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» 2020年08月17日 06時00分 公開

接客ができない! コロナ禍の逆境をLIXILはどう乗り越えたか、CIOが語る

ショールーム閉鎖、直接接客不可を突きつけられた住宅建材メーカー。ニューノーマル時代に住宅用建材はどう売れるのだろうか。DXを急ぐLIXILが進める、新常態の接客、新しい評価手法、今後の働き方を聞いた。

[指田昌夫,キーマンズネット]

作っただけでは売れない時代の顧客接点を考えた

 SAPジャパンの年次イベント「SAP NOW」ではLIXILのCDO、CIOを務める金澤祐悟氏が登壇し、コロナ後の働き方とLIXILが目指すデジタルトランスフォーメーションの方向性を語った。

LIXIL 金澤祐悟氏

 LIXILは、2011年にトステム、INAX、新日軽、サンウエーブ、東洋エクステリアの5社が合併して誕生した企業。住宅やオフィス、商業施設などの建材、設備機器を一気通貫で供給するメーカーだ。現在ではAmerican Standard Brands、GROHE、Permasteelisa Groupといった海外企業の買収・統合も進め、海外市場にも積極的に挑戦する。同社グループの最終ユーザーは世界で10億人に達するという。衛生環境が悪い地域への支援として、数ドルで提供できるトイレなどを開発する社会貢献活動にも積極的だ。

 今回のイベントで講演した金澤氏は住友商事で務めた後、事業者向け工場用間接資材の販売を手掛けるMonotaROで執行役企画開発部長などを歴任、2016年からLIXILに合流した人物だ。金沢氏は現在のLIXILの課題を次のように語る。

 「LIXILは今、大きく変わろうとしている。従来は新築住宅の部材を中心に販売しており、製品を作っていれば家が建つたびに自動的に売れていった。ところが人口が減少に向かい、新築が減ってきたため、これからはリフォームが重要になってくる。リフォームの場合は勝手に需要が生まれるというわけではなく、施主が複数の商品を比較したときに選んでいただかなければ需要が発生しない」

 そこで同社では、マーケティングの方向性を大きく転換した。従来、同社と顧客との関係は、全国にある工務店などのパートナーを介したコミュニケーションが中心だった。だが、現在はリクシル自身が製品を実際に使うエンドユーザーに向けた情報発信やマーケティング活動に力を入れている。

 「そこにデジタルを使うことで最終顧客にいかに近づくかがわれわれのチームのミッションだと捉えている」と金澤氏は語る。

講演は対談形式で実施された。聞き手はSAPジャパン 社長の鈴木洋史氏(画像左)

デジタル化を試してみたものの、実際の効果が分からない

 LIXILは顧客接点の最前線としてショールームのデジタルトランスフォーメーション(DX)に力を入れる。「エンドユーザーに近づきたいというビジョンを掲げても、当社の場合、接点が限られる。われわれの商材は頻繁に買うものではなく何年かに一度買い替える性質のものだ。この買い替えのタイミングで現物をご覧いただくショールームは最も重要な顧客接点といえる。そこでショールームでの体験をより良くしたいという思いで、いろいろなデジタル施策を打っている」(金澤氏)

 例えば従来、ショールームで顧客に提案した商品は接客を担当した従業員が順に型番などをメモしていき、それを後で入力して見積もり書に起票していた。このプロセスをデジタル化して、取り扱い商材の型番情報だけでなく、その場で、実際の形状を3次元モデルで閲覧しながら案内できるサービスを開発した。閲覧した情報はそのまま見積もりにもすぐに反映できる。

 「こうしたデジタル施策をしながらも、これらが実際に顧客に響いているかどうかを判定する方法が当初は分からなかった」と金澤氏はDXによる顧客体験改革の効果測定がいかに難しかったかを振り返る。確かに便利そうだが、本当に顧客よい体験をできているのかが分からなければ次の施策を検討できず、改善する手掛かりをつかめない。そこで、金澤氏はこの先の顧客接点改善に向けた評価方法の検討を進めた。ここで目についたのが、顧客体験、従業員体験などを管理する統合プラットフォーム「Qualtrics Experience Management Platform」(Qualtrics)だ。「これは使えるのではないかということで検討を始めた」という。

ショールーム閉鎖でどう接客? 急ごしらえの接客ツール展開の裏にあった「裏付け」

 ショールームでの顧客体験をデジタル化して終わりではなく、施策の成果を定量的に評価して継続的に改善し続けるプロセスを作り込む目的でQualtricsに目を付けた金澤氏だが、そもそもショールームでの対面接客が難しい状況が生じてしまった。対面接客での顧客体験の定量評価どころではない状況の中で、金澤氏らが挑んだのは全く新しい接客の手法だった。ここで、金澤氏らの新しいチャレンジを数字の面で支えたのがQualtricsだったという。以降では、LIXILが挑戦した新しいデジタル体験とその評価の手法、成果を見ていく。

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