三谷智子(Mitani Tomoko):イメージング,プリンティング&ドキュメントソリューション リサーチマネージャー
イメージング,プリンティング&ドキュメントソリューションの調査を担当。ドキュメントアウトソーシングサービスやプロダクションプリンタ、インクジェットプリンタなどの市場調査を担当し、国内プリンタ/MFP市場動向およびプリントベンダーの戦略分析を行う。
まずは、今回調査対象としたインダストリアルプリンタの定義について説明する。インダストリアルプリンタには、プロダクションプリンタとラージフォーマットプリンタがある。
プロダクションプリンタとはレーザープリンタの電子写真方式を採用したもので、モノクロ印刷だと1分間の最高印刷速度が91PPM以上、カラー印刷では70ppm以上で、高速インクジェットプリンタもこのカテゴリーに含まれる。コピーセンターやプリントセンターといった社内印刷を請け負う部署を持つ大企業をはじめ、印刷会社やキンコーズといったプリントサービスプロバイダーなどで導入されている。
ラージフォーマットプリンタは、A2サイズ以上のメディア、具体的には紙や木材、塩化ビニール、透明フィルムなどに印刷可能なプリンタであり、事業者はもちろん、CADで製図する設計事務所や建設会社といった一般企業、地方自治体などで多く導入されており、価格は安価なもので20万円前後だ。
3Dプリンタには材料押出堆積法や光造形など7つの造形方式が含まれ、コンシューマーおよび法人ともにターゲットとしている。
2019年のインダストリアルプリンタ市場の支出額実績を見ると、プロダクションプリンタ市場は前年比6.2%増の323億2900万円、ラージフォーマットプリンタ市場は1.0%減の214億3400万円となり、インダストリアルプリンタ市場は前年比3.2%増の537億6300万円となった。
プロダクションプリンタが伸びた要因は、2019年に新製品の登場で入れ替えの機器の値崩れが発生しにくかったこと、そして数千万円から数億円ほどの価格帯の高速インクジェットプリンタの出荷が伸びたことが大きい。プロダクションプリンタそのものの台数は減少しているものの、支出額では5%を超える大きな伸びとなった。
一方で、ラージフォーマットプリンタは前年比1.0%の減少となった。これまでは設計図などをA1で印刷して持ち歩くといったことが現場では当たり前だった。しかし、今では出力したものは資料に添付するだけで、現場ではタブレットなどで閲覧し、印刷はA2やA3サイズの紙で十分という時代になり、出力頻度は以前と比べて大幅に減っている状況だ。
また、駅や商業ビルなどに張られていた紙のポスターがデジタルサイネージに代わってきたことで、印刷ニーズそのものが減少傾向にあると見ている。もちろん、巨大な屋外看板などはサイネージそのものを設置するコストが高いため、いまだに出力ニーズは衰えていない。いずれにせよ、ラージフォーマットプリンタの支出額は減少傾向にある。
3Dプリンタは、高機能な100万円以下のモデルも多数登場し、買い替えニーズが堅調に推移したことで前年比3.6%増となった。特に製造業の現場では、現場で使う治具や試作品などの制作に3Dプリンタが広く活用されており、ビジネスの現場で今後も新たな伸びが期待できる。また、趣味の世界で3Dプリンタを購入する人も増えているようで、3Dプリンタ市場の需要を下支えしているといえる。
日本では緊急事態宣言が解除されたものの、まだ世界規模での混乱が続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、インダストリアルプリンタおよび3Dプリンタはどちらも厳しい状況になると考えられる。
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