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» 2020年02月04日 16時35分 公開

地銀を巻き込み中小企業の経営改革に乗り出すfreee、金融機関のAPI連携で何が変わるか

freeeが銀行API連携をきっかけに、地方中小企業の経営革新や地銀のサービス開発支援に乗り出す。サービスのOEM提供も視野に、日本中の中小企業の経営力強化や資金調達支援をITと経営支援の両面から支える。

[原田美穂,キーマンズネット]

 2020年1月27日、freeeが「金融機関向けにオープンAPIに係る説明会」と題した場を設けた。2020年5月を期限とする改正銀行法への対応状況や金融機関への機能OEM提供構想などの説明と合わせて、各金融機関向けにfreeeそのものの「監査」の場を提供するという趣旨だ。約100の金融機関の担当者が参加、27の金融機関はリモートで監査の様子を視聴した。

 2012年設立のfreeeはクラウド会計ソフト「freee」などを提供する企業だ(以降、企業名をfreee社、製品名をfreeeと表記する)。2019年12月には東京証券取引所に上場、サービスの商品形態も刷新してFinTechにも注力する。主力商品である「クラウド会計ソフトfreee」の他、「人事労務freee」「会社設立freee」などのSaaSを展開する。

 クラウド会計ソフトfreeeは経理業務の自動化や受発注業務の電子化、請求書発行のシステム化、自動化、入金管理などをクラウドサービスとして利用できるもの。併せて人事労務管理機能も提供するため、企業の管理部門は必要とするIT環境をまとめて使える。システムの導入や運用者を置く必要なく利用できることから中小企業を中心に、ユーザーを拡大しつつある。

  freee社は直近では個人事業主向けのサービス価格を改定したことで話題になった。一方、各種金融機関との健全な接続とより密接な連携を目指した機能開発に、積極的な投資を進める。

日本中の銀行がFinTech企業とAPI連携でつながると、日本中の中小企業のデジタル化が進む

 2020年5月は改正銀行法における「API対応」の目標期限とされる。改正法ではfreee社のようなFinTech企業(電子決済等代行業者)と金融機関との間で、合意に基づき適切なAPIによるシステム連携を実現することが求められる。freeeはもともとWeb画面から直接ネットバンキングやクレジットカードの明細を取得して帳簿に自動記帳する機能を持っていた。だが従来こうしたSaaSツールによる取引の一部では、金融機関の同意なく別のアプリがログイン情報を使ってデータを取得する「スクレイピング」と呼ばれる、いわば「非公式な手法」が使われることもあった。こうした取引は利用者のリスクが大きく、健全ではない。このため、改めて金融機関が外部のサービスと適切な方法で安全に接続するためのルール作りが進められてきた。

 freee社の執行役員でfreee finance lab会長の小村充広氏は現在の自社のAPI接続の状況について、2020年5月末までに「顧客口座数でfreeeサービスの利用者の90%が金融機関とのAPI接続を実現する見通し」と説明する。

 「残り10%については開発リソース確保次第順次となる。その間は暫定敵にスクレイピング機能を提供し、API接続と同等の機能を利用できるようにする」(小村氏)

 freee社がここまで金融機関とのAPI連携に注力するのには理由がある。中小企業の業務改善を支援するSaaSを提供してきた同社のサービスは、金融機関がいままで取引企業に実施してきた経営支援や融資検討にそっくりそのまま生かせるものだからだ。金融機関の企業支援が変われば、後述するように日本全国の中小企業のデジタル化が進む可能性がある。

freeeの小村充広氏 「都市銀行などはAPIを利用できるケースが多いが、地方銀行などでAPI連携に対応していないシステムも少なくなかった。こうした事情でスクレイピングが一般的だったが、API接続に変更することで、早く連携ができ、エラーが減る。接続金融機関側のシステム負荷も平均でおよそ20分の1となり、セキュリティ面でも利点が大きい」とAPI接続の利点を説明する

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