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» 2019年10月08日 08時00分 公開

データの地産地消で地域福祉に貢献する「すれ違いIoT通信」って何?

「あのお宅のご老人、最近外で見掛けないけど大丈夫かしら」などと心配してくれるご近所の代わりをIoTデバイスが務める地域の見守りシステムが誕生しそうだ。Wi-SUNとWi-Fiなどを組み合わせた「データの地産地消」により、高齢者見守りなどを低コストに適時実施できるようにするのが「すれ違いIoT通信」。一体どのような仕組みなのか。同技術を開発した国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)に取材した。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

目次


すれ違いIoT通信とは?

 携帯電話網(4G、5G)やインターネットが使えない地域でも、家屋に設置された通信機器と、地域を巡回する車両などに搭載した通信機器との間、あるいは車両間で無線による情報通信を実現するのが「すれ違いIoT通信」だ。

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)ソーシャルICTシステム研究室(室長:荘司洋三)は、特に地域で発生する消費期限の短いデータは、クラウドやインターネットを介さずに地域の課題解決に意欲のある地域住民やコミュニティー間で迅速に共有、活用することが、地域の課題解決に有効だとし、「データの地産地消」をコンセプトとした技術開発を以前より行ってきた。そのコンセプトに基づいて開発された「すれ違いIoT無線ルーター」を使った社会福祉サービスの実証実験が、2019年10月から約3カ月間実施される予定だ。

黒部市の「くろべネット事業」の一環として地域見守りサービスの実証へ

 実証実験は、NICT、社会福祉法人黒部市社会福祉協議会、日新システムズの3社共同で実施される。実証の目的は、地域在住の高齢者の見守りと情報配布に「すれ違いIoT通信」などの情報通信技術が効果的に活用できるかどうかの検証。これが「すれ違いIoT通信」の1つの典型的なユースケースとなる。

(1)玄関ドアの開閉回数から異常を検知

 社会的孤立や体調悪化などの住民生活の異変やその兆候を外部から発見するのは難しく、多くは福祉組織の訪問支援活動に頼らなければならない。しかし日毎に、地域全域の見守り対象家庭を訪ねることは負担が大きい。そこで、玄関ドアの開閉回数に注目し、あまりに開閉回数が少ない家庭には何かの異変が起きていると推定して、対象を絞って訪問支援することが考えられた。開閉回数は加速度センサーで感知でき、簡単な処理機能を備えたセンサーデバイス内蔵の通信モジュールから「正常」あるいは「要注意」を示す信号を無線で送ればよい。

 一般的には無線通信に携帯電話網やLPWA(Low Power Wide Area)を使い、センサーデータは基地局を介してクラウドに送って処理し、福祉組織などに通報するという流れが考えられる。しかし、今回はLPWAを採用しなかった。それはなぜか。

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