく、不安を抱くのももっともだろう。

 電子契約の法的有効性を推定する根拠は、約20年前に制定された電子署名法にある。電子署名法では電子文書について、本人が作成したことを示し、改変されていないかどうかを確認できる電子署名があれば真正だとしている。電子契約に即して言えば、契約者双方で契約に責任を持つ当事者本人が作成または承認したものであって、改ざんされていないことを示せれば訴訟上の法的証拠力を有することになる。

 では、契約者の本人性や非改ざんをどのように証明すればよいのだろうか。電子署名法によれば、双方が電子証明書を利用した電子契約を交わすことが、証明の一つになるとしている。

 電子証明書は、いわば身元保証書のようなもので、契約者の双方が認証業者から会社や個人用の「電子証明書」を発行してもらい、それぞれ自社が管理する秘密鍵を使って電子署名(サインや押印に当たる)して、本人性と非改ざんを証明できるようにするものだ。図2に見るような公開鍵暗号方式をとる。

 図2 公開鍵暗号方式による電子署名のイメージ(出典:総務省資料「電子署名・認証・タイムスタンプ その役割と活用」)

 バックグラウンドの仕組みは複雑であるが、契約書の送信者と受信者の双方が電子証明書を取得していれば、送受信にほとんど手間はかからない。しかしこの公開鍵暗号方式の場合は、契約当事者双方が事前に電子証明書の購入と適切な運用が求められることが大きな問題だ。これは運用管理担当者の負担(=人件費コスト)になり、また定期的に証明書の更新コストがかかる。

 自社ではそれらの負担を容認できても、取引先や顧客などの契約相手に同じことを求められるだろうか。対応してもらえない相手先が何社もあれば、かえって契約業務を複雑化してしまうことになる。こうしたことが、公開鍵暗号方式が普及しないかった要因であり、電子契約の普及を遅らせた要因の一つとも考えられる。

電子証明書運用のコストを解消する「事業者署名型」電子契約とは?

 このことから、電子契約ソリューションの導入に及び腰になるのは、特に多くの民間契約先がある企業では不思議ではない。しかし、最近ではクラウド型電子契約サービスの登場により、「事業者署名型」と呼ばれる電子契約の仕組みが使えるようになり、コスト問題は解消に向かっている。

 「事業者署名型」とは、契約の当事者双方が電子証明書を取得することなく、電子契約サービス事業者が契約文書(PDF)に電子署名をして、契約の真正性と改ざんがないことを保証する仕組みのことだ。現在の電子契約の隆盛はこのタイプのサービスによるところが大きい。電子契約サービス事業者であるクラウドサインは、2015年から事業者署名型のサービスを開始した。

図3 「事業者署名型」電子契約のイメージ(資料提供:クラウドサイン)

 この方法は自社で電子証明書を購入、運用する必要がなく、相手先にもそれを要求せずに済む。サービスを利用して契約書を作成したら、相手先にその旨を知らせ、電子署名付きのPDFファイルとして参照してもらい、合意を示す操作をすれば契約締結完了だ。双方にサービス業者の電子署名(およびタイムスタンプ)入りのPDFがメール送付される。

 なお、従来の契約書書式にのっとり、電子契約書に署名欄や押印欄を設けて、記入や印鑑の画像を貼り込み、先方にもそれを求めることもできる。必須ではないが、権限のない従業員などが勝手に契約書を作成したり、契約合意を行ったりなど、不正行為を抑止する方策として有効と考えられる。

 このような仕組みを採ることで、契約業務はシンプルになり、契約相手に余計な負担を強いることもなくなる。サービス料金はかかるものの、電子証明書運用に関わる労力面、人材面での課題が解消され、電子契約を受け入れる相手先の増加が期待できるためにトータルコストの削減が期待できる。

行政からお墨付きを得た「事業者署名型」電子契約の法的有効性は?

 事業者署名型電子契約のメリットは理解できたが、「間に立つ電子契約サービス事業者による電子署名で大丈夫なのか」という疑問は残る。

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