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シェアードサービスの実績を生かした社内外の働き方改革。日立マネジメントパートナーはRPAをエンジンに進む

» 2020年01月07日 10時00分 公開
[RPA BANK]

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(写真左から)蛭田 俊満 氏(事業企画本部 Lumada推進部 主管)、奈良岡 望 氏(人事ソリューション本部 RPA設計部 主任技師)、山本 浩樹 氏(人事ソリューション本部 RPA設計部)

国内の企業がこぞって経営のデジタル革新へと向かうなか、2016年からRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入プロジェクトを進め、社内全組織への展開を目指してきた株式会社日立マネジメントパートナー。社内展開の技術と知見の実績を基盤に、ETL機能とマッチングさせた総合BPOサービスをパッケージ化。シェアードサービスをサポートするシステムとして約220社、25万人への提供を目指している。

日立グループのシェアードサービス会社として人事・総務業務をサポートしてきた同社は、多種多様な企業群で構成される日立グループへのシェアードサービスで培ったBPOや業務効率化に実績がある。ICTを活用した人事ソリューションを開発・提供するリソースも豊富だ。

同社のシェアードサービスは社員の業務負荷を軽減するとともに、総労働時間の削減や生産性の向上など、総合的な付加価値をもたらすもの。社内での実績を背景に、社外の労働環境をいかにして向上させていくのか。働き方改革の取り組みが加速するなか、RPAソリューションの開発、普及に尽力する3名に話を伺った。

■記事内目次

  • 1.ETL機能とロボットをマッチングさせ、独自のRPAソリューションを確立
  • 2.170名が受講した社内資格制度。非エンジニアでもRPAに親しめる環境を
  • 3.社内で、そしてシェアードサービスでRPAソリューションが働き方改革を駆動させていく

ETL機能とロボットをマッチングさせ、独自のRPAソリューションを確立

──日立グループの人事・総務業務のシェアードサービスを手がけてこられましたが、バックオフィス業務においてRPAはどのように活用されてきたのでしょうか。

蛭田 俊満 氏(事業企画本部 Lumada推進部 主管): 私たちは日立製作所の人事部門が分社化し、グループの業務サポートを担うパートナーとして始動しました。人事総務オペレーションの負荷を軽減し、新たな価値を生み出すコア業務への注力、そして働き方改革をたゆみなく支援してきました。現在では223社で25万人という利用者にシェアードサービスを利用いただいております。

ただ、近年はシェアード導入企業、対象の利用者が急増し、取り扱うデータ量も合わせて増加。処理リソース不足が課題になっていたこともあり、シェアードサービスをサポートするシステムとしてRPAを導入するためのプロジェクトが立ち上げられたのです。

奈良岡 望 氏(人事ソリューション本部RPA設計部 主任技師): 私たちは日立製作所のETL製品(Extraction(抽出)・Transformation(加工)・Loading(出力))であるPentaho(日立製作所のデータ統合・分析プラットフォーム。データ活用に必要なデータ統合機能(Data Integration)とBI機能(Business Intelligence(データ分析機能))を一体化したもの)を基軸に、Webサイトのデータ取得・自動ログインなどに対応したロボット(BizRobo!)をマッチングさせた仕組みを「RPAソリューション」として定義し、まずは社内業務の支援用を目指して開発、導入を進めました。

2016年4月からPentahoを基盤にしたPoCをスタートさせ、同年12月にはロボットとしてBizRobo!を導入。翌2017年4月には社内で本格的な導入ができています。このスピード感が実現できたのはPentahoとBizRobo!の親和性が高かったため、そしてビジネスプロセス改善の実績、それに取り組む企業風土があったからだと考えています。

──RPAで効率化させる業務の洗い出し、自動化の推進はどのように進められてきましたか。

蛭田: RPAソリューションについては、エンジニアではなくシェアードサービスに携わる担当者が中心になって導入、開発を進めています。そのような背景もあり、社内でのBizRobo!の操作研修にはプロジェクトメンバー以外の社員、延べ70名以上が参画しました。

これらの教育活動があったため、社内でRPAソリューションの導入対象になる業務を募ったところ、約500件ものエントリーが寄せられています。これらを検討すると、社内業務ではトータル約9,000時間の工数削減が見込まれるなど、社内業務の改善に大きな期待を持って導入が進められました。

奈良岡:BizRobo!導入の好例として「入出金業務」を挙げてみましょう。これはWebベースのシステムに入金・出金の内訳を入力する作業で、各部門で必須になります。1日で最大70件以上をこなさなければなりませんが業務の特性上、入力の時間は午前中に限定されます。BizRobo!導入前は10人のスタッフが4時間以上かけて行っていましたが、ロボットが代替したところ、スタッフ3人で3時間程度の稼働で済むようになりました。

山本 浩樹 氏(人事ソリューション本部 RPA設計部): 入出金業務は項目などディテールの変更だけで横展開が容易です。当初は4部門から導入し、現在は社内部署の大半にあたる10部門での導入が視野に入ってきました。このように、社内のRPAは標準化の方向で普及が進んでいます。部門を横断してワンストップで導入できる体制が理想ですね。

170名が受講した社内資格制度。非エンジニアでもRPAに親しめる環境を

──社内業務の改善にRPAが目覚ましい効果を発揮していることがわかりました。RPAの浸透もスピーディーに進んでいますが、定着化に向けての施策をお聞かせください。

奈良岡: 社内の定着化に向けてはRPA設計部が主導し、運用ルールの明確化、RPA活用事例の共有、周知など社内での情報発信に努めています。

また、Pentahoを基軸にしたRPAソリューションを運用できる技術者を育成するために社内資格制度や表彰制度も充実させています。特に社内資格制度はBronze、Silverの2レベルを設けており、これまで延べ170名が受検しました。Bronzeは、データ統合機能に関する研修を受講し、認定試験(選択式全20問)で7割以上正解で合格。Silverは、プログラム作成の実技試験(全3問)で、アウトプットが期待値と一致していれば正解。2問以上正解で合格となります。

蛭田: 当社のようなシェアードサービス会社があるようなグループ企業でのRPAソリューションの実践的な導入・運用は、シェアードサービスと社内システムの双方に通じていなければ難しいでしょう。社内にはシェアードサービスの担当者、エンジニアも頼もしい人材が揃っています。シェアードサービスの現場の知見、そしてシステムやロボット開発のスキルを融合させ、底上げを図っていきたいですね。

──RPA設計部の主導で教育、研修も活発です。業務で活用するロボットを開発するための環境、人材についてはいかがでしょうか。

蛭田: そうですね。エンジニアの情報発信、共有も活発です。2019年9月、デジタルレイバーによる社会課題の解決を考えるイベント「BizRobo! LAND 2019 Tokyo」が開催されました。弊社のRPAプロジェクトメンバーも参加しましたが、山本がロボットコンテストに参加するという一幕もありましたね。

山本: コンテストでは、ロボットの開発・修正速度、KCUポイント(1秒間にどれだけ多くの操作を行うことができるかの指標)を押さえていることが評価の対象として重視されます。空き時間ができたので、私も飛び入りで参加させていただきました。表彰もいただいて光栄でしたが、3位という結果には満足していません。次回また機会があれば、1位を目指したいところです。こうした技術検証の機会は大きなモチベーションになります。開発技術を磨きつつ、今後も社内の現場やシェアードサービスに還元していければと思います。

弊社のWeb対応ロボットとして採用しているBizRobo!では、多様なアプリケーションの画面操作を記録して一連のフローとして自動構成し、ロボットを作成する機能「Device Automation」という構造解析機能により、より広範に開発できる環境を整えています。この機能を活用することで、非エンジニアの業務担当者でもロボットを作成しやすいテンプレートが作れるのです。

社内で、そしてシェアードサービスでRPAソリューションが働き方改革を駆動させていく

──御社でのRPAソリューションの活用は社内にとどまらず、シェアードサービスにも生かされています。このような好循環は、社内の業務改善が基盤となっているのでしょうか。

奈良岡: その通りです。私たちRPA設計部は、社内業務をRPAで効率化していくRPA推進グループ、社外顧客に向けてRPAの設計・運用支援を行うインプリメントグループの2グループでRPAソリューションの開発・運用に注力しています。

前述の通り、社内の業務改善ではRPAの標準化を進めて汎用性を高めていますが、シェアードサービスでは、その会社ならではの要素を盛り込んでカスタマイズ。企業ごとに使いやすいソリューションとして提供しています。

これには社内におけるRPA活用の知見が生かされました。RPAで代行したい業務の洗い出しを社内でとことん行なってきたため、反復作業や大量データ処理、定期的に処理を行なう業務など、自動化の効果が期待できる業務について知見が蓄積できていたからです。2018年6月から日立グループ向けに提供し始め、2019年10月現在で150以上のソリューションをラインアップしています。

──RPAソリューションのラインアップを見ますと「時間外労働の上限規制対応」「勤休管理支援」など、働き方改革への活用が期待されるサービス事例が目立ちます。働き方改革とRPAの親和性についてはどのようにお考えですか。

蛭田: 2019年4月から働き方改革関連法案が施行され、時間外労働の規制が厳しくなりました。以前から就業時間の管理については問い合わせを多くいただいております。弊社内のRPA活用も生産性の向上、働き方改革につながっていますが、その知見を日立グループ、そして幅広い業界の企業に活用していただければと考え、培ってきたノウハウをRPAソリューションとして結実させてきました。そのニーズに沿ってロボットの開発に注力し、時代の変化によって新たに加わった定型業務を支えていければと考えています。

山本: 引き合いを多くいただいているソリューションの一例が「休日の付け替え」です。ワークスタイルの変革によって、休日の取得を柔軟に考える企業が増えてきました。これにより、土曜・日曜で固定だった休日をウィークデーに振り替えるという業務が発生します。これは総務担当者が人事システムにアクセスし、当該従業員のデータを一つひとつ手動で変更するという反復作業です。企業の規模によっては、数百人単位の休日変更をシステムに手入力することになりますから、単純作業とはいえ煩雑を極めます。

そこで、RPAソリューションで入力作業を代行します。月500人スケールの休日付け替えを5体のロボットで対応し、月初に5時間程度稼働させるだけで社員数百人の休日シフト変更がスムーズに行なえます。煩雑な入力、膨大なチェック作業を自動化できるのです。既に数社から問い合わせをいただいており、ニーズの高まりを体感しています。

──RPAソリューションによる業務効率化は工数の大幅な削減につながり、シェアードサービスによって多くの企業の働き方改革にも貢献できるのですね。今回は貴重なお話をありがとうございました。

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