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オンライン商談ツール比較のポイントは? Web会議との違い、営業支援機能、メリット、デメリットと導入の注意点

コロナ禍の影響で、対面商談が難しい現在、にわかに注目を集めるのがオンライン商談ツールだ。今回はオンライン商談ツール選定のポイントと営業業務見直しのヒントを紹介する。

» 2020年08月24日 06時00分 公開
[キーマンズネット]

 従来、オンライン商談ツールは、営業組織のパフォーマンスを最大化し、販売機会の拡大をねらう「インサイドセールス」の枠組みの中で使われることが多かったが、対面商談が難しい昨今の状況を踏まえ、全社的な営業ツールとして取り入れるケースが増えている。今回は、営業部門の業務スタイルを大きく変える可能性がある「オンライン商談ツール」の基礎知識と製品選定時のチェックポイントを見ていく。

オンライン商談のメリットとデメリット、Web会議との違いを理解しよう

 客先訪問を基本にした従来の営業形態は、この数カ月を経て電話、メール、Web、SNS、チャットなどを中心にしたICTコミュニケーション中心の形態へと大きくシフトした。外出自粛期間の緊急対応として「オンライン商談」を実施した企業は多かったが、そのうちの多くが緊急事態宣言の解除後も継続的な営業のオンライン化を積極的に進めている。

 とはいえ営業活動を完全にオンライン化する企業はそう多くない。従来の訪問営業は継続しつつ、既存顧客の中で同意してもらえる場合にオンライン商談に切り替えるケースや、初回のコンタクトと商談をオンライン商談で行い、以降は必要な場合に訪問、クロージングフェーズには必ず訪問、というように、訪問とオンラインのハイブリッド営業にするケースが多いようだ。

オンライン商談ツールの4つのメリット

 訪問営業をオンライン商談に切り替えることで、主に次の4つのメリットが期待できる。

・メリット1:訪問営業で必要だった交通費と移動時間がなくなる

 例えば営業スタッフ10人が1日に顧客2社を訪問していて、1人あたり移動に平均90分、交通費1200円がかかっていた営業活動の半分をオンライン化できれば、1年250日間の営業活動で187.5時間(時給4000円なら75万円)+交通費15万円×10人の単純計算で1050万円の節約になる。これで浮いた時間をマーケティングや新規顧客開拓、コンタクト回数増などに使えば、営業のさらなる活発化と売り上げ向上につながる。

・メリット2:商談開始までのリードタイムを削減できる

 訪問営業では電話によるアポイントメント取得から訪問日時決定、実際の訪問と、商談開始までに数日かかる場合がある。オンライン商談なら電話アポから即座に商談に入れるため、リードタイムを短縮し機会損失が防げる。

・メリット3:営業活動を遠方地域に広げられる

 地理的な要因が営業活動の質や量に影響されなくなるため、移動時間とコストがかかる遠方の顧客との商談数を増やし、質的にも充実させることができる。

・メリット4:営業活動の記録を音声・映像で保存、スキル標準化・全体向上に役立てられる

 これはオンライン商談ツールを活用した場合のメリットになるが、オンライン商談ツールによっては、営業資料や報告書ばかりでなく商談のリアルな現場のやりとりを音声や動画で保存できる。成功例や失敗例を編集して営業職用の教材としたり、テーマや場面ごとに検索して営業トーク集や営業用FAQのように利用したりできる。結果として営業スキルの標準化と底上げが図れる。

 これら4つのメリットを生かすことで、商談数や顧客の増加による売上アップと、働き方改革(リモート勤務、フレックス勤務、ダイバーシティ対応、人材採用の多様化・強化など)が期待できる。また営業手法をオンラインに最適化させることにより、商談の質の改善・顧客満足度向上、ひいては受注率アップ、受注単価向上(アップセル増大)を目指すことができる。

オンライン商談のデメリット

 一方で、訪問・対面営業と比べて「感情がわからない」「体温が伝わらない」というような言い方でコミュニケーションの質的な劣化が指摘されることがある。一般に、対人コミュニケーションでは非言語情報が全情報量の7割を占めるともいわれる。目線やしぐさなどの非言語情報は、映像を利用したとしてもオンラインではどうしても不足しがちだ。

 オンライン商談ツールを使う際は、このデメリットを理解して情報の不足を補う工夫が必要だ。対面と同じ資料とトークスクリプトで挑むのではなく、オンライン商談を前提に営業資料やトークスクリプトを検討することが望ましい。この点はオンライン商談ツール導入企業のノウハウを取り入れたり、ツール提供ベンダーのサポートを活用したりしてうまく対処したい。

オンライン商談ツールとWeb会議ツールとの違いは

 商談をオンラインで、相手のITリテラシーが高いことが明らかな場合であらば「Zoom」や「Teams」「Cisco Webex」「Google Meet」(旧 Hangouts Meet)などのWeb会議ツールでも可能だ。PCや通信環境、Webカメラ、ヘッドセットなどの必要機材を備えていて、Webブラウザやアプリを使った会議に相手が慣れていれば問題なく商談と進められるだろう。

 逆に新しい取引先やPCに不慣れな顧客が想定される場合はWeb会議ツールだけでは、顧客が対応し切れない可能性が考えられる。Web会議への招待は電子メールからのアクセスを前提とすることもある。Web会議ツールだけに頼ってしまうと、接続できない場合にこちらから使い方のサポートをすることも難しい。商談前の手続きに障害があれば、信頼感を得にくいばかりか、購買意欲を下げてしまうリスクがある。電話をきっかけとするオンライン商談ツールであれば、電子メールを日常的に扱っていない取引先であっても商談を始められる利点がある。

オンライン商談ツール比較のポイントは? Web会議ツールでOKか、専用ツールか、4つのチェックポイント

 オンライン商談の機能を持つITツールとしては「オンライン商談専用ツール」「Web会議ツール」「ビジネスチャットツール」「CRMツール」「SFAツール」「コンタクトセンター用CTIツール」などが挙げられる。

 営業向けオンラインシステム「bellFace」(ベルフェイス)、ブラウザ電話システム「selfree」(セルフリー)とクラウド営業支援ツール「mazrica」(マツリカ)の組み合わせのように通話システムとSFAを連携させた使い方も提案されている。

 とはいえ、「ビジネスチャットツール」「CRMツール」「SFAツール」「コンタクトセンター用CTIツール」の場合、従来の訪問営業を引き継ぎ、置き換えられるツールは限られている。ツール選定の際は、Web会議、チャット、映像ログ解析、SFA/CRM連携など、豊富な機能を持ち、利用者が拡大している「オンライン商談専用ツール」を基準に他のジャンルのツールや自社が既に持つツールの機能と比較するのが早道だろう。ツール選定の際にチェックしておきたい機能は次の通りだ。

チェックポイント1:顧客に負担をかけずに商談できるか、顧客は面倒な手続きが嫌い

 オンライン商談で最も避けたいのが、商談開始前から見込み客に負担をかけることだ。職場の同僚と実施するWeb会議であれば、ある程度、ツール操作への理解があることを前提とできるが、不特定多数の顧客を相手にした場合にはこうした前提は通用しない。「専用ツールのインストール」「対応ブラウザのインストール」「ID・パスワードの入力や管理」などの手間を初回の商談で求めるとなれば、拒絶される可能性が高い。また顧客企業のシステム運用ポリシーでアプリケーション導入を拒否される場合もあり、好意的に接してくれる人でもPCリテラシーが十分でなければ敬遠されることもある。

 bellFaceに代表されるオンライン商談ツールの場合、基本的には顧客への「電話」から商談が始まる。通話しながら顧客をWebブラウザ経由の簡単な操作だけで専用の商談ページに誘導し、カメラ映像(営業スタッフとの対面映像)や資料映像を利用して商談を進められる。最初のコンタクトポイントが、誰もが利用できる電話のため、事前の準備が必要ない。音声は電話で、視覚情報はWebを使用するのが特長だ。必要に応じてチャットやファイル共有などもできるが、そうした操作についても、電話回線を介してサポートできるので顧客の負担は少ない。

 このように顧客の環境やITリテラシーに依存しないツールの方が使いやすいだろう。ただし、相手先企業でWeb会議ツールやチャットツールを指定される場合もあるので、自社の商談ツールだけに固執せずに商談できる営業の仕組みづくりも重要だ。インターネットを用いることから、顧客にセキュリティ面で不安を与えないことも重要だ。サービスが国際的なセキュリティ標準(ISO/IEC 27001など)の認証を受けていることは顧客にとって安心材料になる。

1 図1 電話音声+Web映像による商談への手続き例(出典:ベルフェイス)

チェックポイント2:通話だけでなく、複数担当者とWeb会議型の商談ができるか

 電話とWebの併用型商談に加え、複数の営業スタッフ、複数の客先の担当者がオンラインで対面型の会話ができるWeb会議機能も有用だ。最初にWeb会議へ招待するのはハードルが高いケースが多いので、電話などを使ってできるだけスムーズに招待できる機能があるツールを選ぶとよい。

 Web会議の場合は映像と音声の安定性が商談の質や満足度を左右する。試用期間を設けているツールが多いので、あらかじめ映像と音声の品質を試しておくことが重要だ。

2 図2 電話会議型の商談までの手続き例(出典:ベルフェイス)
2 図3 Web会議型の商談までの手続き例(出典:ベルフェイス)

チェックポイント3:資料共有、参照の機能はどのくらい必要か

 PDF、Excel、動画などの共有や共同編集機能を備えるオンラインサービスはたくさんあるが、オンライン商談を目的とした場合は営業部内での資料共有・更新機能が必要なのに加え、客先への資料提示(画面表示)や内容の注目箇所を示すマーカー機能やポインター機能が重要になる。これらの機能を簡単に使えるかどうかは要確認ポイントだ。

 この機能だけであれば、顧客のITリテラシーが高いことが明らかな場合はWeb会議ツールの「画面共有」でも十分だろう。ただし、こと顧客や見込み客向けの商談となると、相手の状況が分からない場合も考えられるため、顧客のITリテラシーに依存したり操作に負担を掛けたりする状況は避けた方がよいだろう。

チェックポイント4:議事録共有機能、電子サイン機能

 商談後の議事録を作成し、相手先と共有して承認してもらう議事録共有機能は、営業の証跡を残す意味でも重要であり、映像のログよりも検索や取り扱いが便利な営業資料となる。自分自身の備忘録としても、営業スタッフの異動時の引き継ぎにも、また新人スタッフの教育用としても利用できる。

 証跡管理の面では、電子署名付きの電子サインを利用してハンコを押す感覚で文書に署名する(してもらう)機能があるとよい。いつ作成され、誰と誰とが合意・承認した文書なのかを、法的にも証明できる形で保管できる。契約書への押印・サインの代わりとしても利用可能なので、商談の最終段階をオンライン契約でクローズすることも可能だ。ちなみに前述のbellFaceの場合は弁護士ドットコムの、電子契約サービス「Cloud Sign」(弁護士ドットコム提供)と連携する)ことで、電子サインの機能を実装している。

 ここで挙げた4つのポイントは、商談の始まりからクロージングまでを全てオンライン化する際に必須となる機能といえる。これらの機能を単一のツールで実現してもよいし、既存の環境で流用できるものがあれば、それらを組み合わせることも考えられる。ただし、複数のツールを組み合わせて利用する場合には、各ツールのデータの連携や営業情報、顧客情報の管理を自社で検討する必要があるので注意しておこう。

業務改革を目指すなら知っておきたい営業業務のDXを実現する3つのアイデア

  商談をオンライン化して、既存の商談プロセスをIT化するだけであれば、ここまで見てきた機能でも十分に対応できる。だが、せっかく商談の環境をデジタル化できたのだから、その恩恵を十分に享受することも考えたい。営業業務の生産性向上や顧客満足度アップを目指したデジタルトランスフォーメーション(DX)に寄与する機能を見ていこう。

営業DXのアイデア1:営業活動の映像ログ記録、再利用機能

 営業履歴や報告書管理などテキストベースの営業情報管理から一歩進んだ音声・映像の記録と管理、検索・再利用が可能な映像ログ機能は特に営業チーム全体のスキルアップに有用な機能だ。bellFaceでは商談の録画、録音機能を使うことでリアルな商談現場のやりとりをそのまま記録可能になり、営業スタッフ自身の振り返り、チームメンバー間でのノウハウ共有、場面を切り取って再生可能にすることによるFAQ的な映像の使い方もできるようになる。テレワークが進む今、営業活動の可視化は、売上の向上だけでなく組織マネジメントの効率化や新人育成の側面でも効果が期待できる。

 また注目すべきは会議音声の自動テキスト化機能だ。bellFaceはこのためにオリジナルで商談の会話に重心を置いて学習したAIモデルによる音声認識・テキスト化機能を開発した。商談領域においては一般的な音声認識エンジンよりも優れたテキスト化ができるという。営業スタッフの入力ではなく、実際の現場での会話がテキスト検索可能になることにより、情報活用の幅は大きく広がるはずだ。

3 図4 商談映像の記録・再利用機能の例(出典:ベルフェイス)

営業DXのアイデア2:他システムとの連携機能

 情報活用の面では、既存のSFA/CRMツールなどとの連携、チャットやメールなどコミュニケーションツールとの連携が求められるケースが多いだろう。bellFaceの場合は現在までにSalesforce、Slack、チャットワークとの連携を実現している。製品・サービス自身が各種機能をそろえるのか、既存の広く普及した製品・サービスとの連携を図っているのかを見るのも、1つの評価ポイントになる。

営業DXのアイデア3:トークスクリプト機能

 商談の進め方や質問への回答などには一定のパターンがあり、整理してシナリオ化・定型化できる場合が少なくない。営業トークのステップ(トーク導入時の雑談、課題ヒアリング、商品説明、質疑応答など)ごとにスクリプトを用意して、典型的なトーク例を「カンニングペーパー」(カンペ)のように営業スタッフのPC画面だけに表示するトークスクリプト機能があると便利だ。新人スタッフであっても、スクリプトを参考にしてベテランさながらの営業トークが展開できる。

 また、商談開始直後は「アイスブレイク」タイムとして雑談をしながら緊張をほぐし、トークの糸口を見つける作業をするのが一般的だ。この時には先方担当者の趣味や経歴などが話のタネになる場合も多い。スタッフのプロフィール表示などにより、何らかの話題が提供できるような工夫もあるとよい。

 こうした部分は、Web会議ツールはもちろん、SFA/CRMツールなどでも考慮されていない場合が多い。商談に特化したツールならではの実践的な機能として注目したい。

オンライン商談の定着に向けて

 継続的にオンライン商談を使って売り上げや利益向上につなげるには、営業手法や組織対応について、オンライン商談を前提に改革していく必要がある。直接的な営業の場面以外のワークフローをオンライン商談ツールと紐付けて効率化することも考えられるだろう。

 本稿で取材したbellFaceの場合、約2カ月の導入期間で、営業フロー作成支援、営業資料やスクリプト作成支援などの営業実務の構築や、ロールプレイングによる従業員トレーニング、定着支援もサポートする。

4 図5 オンライン商談ツール導入支援の内容例(出典:ベルフェイス) 2015年の創業以来オンライン商談の成功・失敗をユーザーとともに経験した同社は、獲得したノウハウを新規ユーザー企業への導入支援を標準料金の範囲内で提供している(bellFace導入初期費用20万円、利用料金月額1人9000円、最低5人契約)

 オンライン商談専用ツール以外にも、SFA/CRMツールと連携したWeb会議ツールなど、この領域では既存ツールの機能追加・拡張、連携開発も盛んだ。本稿で紹介した評価ポイントを踏まえ、オンライン商談の最新手法をチェックしていくことをお勧めする。特にオンライン商談の場合、自社従業員だけでなく顧客からの評価が重要になる。この点、SaaS型のサービスであれば無償のトライアルを利用できるものも多いので、早い段階で顧客の反応を図りながら検討するのも一つの方法だろう。

 ここまでで見てきたように、オンライン商談ツールの導入は、単に対面商談をオンラインに移行するというだけのものではない。顧客との関係を強化する情報を蓄積できたり、対面のOJTが難しい状況で営業チームのナレッジを展開するために利用できたりする。また、各種ツールを連携すれば業務の自動化や効率化、可視化といった、業務改善につながる情報も得られる。ぜひツール導入の効果を最大化する方法を検討してみてほしい。

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