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さよなら「昭和の営業マン」――営業組織の意識・実態調査に見る令和の営業スタイルとは

営業の仕事について3つのグループを調査した結果、明らかになったのは、営業業務周りの関係者による“昭和的営業スタイル”への評価の実態だ。令和の営業はどう活動するのか。

» 2019年12月04日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 HubSpot Japanは2019年12月2日、日本企業の営業組織に対して実施した意識・実態調査の結果を発表した。営業組織の現状と課題の把握が目的で、企業の経営者と役員515人、法人営業担当者515人、ビジネスシーンで商品やサービスの買い手となる経営者、役員、会社員310人から回答を得た(オンライン調査、調査期間:2019年10月18日〜24日)。

営業仕事の4分の1は無駄な時間? 営業担当者のホンネ

 今回の調査によると、営業担当者は働く時間の25.5%を「ムダ」と考えていることが明らかになった。HubSpot Japanでは、これによる経済損失を年間で約8300億円に上ると算出する。また、39.2%の企業で顧客情報の管理方法がずさんな状態になっているという。

 HubSpot Japanでは、「日本の営業組織は営業活動に多くのムダがあることを認識しているものの、顧客情報管理体制の整備や海外で普及が進んでいる非訪問型営業など、具体的な改善策の着手に踏み切れていない。

 売り手企業の営業生産性を向上させるためには、顧客への訪問以外の手段で『誠意』や『安心感』を提供する必要がある。今後は売り手と買い手の双方が満足できる営業手法の研究や、オンラインツールを活用したコミュニケーション、顧客情報や営業活動情報の管理など、インフラ整備の必要性と重要度がさらに増していく」としている。

 調査結果の詳細は以下の通り。

 まず、営業担当者に「働く時間のうちムダだと感じる時間の割合」を尋ねた。回答者全体の加重平均をとると、働く時間のうち25.5%がムダとの結果が出た。この値から、国税庁の「平成30年分民間給与実態統計調査」による給与所得者の平均給与「440.7万円」と、今回の調査で明らかになった営業担当者の1日当たりの平均残業時間「1.5時間」を使って、日本の法人営業のムダを金額に換算すると、約8300億円になる。

HubSpot Japanが試算した法人営業の無駄(出典:HubSpot Japan)

営業担当者が答えた「無駄な仕事ランキング」と、経営層「特に問題ない」のギャップ

 さらに営業に関する業務の中でムダだと感じるものを聞くと、回答が多いものから順に、「社内会議(33.9%)」「社内報告業務(32.4%)」「キーパーソンとの面会ができず再訪問(26.6%)」「日々の商談の移動時間(24.0%)」で、社内での情報共有や移動時間に関するものが上位を占めた。

 次に営業部門の課題について聞いたところ、現場よりも経営層の課題意識が低いことが分かった。具体的には、課題が「特にない」と回答した割合は、現場の営業担当者が16.5%だったのに対して、経営者・役員は30.9%と2倍近くもあった。

 営業部門に課題を感じていると回答した経営者や役員、営業担当者に具体的な課題を尋ねると、いずれも「収益性向上」が最も多かった。ただし、経営層と現場の営業担当者の間で課題意識に差があることも明らかになった。課題だと感じている割合の差が経営者や役員と営業担当者の間で大きい回答は、「働きがい・従業員満足度の向上」「長時間労働」「効率的な営業プロセスの構築」で、これら全てで営業の現場の方が、課題意識が高かった。

好感と商談は別? 営業成果と客先訪問の頻度に相関はナシ

 一方、ビジネスシーンで商品やサービスの買い手となる経営者や役員、会社員に対する調査では、まったく別の傾向が見えた。

 経営者や役員、会社員への調査では「営業担当者に自社を訪問してほしいとは思わない」と回答した割合は29.4%、訪問してほしいとの回答は70.7%だった。営業担当者の訪問を希望する人にその理由を聞くと、「顔を見ずの商談には誠意を感じない(35.0%)」や「営業担当者の顔を見ると安心感がある(30.1%)」との回答が上位を占め、HubSpot Japanでは明確な理由や合理性があるわけではなく、気持ちの面での理由が大きいと分析している。

 ただし、非訪問型営業を導入している企業と導入していない企業の商談成約率は、それぞれ39.6%と41.6%で大差なかった。HubSpotは、顧客を訪問することで誠意や安心感を与えたとしても、それが成約率を大きく押し上げているわけではないとしている。

 営業職は一般に外勤が多い。そこで、テレワークについても聞いた。週に1日以上テレワークをすると答えた営業担当者の割合は18.4%と、それほど高くなかった。ただし、インサイドセールス(非訪問型営業)を導入している企業に絞ると、その割合は39.7%だった。

 最初の質問では、営業担当者の多くが営業活動のための移動時間をムダと考えていることが分かった。電話や電子メール、ダイレクトメール、ビデオ会議などを用いる非訪問型営業ならば、営業活動のための移動時間を省ける。こうした非訪問型営業を導入している企業の割合は11.6%だった。創業年数別に見ると、創業20年以下の企業では16.2%なのに対して、21年以上では8.5%で、若い企業ほど導入率が高かった。

 インサイドセールスの導入有無は、その概念を経営者が知っているかどうかに影響されていることも分かった。経営者に「インサイドセールス」という言葉を知っているかどうかを尋ねると、「知っている」と回答した割合は35.6%。知っていると回答した経営者のうち、「導入している」または「1年以内に導入予定」と答えた人の割合は35.4%だった。

 なお、非訪問型営業の導入率は、欧米に比べて非常に低い。米国内の1151の企業と欧州の28カ国を対象とした同様の調査では、非訪問型営業の導入率は米国で47.2%、欧州で37.1%と、日本の約3〜4倍だった。

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