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「毎週日曜日の14時に上司からのメール通知」で病む――メンションハラスメントの暗い実態

業務コミュニケーションツールの通知にまつわる出来事に苦痛を感じることは珍しくない。どれほどの人が「メンションハラスメント」ともいえる現象にストレスを感じているのか。具体的なエピソードは?

» 2019年12月09日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 「土日祝日関係なく上司や顧客からメールの通知がくる」「案件に絡む人を全てメンションに入れる人がいて、確認がツラいときがある」――こうしたコミュニケーションツールの通知にまつわるストレスを多くの人が抱えているのではないか。

 ヌーラボは、業務コミュニケーションツールを利用する上での通知に関するハラスメントを「メンションハラスメント」と呼称し、プロジェクト管理ツール「Backlog」のユーザー808人を対象に「メンションハラスメントに関する調査」を実施(調査期間:2019年11月5日〜15日)。

 コミュニケーションツールの受信側と送信側の両方の立場で、通知にまつわるストレスを抱えているかの状況や、ストレスの原因となった具体的な出来事を調査した。

 同社が2019年12月3日に発表した詳しい調査結果は以下の通りだ。

 仕事で利用しているコミュニケーションツールで、通知に関連するストレスを感じたことが「ある」と回答した割合は74.5%(図1)。ストレスを感じた具体的な理由として多かったのは下記だ。送信側よりも受信側がストレスを感じている傾向が見え、特にプライベートの時間に受け取った通知に、ストレスを感じていることが分かった。

  • 「プライベートの時間に通知が来て、仕事モードになった」(56.6%)
  • 「プライベートの時間に通知が来て、返信せざるを得なかった」(48.3%)
  • 「あまり関係のない通知に時間が取られた」(46.3%)
  • 「集中したいときに集中が削がれた」(42.7%)
  • 「通知が多すぎて大事な通知を見逃した」(42.7%)
業務コミュニケーションツールの通知にストレスを感じるかどうか(出典:ヌーラボ)

 送信側がストレスを感じる理由としては、「相手が通知をストレスに思わないか、通知を送る前にためらった」(41.9%)や「通知したのに返事が来なかった」(41.6%)などが挙がった。

 またメンションハラスメントのエピソードを分類すると、送信側エピソードが9.5%、受信側と送信側のどちらもが19.6%なのに対して、受信側エピソードが70.9%と圧倒的に多かった(図2)。このことからもメンションハラスメントが受信側で顕著だという傾向が分かる。

「メンションハラスメント」と聞いて思い出すエピソード(出典:ヌーラボ)

毎週日曜の14時にメールを送る上司、個人のアイコンの図柄に「イラッ」

 具体的には、次のようなエピソードがあった。受信側のエピソードを送信側の意見と併せて読むと、オンラインでの業務コミュニケーションがはらむ問題の深刻さが分かるだろう。

<受信側>

  • 土日祝日、長期休暇中も関係なくメンションや個別に連絡を取ってくる上長や同僚がいる。
  • 特に緊急ではないのに休暇中にメンション通知で上司から業務依頼があった。納期を確認したら休暇明けで大丈夫だとのこと。休暇明けに口頭で指示してくれたらいいのに……と感じる。
  • 関係者じゃないのにメンションが飛んできたり、当事者なのに、メンションがなかったりする。
  • 担当者と連絡がつかないとき、社員全員に通知を送り催促してくるお客さまがいる
  • 業務中に、案件に絡む人を全てメンションに入れる人がいて、確認がつらいときがある。重要なのかそうじゃないのか分からないから。
  • 明日言えばいいのにと思う内容が夜間にDMで送られてきたときはイラっとしてしまった。自分の脳のメモリをそれに使いたくないから思い付いた瞬間にDMしたんだろうなと思ったが、俺の脳のメモリ返せよと思った。
  • 夜中の1時に上司からの投稿通知があり「自分が考えていることを伝えておかないと眠れなくて」と言われた。その時間に投稿通知に気づいてしまったこちらはその投稿以降眠れなくなった。
  • 毎週日曜の14時にメールを送ってくる上司がいた。休みだから返信しなくて良いといわれても、気になってしまった。
  • 業務に関することではあるが個人的にうれしかったことを全員に通知されるのはリアクションしなきゃいけないのかな、と感じる。
  • 個人のアイコンの図柄にイラっとすることがある。
  • チャットの文章を細切れで送ってこられる(1行ずつ)。

<送信側>

  • お互いオンライン状態にもかかわらず、質問した内容についてのレスポンスがない。
  • 全員への通知のスルー率の高さが気になる。

メンションハラスメント、悪いのは受信側、送信側のどちらの意識?

 調査では、休暇中にモバイル端末で受け取る通知について、ストレスを感じたことがあるかどうかを、「メール」「業務ツール」「個人SNS」といった連絡手段ごとに調べている。

 ストレスを感じることが「よくある」または「たまにある」と回答した割合が最も多かったのは業務ツールで59.2%。メールについても50.7%が「よくある」または「たまにある」と回答した(図3)。

通知に関しストレスを感じるツール(出典:ヌーラボ)

一方、「通知に関するストレスを減らすため、受信側と送信側のどちらが気を付けるのが効果的と思うか」を聞いた項目では、「どちらも気を付ける」と回答した割合が最も多く44.9%だった。次いで、「受信側が気を付ける」が31.9%、「送信側が気を付ける」が17.3%、「どちらも気を付けなくていい」が5.8%だった。

通知に関するストレスを減らすために、受信側と送信側のどちらが気を付けるのが効果的か(出典:ヌーラボ)

 こうした結果を踏まえてヌーラボでは、ビジネスでどのツールを使うかが問題なのではなく通知機能の使われ方がストレスに影響していると分析。受信側が通知をオフにするなど工夫しながらストレスを減らしていくのが効果的だとしている。

 ただし、「上司やクライアントからの通知に返信せざるを得ない」や「無視すると怒られる」といったエピソードからは、通知オフにできない状況を強いられ、苦痛を感じている状況が透けて見える。ヌーラボでは、業務ツールの便利機能だけに頼らず、自分たちのチームの利用方針を定め、使い方を見直しながらチームワークの改善に努めることが必要だと指摘する。

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