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帳票類のデジタル化の状況(2020年)/後編

企業内にある帳票類のデジタル化は、実は「コスト削減」しか考慮していないケースがあるようだ。コスト削減だけを目的に最低限のデータ化しかしていない場合は、今後のDXや事業継続性に影響が出てくる可能性がある。

» 2020年04月23日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2020年4月6〜10日にわたり「帳票の利用状況に関するアンケート」を実施した。全回答者数120人のうち、情報システム部門が34.2%、製造・生産部門が17.5%、営業/企画・販売/促進部門が10.0%、経営者・経営企画部門が6.7%などと続く内訳であった。

 今回は、企業で実施される「帳票レス化の実行・計画状況」や「帳票をデータ化して管理する理由」「帳票管理でおきた事件」など、企業における帳票の利用状況を把握するための質問を展開。帳票をデータ化して管理する理由は書類保管スペースや紙の出力などに関わるコスト削減を挙げる企業が多いことなどが明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

 前編では96.2%と大多数の企業で部分的にでも帳票のデータ化が進められている現状を紹介した。そこで後編ではその背景や理由などについて深堀していきたい。

帳票の“データ化”が進むも、実態はPDFスキャンやExcel帳票が多数派

 まず全体に対して、紙文書を少しでも軽減するための、帳票のデータ化をどの程度進めているかを聞いてみた。

 「取り組みを実行している」と回答した方の中では「複合機などを活用したFAXデータのPDF化」73.3%、「表計算ソフトを使ったローカルアプリ化」40.0%、「帳票Webアプリを使ってデータ化」25.0%などが上位に挙がった(図1)。また「取り組みを計画している」と回答した方の中でも同様の3項目が上位であったが、その中でも「表計算ソフトを使ったローカルアプリ化」が若干高い結果となった。

図1 図1 帳票のデータ化の状況《クリックで拡大》

 大多数の企業でデータ化に着手しているとは言うものの、実際は複合機を利用したスキャン業務やFAXデータのPDF化、Excelなどの表計算ソフトの活用といった比較的身近な機器やソフトを使った“帳票レス”運用にとどまっていることが見て取れる。

 Webアプリを使い帳票そのものの作成・承認をWeb上で完結させたり、RFIDやM2MなどのIoTを活用した自動入出力など業務フローそのものを変える施策については、興味はあるものの実行や計画に至っていないというのが現状のようだ。

データ化の目的を“コスト削減”に置く企業が多数となる結果に、今後の方向性は……

 では、何を主眼に置いて帳票類のデータ化に取り組んでいるのだろうか。調査では業務で扱う帳票類をデータで管理している方に、その目的を聞いてみた。

 その結果は「書類保管スペースに関わるコスト削減」72.0%、「効率のよい記録を実現するため」48.0%、「紙の出力などに関わるコスト削減」42.0%の3項目が上位に続いた。

 帳票の保管場所の確保や検索・アクセス性の悪さなど、前編で紹介した“紙運用への不満”を解消する理由が挙げられており、紙運用にかけていた無駄なコストの削減を図る企業が多いことが分かる。

 一方で、前編でもう1点“紙運用への不満”として挙げられていたリモートワークの推進やデータの再利用といった観点でデータ化を進めている企業はそれほど多くはないようだ。

 昨今の伝染病流行や災害発生などのリスクを考えると、今後は事業継続性を高めるためにも、リモートワークの推進は必須になるだろう。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進も本格化しつつあることから、どの企業でもデータの再利用を推進し、企業全体で生産性を高めていく流れは、一段と進むと考えられる。

 データの再利用を考慮しない場合はPDFスキャンなどの比較的簡易的にスピード早く実行できる施策を選択し、半面、データの積極的な活用やリモートワークを前提とした環境構築を想定した場合は、帳票Webアプリを活用した承認・取引フローの構築やAI-OCRとRPAを組み合わせた自動入力ソリューションを取り入れるなど、中長期的な全社計画を検討した上で優先順位を付け、できることやるべきことから順に環境を構築していく必要があるだろう。

まだまだある帳票管理の事故、読者の約2割は「経験あり」

 最後に全体に対して、紙やデータに限らず帳票管理において何かしらの“事件”に遭遇したことがあるかどうかを聞いたところ「ある」が17.5%と約2割存在することが分かった。そこで経験したことのある事件についてフリーコメントで尋ねたところ大きく2つに分けられたので紹介しよう。

 1つ目は「何処にしまったか分からなくなり複数人で探したことがある」「数年前のテストデータの検索/抽出に何日も費やして捜索した」といった紛失事件だ。検索性が十分でない管理方法の場合、探し出すまでに多大な工数がかかってしまうことも少なくないようだ。

 最終的に見つかれば良いが「原本データの消失」「見つからないまま監査に引っ掛かる」など完全に消失してしまうケースも多数見受けられた。保存が義務付けられた契約書や取引データなどの消失に至っては大問題になり得るため、こうした企業は厳重かつ検索性の高い管理体制の構築が急がれよう。

 2つ目は「顧客への送付漏れ」「誤送付をしてしまった」といった情報漏えい事故だ。ずさんな運用管理によって個人情報などの機微情報の漏えい事故を引き起こしてしまった企業も少なくない。自社が加害者にも被害者にもならないよう、全企業で定期的な帳票管理体制の見直しを行う必要があるだろう。

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