特集
» 2020年09月25日 10時30分 公開

「決算発表延期」はなぜ起こったか、決算を巡る日本企業の3つの課題、変革のための4ステップ

「収支も次の業績予想も発表遅れます、コロナで出社できないので」――。コロナ禍中の決算発表は、監督省庁の配慮を受けて遅延を「大目に見てもらえた」。しかし来年以降はどうなるのか。今の5倍の企業にオンライン決算の仕組みを提供し、さらに効率化やDXにつなげようとする企業がある。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

決算報告書で将来予測を開示できなかった企業が6割、どうすれば防げたか

 コロナ禍の中で決算を迎えた企業の中には、決算業務の遅れから決算発表延期や来期予測の公表をさし控えるなどの重大な結果に至ったケースもあった。決算が遅れた原因として、業務のデジタル化やリモート作業環境が整っていなかったことが指摘されている。その反省を踏まえ「2021年には完全リモート決算企業を5倍に」と提案するのが、クラウド型の財務経理サービスを提供するBlackLineだ。

 同社トップがアナログ経理からデジタル経理への移行意義と具体的ステップを示した。

 「昨年(2019年)は脱アナログ決算への方向性を示したが、今年(2020年)はその先の『モダンアカウンティング』の実現による企業変革の段階に進めたい」と持論と抱負を語ったのは米BlackLineのCOO マーク・ハフマン氏だ。同社は2018年に日本法人を設立、国内でもクラウド型財務経理ソリューション「BlackLine」を提供する。

1 BlackLine Inc. COO マーク・ハフマン氏

*2020年8月に開催されたイベント「BeyondTheBlack TOKYO2020」の講演を基に構成した。


 日本法人社長の古濱淑子氏はハフマン氏のコメントに続けて「現在日本で完全なリモート決算実現企業は6%にすぎないが、2021年には30%まで拡大したい。昨年(2019年)は脱アナログ決算、デジタル決算への移行をテーマにしたが、今回はその先の段階の企業変革がテーマ」と語る。

 コロナ禍は、それ以前から課題とされてきた「リモート決算基盤の強化」をより切実な形で財務・経理部門に突きつけた。多くの企業は出社制限の中で一部従業員の出社、一部のリモート作業で乗り越えてはきたが、「2020年3月期決算作業は1年前と比べて1週間近く遅れる企業もあり、しかも決算報告に将来予想を開示できた企業は43%にすぎなかった」と吉濱氏は指摘する。

 その上で決算業務のプロセスが現状のままでは持続可能性がないと説き、「今こそデジタルを活用して新しい世界に進んでいくべき」と強調した。

 ハフマン氏は「手作業による会計処理はカオス化している」と指摘する。カオス化する要因は多様なシステムを利用していながら一貫性のない業務プロセスが乱立していたり、「Microsoft Excel」の手入力がプロセス内に存在していたりするといった、既存の業務環境の問題にある。

 ハフマン氏は「このような非効率な職場では、従業員の84%が業務に積極的に関わっておらず、20%は会社を信頼していない」とする独自の調査結果を示し、手作業の負担が重いことで職場のモチベーションが下がり、マネジメント側では可視性低下、管理・統一性欠如、リスク増加、人材維持課題などのマイナス要因が総じていると分析する。このような事業継続リスクにつながりかねない現状を打破するには、アナログの世界からデジタル化された「モダンアカウンティング」への転換が必須だと述べた。

コロナ禍以前から抱えていた日本企業の決算をめぐる3つの課題

2 ブラックライン社長 古濱淑子氏

 吉濱氏は日本の財務・経理部門の課題を3つ指摘した。1つは生産性の課題だ。日本は労働生産性で世界34位とされるが*、内訳を見ると標準化や自動化を進めた企業とそうでない企業は、生産性で3倍の差がある。この差を埋めることが日本全体の生産性向上の鍵になる。

注:デービッド・アトキンソン「日本の労働生産性は『韓国以下』世界34位の衝撃」(東洋経済オンライン)。世界銀行の2019年の調査を基にデービッド・アトキンソン氏が独自に集計した数値による。



 第2にスピードの課題だ。月次決算の場合、デジタル化を進めた企業とそうでない企業とは「経営判断の速さが約1週間違う」(吉濱氏)。業務処理、タスク進捗(しんちょく)の不透明さ、タスクの待ち時間に改善の余地が30〜40%あるという。最後に、ガバナンス課題がある。2019年の上場企業の不適切会計事例は過去最多(67件)を記録した。海外展開拡大でのガバナンス徹底が追い付いていない状況に加え、経営者や経理担当者の約半数が財務数字になんらかの不安を抱えながら決算を終えている(同社調査より)。IT統制の欠如と手作業の多さが不安の要因と考えられる。

 これらの課題はコロナ禍以前からのものだが、コロナ禍における出社制限によって、多くの企業が決算業務の一部をリモートで実施することになった。しかし従来の仕組みをそのまま残した「アナログリモート決算」では、数々の問題が生じて効率や質が低下したケースがある。

 吉濱氏は、その典型ケースを「アナログリモート決算」対「デジタルリモート決算」の対比で紹介した。決算のスタートから開示までアナログリモート決算では40日、デジタルリモート決算では25日で完了した例を図示した(図1)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

ホワイトペーパーや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。