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BPMツールはRPAと同じボトムアップ型アプローチで追加可能。期待が急騰するBPMの実態をNECソリューションイノベータに聞く

» 2020年05月20日 10時00分 公開
[加藤学宏RPA BANK]

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RPA BANK

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を本格展開する際、どのような障壁が待ち受けているのか。IT担当者向け総合情報サイト「キーマンズネット」が2019年8月に実施した「RPA(Robotic Process Automation)の導入状況に関する調査」によれば、技術や運用に関する理由を除いた場合、「期待したROI(投資利益率)が出ない」「BPR(業務改革)の必要が出てきた」との回答が上位に挙がった。

「先々の展開まで熟慮して悩んでいる企業ほど、RPA単体ではなく、BPM(ビジネスプロセス・マネジメント)ツールと合わせた提案を求めるようになっている」と、RPAとBPMの連携による業務改善ソリューションを提供するNECソリューションイノベータ株式会社の木之内喜之氏は述べる。RPAに比べてツールの種類や情報が少なく、難しそうな印象もあるBPMの実態について、同社に話を聞いた。

■記事内目次

  • 1.RPA導入の意識が明確に変化した2019年
  • 2.BPMとRPAの相互補完で業務全体を最適化
  • 3.RPAと同じボトムアップ型で導入可能なBPM
  • 4.RPA導入後ほどBPMによる改善が効果的

RPA導入の意識が明確に変化した2019年

−この数年「RPAブーム」とも呼べる状況が続いていますが、導入企業も増えた昨今、支援する立場で感じる変化があれば教えてください。

安武秀喜氏(ソリューションビジネス事業部 プロフェッショナル): RPAが盛んになったのは2016年頃からですが、それ以前から当社はBPMツールを提供しており、私自身は10年以上にわたりBPMを専門領域として企業を支援してきました。実は最近まで、BPMを求める顧客は年間に数社程度でしたが、2019年の7月頃から問い合わせが急増しているのです。

木之内喜之氏(ソリューションビジネス事業部ゼネラルマネージャー): RPAの導入を「目的」にする企業が多かったのですが、2019年後半からRPAを「手段」と捉える意識が強くなり、「RPAを入れたい」から「業務を改善したい」へと相談テーマがはっきりと変わったことを実感しています。RPA導入事例が豊富になり、期待したほど効果が出ない「障壁」を意識するようになった影響もあるでしょう。

現場からは「RPAを早く導入したい」との声が高まっていますが、「長期的に効果が出るように」「企業存続にかかわるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みにも貢献するように」と、先々までを視野に入れて悩んでいる情報システム部門ほど、RPA単体ではなく、BPMツールと合わせた提案を求めるようになっています。

BPMとRPAの相互補完で業務全体を最適化

−BPMとRPAを組み合わせる価値について、詳しく教えてください。

安武: RPAツールを導入したものの、「プロセス全体の見直し・効率化ができていない」「各部門でロボット化が進むことで、管理者の把握していないロボットが増え、野良ロボットが生まれてしまう」「非定型作業や属人化した作業にはRPAが適用できない」といった悩みがあります。

一方のBPMですが、プロセスを見直すだけでは業務改善に限界があることから、人が担っている作業を置き換えられる新たなソリューションが必要だと感じていました。従来の感覚では、システムを導入しても効率化できるのは2割程度でしかなく、人が8割を担っていたからです。

RPAとBPMを組み合わせると、互いの利点と課題を補完して、どちらか単体では及ばない業務全体の最適化が図れます。さらにAIやAI-OCR( AI<人工知能>技術を取り入れた光学文字認識機能)なども加わり、ようやく理想を実現できる時代になったことをうれしく思っています。

木之内: 業務プロセスの流れを人によって途切れさせてしまうことなく、エンドツーエンドで自動化できるようになります。特に適しているのが、部門をまたぐ業務です。

−具体的なケースを紹介してください。

安武: 金融系の営業は、顧客への説明、契約書の入力、そして多数の承認や後続処理が必要であり、業務フローが非常に長くなります。商品によってパターンも異なる中、抜け漏れなくスムーズに進めることが求められます。

営業担当者としては、どのような書類を作成して、誰の承認が必要なのかといったナビゲーションにBPMツールを利用できます。監理者の立場では、フローのどこで滞留しているかピンポイントで知ることができるだけでなく、どこで時間を要しているのか明らかになるため、契約のリードタイムを改善することができます。

分析していくと、人に依存している業務なのか自動化できる業務なのか、ブラックボックスとホワイトボックスをきれいに分けられます。その結果、ホワイトボックスの業務である、顧客情報をシステムに転記したり、チェックしたりといった、自動化できる業務についてはRPAを用いるのです。RPAだけで60%程度の業務量を削減できた例があります。

安武: ファミレスやコンビニなど多店舗で展開している業態では、本社が機材の修理プロセスを効率化したいという引き合いが多いですね。例えばそういった店舗で冷蔵庫が故障した場合、まず店舗からFAXで本社に連絡します。本社は修理の準備を進めるのですが、一定金額を超えると承認プロセスが変わるなど複雑なフローになっています。そして修理の手配ができると、いつ修理できるかを店舗に電話で連絡します。

システム化すればよさそうですが、さまざまな人が働く現場のプロセスを多店舗で変えるのは容易なことではありません。このようなお客様のために、FAXをAI-OCRで読み取ってデジタル化し、ロボットでBPMに登録する機能をテンプレート化して提供しようと構想しています。

RPAと同じボトムアップ型で導入可能なBPM

−BPMは一般的に「難しそう」というイメージが先行しているようです。貴社のソリューションは、どのような受け止め方をされていますか。

木之内: たしかにBPMは「難しいもの」だという概念を持たれていますね。大規模に業務を変えなければならないことが理由の一つでしょう。

一般的には、国際コンソーシアムが標準化した「BPMN 2.0」(※)に準拠し、トップダウンで改善していく考え方、あるべき姿(To-Be)に対して業務を作るという考え方です。これには課題もあって、To-Beにいきなり変えようとするとコストや時間がかかり、現場も追随しにくいものです。

一方、当社の5/20にリリースした「業務プロセス革新支援ソリューション(Business Process Innovation Support Solution)」は、他のBPMベンダーと方法論が異なっていて、かなりオリジナルなソリューションになっています。

ボトムアップで現場の課題を解決するアプローチなので、ある業務に特化して、RPAとともに現場を変えずに(As-Is)導入できるのです。そして、現実的に可能な変化(Can-Be)を繰り返しながら、To-Beに近づけていきます。

−ツールの難易度を「誰でも開発できる」とするRPAが多いですが、実際にはギャップを感じている企業もあります。「業務プロセス革新支援ソリューション」の難易度はどうですか。

木之内: フロー単位で業務改善の視点が求められるため、現場の実務担当者よりは、プロセスを見ることができるレイヤーの人が扱った方が上手くいきやすいと思います。ただし、シンプルな記号だけで書くことができるため、ツールとしては誰でも使いやすいものになっています。

先ほどご紹介した金融系営業の例では、初回の現実的なレベル(Can-Be)を支援しましたが、その後のCan-Beは現場で連続して実施できています。

RPA導入後ほどBPMによる改善が効果的

−RPAとBPMの同時提案を希望する顧客が多いとのことでしたが、すでにRPAを導入している場合には手遅れなのでしょうか。

木之内: どちらが先でもいいと思います。少なくとも「業務プロセス革新支援ソリューション」は、どんなタイミングからでも導入することができます。RPAで思ったほど効果が出ない場合に追加することも難しくありません。

安武:  BPMソリューションを入れてPDCAサイクルを回せるようになるには、それなりに大変です。まずはRPA導入から着手した方が敷居は低いですし、RPAも運用しながらの方が効果的に改善サイクルを回せると考えています。

−最後に、BPMに興味をお持ちの方にメッセージをお願いします。

安武: BPMは、まとまった業務を変えることが「大変」なだけでなく、ソリューションが「高額」というイメージも定着しているようです。しかし、「業務プロセス革新支援ソリューション」はボトムアップ型で一部の業務から始められるソリューションです。RPAを始める感覚で、少しからでもBPMを始めてみてください。現在、テレワークでの作業が多くなっていますが、作業管理が難しいという問題も起きています。そこにマネジメントの仕組みとして取り入れて頂くと効果的です。

木之内: 繰り返しになりますが、RPAとBPMの融合でデジタル化できる範囲が広がり、業務プロセスのエンドツーエンドを自動化することができます。これまで以上に業務プロセスを効率化することで時間に余裕が生まれ、高度な業務ができるようになるでしょう。そして仕事で感じる苦痛から解放され、人として楽しく過ごせるように。そのために貢献したいと考えていますので、BPMで知りたいことがあれば何なりとお声がけください。

(※Business Process Model and Notation:ビジネスプロセスモデリング表記法とは、ワークフローとしてビジネスプロセスを描画するグラフィカルな標準記法であり。最新版である2.0 は、2011年に発行されてる。)

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