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» 2020年04月01日 08時00分 公開

武州工業はどのようにして大手企業とフェアトレードを実現したか――中小企業のデジタル化が持つ意味を考える

東京のメーカーが東京の賃金でなぜアジアの大量生産工場と競争できるのか。競争力強化と持続可能な成長に向け、取引先に大胆な改善や購買プロセス変更を提案する部品メーカーがある。キーワードは「フェアトレード」だ。

[小林由美,キーマンズネット]

 「当社はフェアで持続可能な成長を目指すSDGsに注力しています。デジタル化は中小企業にフェアトレードと持続可能な成長をもたらす道具として有効なのですよ」――中小企業の業務IT化の状況を取材したく訪問した企業で、取材冒頭、社長からこんな話を切り出された。率直に言うと筆者はこのメッセージに、まったく「ぴん」とこなかった。

 「フェアトレード」と聞くと、先進国が後進国との商取引で不当な価格で搾取する状況を改善する活動を想起する。植民地時代からの商習慣が根強いコーヒー豆やダイヤモンドなどの取引で不均衡を是正し、適正でフェアな取引をとうたう、あの活動だ。「SDGs」や「持続可能な成長」といったキーワードは、はばからずに言うならば、大手企業がコーポレートメッセージに掲げる「きれいごと」の言葉としてしか認識してこなかった。中小企業のデジタル化がこれらの言葉とはすぐには結び付かなかった。

企業間のフェアトレードは何が支えるのか、持続可能な成長は可能なのか

 今回取材に応じていただいた武州工業 代表取締役の林 英夫氏の名刺は次のようなデザインになっている。ピンとくる方もいるかもしれないが、国連が定める「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」の17の国際目標から10項目が掲げられている。

名刺表面は国連のガイドラインに則し、SDGsのロゴとともに「企業活動を通じてSDGsへの取り組みを推進してまいります」との宣言もある。同社の活動が多数記されている。ICTなどの積極活用だけでなく「8.20体制(1日8時間勤務20日稼働)」や「ISOからの卒業」といった項目も目に付く) 名刺表面は国連のガイドラインに則し、SDGsのロゴと共に「企業活動を通じてSDGsへの取り組みを推進してまいります」との宣言もある。同社の活動が多数記されている。ICTなどの積極活用だけでなく「8.20体制(1日8時間勤務20日稼働)」や「ISOからの卒業」といった項目も目に付く)《クリックで拡大》

 なぜフェアトレード、なぜSDGsなのか。

 「過去、大企業は社会的責務としてCSR活動に取り組んできましたが、近年は社会的要請としてESG(環境、社会、ガバナンス)やSDGsへの対応が求められるようになりました。大企業が『誰一人として取り残さない』と宣言してくれるのは、中小企業にとっては大きなメリットです。コンセプトに含まれる『地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)』は重要です」(林氏)

武州工業 林 英夫氏 実際に本気でやってみたらできます。しかもSDGsには取引先の企業にも大きなメリットもあります」(林氏) 武州工業 林 英夫氏「実際に本気でやってみたらできます。しかもSDGsには取引先の企業にも大きなメリットもあります」(林氏)

 こう話す林氏の考えは、中小企業を保護するような方向の話なのかと思いきや、実はそうではなく、非常に大胆な改革を、大手/中小の垣根なく取引企業間全体で実践しようという意欲的な提案だった。

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