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» 2019年11月27日 08時00分 公開

中国・インド・ベトナムの実態とは? グローバル・ソーシングの現在地

国内のIT人材不足が叫ばれる中、企業はグローバル・ソーシングに取り組む必要に迫られている。日本におけるグローバル・ソーシングの実態について概観しながら、グローバル・ソーシングに求められる3つの勘所を紹介する。

[中尾晃政,ガートナー ジャパン]

アナリストプロフィール

中尾 晃政(Akimasa Nakao):ガートナー ジャパン株式会社 リサーチ&アドバイザリ部門 ソーシング&ITマネジメント プリンシパルアナリスト

ガートナー ジャパンにおいて、ソーシングとITサービス分野の分析を担当。主に国内のITサービス全般に関する動向の分析、提言を行っている。国内のソフトウェア・ベンダーおよび大手機械メーカーにてプレセールスを担当した後、大手調査会社のリサーチ部門を経て現職。英国シェフィールド大学大学院 経営学修士課程修了。


■記事内目次

  • 人材難の時代に求められるグローバル・ソーシング
  • 日本企業が取り組むグローバル・ソーシングの実態
  • ロケーション別にみるオフショアリングの状況
    • 経験豊富だがコスト上昇が懸念される「中国」
    • 日本語人材の獲得に向けた施策を注視したい「インド」
    • ビジネス経験不足を補うサポートが必要な「ベトナム」
  • 日本の地方都市が担うニアショアリング
  • 「グローバル・ソーシング」に求められる3つの勘所
    • コスト削減だけでは限界も、プラスアルファの価値を明確化したい
    • DXへの取り組みにはロケーション、ベンダー双方の要素を検討したい

人材難の時代に求められるグローバル・ソーシング

 多くの業界で人材難が課題となっており、ご多分に漏れず企業におけるIT人材も十分に足りている状況とは言いにくい。情報処理推進機構(IPA)が2019年に公開したユーザー企業のIT人材数の過不足状況に関する調査では、2020年までの短期的な見通しから2030年までの長期的な見通しを見ても、過不足なし/過剰気味と回答した企業は10%前後で、残りの90%ほどは十分にIT人材が足りていない状況にあると回答しているほどだ。また経済産業省が調査した2016年のIT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果でも、IT人材の需給ギャップは2030年には59万人ほどとなっており、IT人材の不足は今後ますます深刻なものとなっていくのは間違いない。

 そんな環境を打開するには、中途採用も含めて内製化に向けた取り組みを継続的に進めていくことが重要だが、限られた人材を有効に活用する意味でも、外部に委託するソーシングオプションをきちんと検討すべきだろう。そこで重要になるのが、「グローバル・ソーシング」という選択肢だ。

 グローバル・ソーシングとは、最適なタイミングに最適なスキルを最適なコストで調達することを目的に、国内外のリソースを組み合わせることと定義している。このグローバル・ソーシングでは「オフショアリング」「ニアショアリング」という言葉もあるが、オフショアリングは国外の地理的/文化的に離れた場所のリソースを活用するもので、ニアショアリングは地理的/文化的に近い場所のリソースを活用するものだ。日本におけるニアショアリングとは、首都圏など都市部以外の地域のリソースを活用する場合を指している。

日本企業が取り組むグローバル・ソーシングの実態

 日本企業におけるグローバル・ソーシングは、現在どんな状況にあるのだろうか。ここで、日本企業におけるオフショアリングの状況についてみてみたい。ガートナーにて調査した年商50憶円以上の日本企業によるオフショアリングの利用状況は、2016年から2018年の過去三年間では全体で20〜30%の間を推移している。年商1000憶円を超える企業で絞ってみると、その割合は30%を超えている状況にあり、大手企業ほどオフショアリングを積極的に利用しているのが実情だろう。

 委託する分野については、複数回答ながら「設計・開発・実装」などの割合が60%を超えて最も多く、「運用保守」でも55%を超える数字となっている。また「戦略・企画立案」といった上流のプロセスでオフショアリングを活用している企業も30%を超えてきている状況を考えると、上流からプロセス改善を図っていくデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)化を推進する動きに連動している部分があると考えられる。

ロケーション別にみるオフショアリングの状況

 今度はオフショアリングを委託している先のロケーションを見てみると、2018年に発注金額の大きかったロケーションは1位が中国(大連)、2位が中国(その他)、3位がインド、4位がベトナムと続く。一部を除いて、中国を中心に前年比で大きな伸びを示していることが調査から明らかになった。フィリピンやバングラデシュなどその他のアジアの国もオフショアリングに向けたチャレンジが積極的に行われているようだ。

 ここからは、日本企業がオフショアリング先として選んだロケーションの上位3カ国、中国・インド、ベトナムの状況と、言語の壁なく委託できるニアショアリングの現状ついて概観していく。

経験豊富だがコスト上昇が懸念される「中国」

 シェアが最も高い中国だが、ファンダメンタルな強みとしては、日本向けのビジネス経験が長く、日本語能力も高いことが大きな利点だ。ただし、人民元安によって人件費圧迫は一時的に緩和されているとはいえ、委託単価は上昇傾向にあり、短期的な活用ではコスト削減の効果が限定的とみている。また人材面では日本向けのエンジニアが成熟化しており、日本との懸け橋となるブリッジSEが不要なケースも。開発人材の獲得に関しては、上海など中国沿岸部で競争が激化していることから、無錫(むしゃく)など内陸部へシフトする傾向が続いている。日本企業向けのサービスという視点では、運用保守など下流工程だけでなく、戦略も含む上流工程へのストレッチが可能になっている。ただし、品質確保に向けた対策は必要だ。DXへの適用については、日本のビジネスをよく理解していることからも、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とIT基盤を組み合わせた最適化はもちろん、新しいビジネスモデルが次々と生まれる中国国内のプラクティスが活用できる可能性が考えられる。

日本語人材の獲得に向けた施策を注視したい「インド」

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