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» 2020年07月29日 08時00分 公開

エンドポイント対策の役割が変わる!? アフターコロナのセキュリティ動向予測

テレワークが進む中で、セキュリティ対策も新たな環境への対応が求められる。2019年における国内情報セキュリティ市場の実績を振り返りながら、アフターコロナを見据えた今後のセキュリティ対策について、2020年以降の予測を踏まえて解説する。

[登坂恒夫,IDC Japan]

アナリストプロフィール

登坂恒夫(Tsuneo Tosaka):IDC Japan ソフトウェア&セキュリティリサーチマネージャー

国内情報セキュリティ市場(セキュリティソフトウェア市場、セキュリティアプライアンス市場、セキュリティサービス市場)を担当。市場予測、市場シェア、ユーザー調査など同市場に関するレポートの執筆、データベース製品のマネジメントの他、さまざまなマルチクライアント調査、カスタム調査を行う。


国内情報セキュリティ市場の定義

 最初に、本稿で紹介する国内情報セキュリティ市場の区分について整理しよう。IDCでは、セキュリティ市場を「セキュリティ製品市場」と「セキュリティサービス市場」のセグメントに分類して調査を実施している。セキュリティ製品市場の中には、セキュリティソフトウェア製品およびセキュリティアプライアンス製品が含まれる。昨今、市場が拡大しているSaaS(Software as a Service)を中心としたセキュリティクラウドソリューションは、セキュリティソフトウェア製品として区分している。またセキュリティサービス市場は、コンサルティングやシステム構築、運用管理、教育、トレーニングサービスなどが含まれている。

セキュリティ投資が堅調だった2019年

 2019年を振り返ると、セキュリティソフトウェア製品を中心に需要が拡大したことで前年比成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は5.6%と堅調だった。業務基盤にクラウドサービスの利用が進む中で大きく伸びたのがSaaS型のセキュリティソフトウェア製品で、前年比で16.7%と高い伸びを示した。

 また、セキュリティサービス市場も前年比成長率で5.7%と堅調だった。これは、高度なサイバー攻撃の増加によってシグネチャをベースにした検出に頼らない多層防御機能を備えた製品への移行が進み、導入設計から運用に至るまでの専門知識を必要とするセキュリティサービスへのニーズが高まったことに起因する。

 2019年の傾向として、サイバーセキュリティ基本法や改正個人情報保護法といった法規制によって、企業における情報セキュリティ対策への責務が重くなる中で、マルウェアをはじめとしたセキュリティ被害が前年よりも多く報告された。一般的なITソリューションよりも短期間で対策が迫られるセキュリティ領域だけに、被害件数の増加がセキュリティ投資の伸びにつながったと見ている。

 なお、2019年全体でみると、身代金要求型のランサムウェアとして有名な「WannaCry」のようなグローバルで猛威を振るうインパクトのある新たなマルウェアは発生していない。それでも、さまざまなマルウェアを拡散し感染させるプラットフォームとしての機能を持つ「EMOTET」のような複合型のマルウェアが新たな脅威として散見されるなど、個別の事案が数多く発生した1年だったといえる。

市場をけん引するSaaS、二極化が進むハードウェア製品

 2019年に大きく伸びたSaaS型のセキュリティソフトウェア製品は、メールやWebを対象にしたゲートウェイで機能するセキュリティソフトウェアが多く、規模は小さいものの、シングルサインオンを可能にするID管理や膨大なセッション数が求められる「Office 365」対策としてのクラウドプロキシ、そしてクラウドサービスの利用状況を可視化するCASB(Cloud Access Security Broker)といったソリューションも伸びを見せる。

 一方で、セキュリティアプライアンスをはじめとしたハードウェア製品は苦戦が続き、ローカルに置かれるプロキシを活用したWebセキュリティなどはプラス成長を維持するものの、メールなどメッセージング系のセキュリティアプライアンスは二桁以上のマイナスとなった。ただし、単機能のファイアウォールの代わりに統合的なセキュリティ機能を提供するUTM(統合脅威管理)は、中小企業を中心にニーズが高く、この領域は今後も残っていくことになるだろう。

 また大企業向けでは、ネットワークのキャパシティーを制御し高いパフォーマンスを必要とする場面で、ハイエンド向けのアプライアンス製品が必要になる。ハードウェア製品は、小規模向けと大規模向けという二極化が進む可能性が高く、それらの間をクラウドサービスが担うと考えられる。

2020年以降、ISMAPによって進むクラウド利用

 2020年については、2020年3月時点で1.9%のCAGRとなっているが、2020年4月以降は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、月を重ねるごとに悪化すると予測する。企業の生産活動や個人消費の低迷とともに、中堅・中小企業を中心にセキュリティ投資意欲も弱まり、セキュリティ市場全体に影響を与えることになるはずだ。それでも、テレワークの影響でクラウド活用が進み、リモートアクセスやクラウド環境に対するセキュリティ製品、そしてリモートアクセス環境の構築やマネージドセキュリティサービスなどへの需要が高まるため、CAGRは当初の予想から若干下がる程度で、横ばいになると予測している。

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