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» 2020年10月16日 07時00分 公開

8万超の従業員情報を管理するSMBCグループ 経営戦略実現のためITを駆使した人事部の挑戦とは

ITを駆使してグループ人材の活用に取り組むSMBCグループは、国内有数規模の人材管理およびタレントマネジメント業務にクラウドサービスをいち早く採用した。8万人超の従業員を抱えるSMBCグループは新たな人事プラットフォームを導入するに当たり、新システムへの要求のハードルの高さや既存システムとの兼ね合いなどの課題をどのようにくぐり抜けたのだろうか。

[谷川耕一,キーマンズネット]

グループ全体で人材管理を最適化できるプラットフォームが必要だった

 三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は、銀行やリース、証券、クレジットカード、コンシューマーファイナンスなど幅広い事業を展開する「複合金融グループ」だ。2017年の前中期経営計画以降、会社ごとではなく、リテール、ホールセール、国際、市場という4つの事業部門を設置しグループ横断で事業に取り組んでいる。この新たな経営体制下では、経営資源をグループで共有し、全体最適な資源投入の実行しなければならない。全てをグループベースで考える必要があった。

SMBCグループの組織図(出典:SMBCグループ公式サイト)

 そこで人事に課せられたミッションは、グループ各社のビジネス形態や人事制度を尊重しつつ、全ての従業員のスキルや専門性といった能力に加え、個性や感性といった性格も一元的に把握し、経営戦略を実行するための人材交流や人員配置をスピーディーに実現することだった。「どのような人材が、グループのどこに、どのくらいいるか、しっかり把握する必要がありました」と振り返るのは、三井住友フィナンシャルグループ 人事部 副部長の竹下佳道氏だ。

 SMBCグループが投資家などから評価を得ている重要のポイントの一つは「経費率の低さ」が挙げられる。その強みを高めるために、グループの垣根を超えて効果的に人的資源を再配分したいとも考えていたという。そのためには、「適時、適切な、適材適所の人員配置を行うための仕組み作りが必要でした」と竹下氏は言う。

 SMBCグループには連結ベースで8万人を超える従業員と、それに応じた数百の拠点と部署が存在する。多様な組織の中で、今成長しているビジネス領域がどこかを把握し、今後どの組織に重点を置いてビジネス変革を起こすべきかを判断し、投資すべき分野に必要な人材をタイムリーに投入する。グループ全体を見据えたマクロな視点での人員配置こそ人事の重要な役割だ。

写真左からSMBCグループ人事部の押田氏、竹下氏、久保氏

 同グループはこれまでも、個人の成長というミクロ視点に主眼を置いた人材交流を行ってきた。人事は、従業員個人の成長のために、個々のスキルやスペックに応じた新たなステージを用意する。その一環として、グループ会社への異動も経験させ、所属する会社内だけでは得難い経験を積ませてきたという。「異動を成長の機会と捉えれば、それまでと違うスキルも身につき、新たな人脈も得られます。この人材育成をより高度化するためにも、個々の人材についてのデータをしっかりと網羅・蓄積し、適切なタイミングで異動を組める基盤の整備が必要でした」(竹下氏)。

新たな仕組みと既存制度の両立可能なプラットフォームを求めて

 これらを踏まえ、グループ全体で人材情報を一元化する基盤「グループ人事プラットフォーム」の整備に取り組み始めた。このプラットフォームは、グループ各社それぞれの人事システムから各社従業員の情報を取り込み、格納することで、人材の「見える化」を実現するものだ。

 「この不確実な時代、経営戦略は柔軟かつ速やかに変化しなければいけません。変化が起こった際に、その戦略を担える人材が足りているのかいないのか、調整にどのくらいの時間が必要かなどすぐに把握できるような体制にしたいと考えています」(竹下氏)

 そのため、一度作ったら完成ではなく、状況の変化に伴って求められるタレント像が変化したとしても、タイムリーに反映できる柔軟さがプラットフォームの要件として求められることになった。

 加えて、経営判断に資する情報を提供するという観点から、グループ全体の人員数の変化や退職率など人事関連の計数を作成・分析できるようにしたいとの要望も強かった。つまり、個々の人材のタレントマネジメント機能と、グループ全体の状況を把握するデータ分析機能を1つのプラットフォームで取り扱いたかったということだ。三井住友フィナンシャルグループ人事部 上席部長代理の久保 健太郎氏は次のように振り返る。

 「新たな取り組みの一方で、SMBCグループ各社は各社の業態に沿った人事制度や仕組みを敷いて運営しているため、既存のグループ各社の人事システムや制度には手を加えずに、仕組みを作る必要もありました。よって“単純に一つのシステムにする“というような貌は困難だったのです」

 それらの要件を満たすサービスを探したが、タレントマネジメントのみ、データ分析のみだったり、あるいは1社単独で使う前提であれば両機能を備えているがグループを横断しての利用には適さなかったりというものがほとんどだった。「欲しかったのは、グループ全体のデータを収集して統合し、タレントマネジメントとデータ分析が両立できるもの。そして私達の独自の視点・オリジナリティを反映できること。これらを妥協せずに追究しました」と久保氏。

 操作性も使い慣れた社内システムと近いものを期待され、一般的なHCM(Human Capital Management)クラウドサービスのユーザーインタフェースでは満足できなかった。システム上の制約で、人事が取りうる選択肢を狭めるわけにはいかない。SMBCグループは、より自由度の高い仕組みを必要としていた。数十のタレントマネジメントサービスを検討したが、既存のパッケージサービスだけでは要望に合うものが見つからなかった。

 しかし、自分たちの要望通りのものを手作りすれば、膨大な時間とコストがかかる。なんとか既存のクラウドサービスを組み合わせて、求める仕組を構築できないかと思案し、SMBCグループは一つの結論にたどり着いた。

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