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» 2020年08月07日 06時00分 公開

コロナ禍があぶり出した日本の“デジタル敗戦“ 「デジタル化推進基本法」に向けた準備と「逆都市化」の提言とは

マイナンバーカードはなぜ躓いたのか――。前IT大臣が語った「20年間の日本のIT政策の敗戦」とは。反省を踏まえた新たな提言「デジタル・ニッポン2020」は次の10年で日本をデジタル化するのだろうか。

[指田昌夫,キーマンズネット]

「“デジタル敗戦”だと思っている」――無力だったデジタル化政策

 「ヒトが動けなくなって、モノとカネもロックされた状態を初めて体験した。経済がここまで落ち込むことも経験したことがなく、前例のない形の大不況に陥っている。この状況に対して、今までの国のデジタル政策は役に立たなかった。私自身は『デジタル敗戦』だと思っている」

 全編オンライン化されたSAPジャパンのイベント「SAP NOW」(2020年7月9日開催)では基調講演に平井卓也前IT・科学技術大臣(自民党デジタル社会推進特別委員長)が登壇した。同氏が講演冒頭、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による社会の状況に触れて語ったのが冒頭の一文だ。パンデミックに対して「社会がデジタルテクノロジーに十分に対応できないという現状に対して、国のデジタル政策をけん引してきた1人として大いに反省している」と語る。

 特別定額給付金を交付する過程では、マイナンバー普及率の悪さやオンライン申請システムの整備の甘さが指摘され、感染者数などの報告では数字のばらつきや計算間違いが多数指摘された。保健所の業務の多くがいまだにFAXと帳票、手作業の集計を基本としており、書式の統一もされ例無い状況が明らかになった。他国が当たり前にできている集計業務の対応だけで、現場が疲弊するほどに業務負荷が高まった。情報連携では過去の法規制が障壁となり、スムーズな運用ができなかった。

 平井氏は、この現状を立て直してデジタル化を進めることを目指した、自民党による政策提言「デジタル・ニッポン2020」立案の中心人物だ。次の国会で議案提出を目指すこの政策の検討は、過去のいろいろな政策を踏まえて、今回の新型コロナウイルス感染症の流行によって起きた事象を冷静に分析し、何がダメだったのかを省みることから始めたという。

2001年から始めたデジタル化推進、IT基本法を見直す契機になった2つの失敗

  平井氏らが作る「デジタル社会推進特別委員会」は、2019年に組織された。2001年に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法が施行されたことをきっかけに立ち上げられた「e-Japan特命委員会」を源流とする。

 そもそも自民党がデジタル・ニッポン構想を検討し始めたのは2010年、野党時代に政府への申し入れとして提起した「新ICT戦略」がきっかけだ。

 「2012年、与党に復帰してからは政策提言に加えて、議員立法によるIT政策も活発に推進した。2014年にサイバーセキュリティ基本法、2016年に官民データ活用推進基本法を議員立法として成立させた」

 平井氏は、この2本の法律に対して、「世間の注目を集められなかった」と悔やむ。「当時、デジタルはまだまだ自分とは関係ないと思っている人が多かった」と同氏は振り返る。

 「この2本の議員立法を作るときに、実は2001年に成立したIT基本法を全く改正しなかったことが私の反省点だ。だが逆に、当時の考えで改正していれば今となっては不十分だった気もしており、これから改正をしていくチャンスではないかと思っている」

 新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、社会経済を維持するにはデジタル化が必要だということを多くの人がワガコトととして思い知った今、平井氏はIT基本法を「デジタル化推進基本法」として大幅に改正することを提起する。

 「これができなければ、日本のデジタル化は進まない。戦略や戦術ができたとしても、社会全体をどうするかという大きな理念が国民と共有できない限り、国のデジタル化は掛け声倒れになってしまう。これから目指す社会の在り方をどうするか、個人情報、基本的人権、環境、データのコントロール権の問題など議論を重ね、IT基本法を改正していく決意だ」

平井卓也氏

都市化と逆都市化、デジタル田園都市構想は今だからこそ可能

 平井氏は新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけとした社会の変化に触れ、今後は「逆都市化」が重要になると示唆する。

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