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経費精算システムの利用状況(2019年)/後編

経費精算システムと聞いて「こんなものかな」と満足する人は6割以上。それなのに、アンケートでは「さては精算を断念させるつもりか」と思いたくなるような経費精算の仕組みへの不満が聞こえてきた。

» 2019年08月29日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2019年7月20日〜8月1日にわたり、「経費精算システムの利用状況」に関する調査を実施した。全回答者数165人の内訳は、情報システム部門が37.6%、製造・生産部門が18.8%、営業・販売・営業企画部門が11.5%、経営者・経営企画部門が9.7%などだった。

 今回は「経費精算システムの満足度」を聞くとともに「経費精算業務に課題・不満を感じている理由」とそれに対する「改善要望」などを調査した。調査では利用者の満足度は高いものの、不満は特定の問題に集中したことが明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

「満足」63.2%の一方で「不満」はある点に集中

 前編では企業で行われている経費精算業務の実態と、それらを効率的に実行するためのシステムが約6割の企業で既に導入済みであることなどを紹介した。後編ではシステム化が進む経費精算業務に対して現場や管理者が抱く不満・課題から、今後の改善計画までを調査した。

 始めに利用している経費精算システムに対する「満足度」を聞いた結果「とても満足」が10.4%、「まあ満足」が52.8%、「やや不満」が28.3%、「とても不満」が8.5%となり、まとめると全体で「満足」が63.2%、「不満」が36.8%となった(図1)。

図1  図1 経費精算システムの満足度

 「満足」と回答した方の理由を聞いてみると「手当など役職や場所で自動計算されるなど利便性がいい」「独自開発されたソフトを利用しているが、会計を知らないものでもある程度分かりやすく操作できるため」といった操作面や使い勝手の良さを挙げる声や、「モバイル端末を使用して任意のタイミングでシステムに入力できるので、わざわざ帰社する必要がない」「おおむね会社の規模や業務に合っている」など自社の働き方やワークフローに即したシステムが導入、運用されている状況を評価する声が聞かれた。

 一方「不満」とした回答者からは、特定の問題を指摘する声が上がった。

入力の無駄、自動化できない苛立ち、フローのアナログさ

 不満とした回答者に理由を尋ねると、「入力の自動化ができていない。同じ内容を何度も入力する」「決裁経路を毎回設定する必要がある」といった操作性やワークフローの面で使い勝手の悪さを挙げる声が目立った。また「電子フローでなく紙のフローが残っている。また権限移譲されておらず上長不在だと返金がされない」「まだ全社に展開できておらず、システムで処理できる者と紙で申請する者が混在している」など、経費精算システムとフローが整備されている部門とそうでない部門が社内で混在していたり、ワークフローが働き方の実情に即していないことなどが理由で効率化が図れていない点を挙げる方も少なくなかった。

社内からしか使えない、申請書をが消えたらおしまい

 前項では経費精算システムへの満足度を取り上げたが、そもそも自社で行われている経費精算業務全般について課題や不満はないのだろうか。調査したところ「現在の経費精算業務に課題・不満がある」割合が51.5%と「不満がない」をわずかな差で上回る結果となった。

 そこで理由を詳しく聞いてみたところ「自社で導入している経費精算システムが使いづらい」49.4%、「社内からでないと、経費申請処理ができない」35.3%、「申請された経費を確認する作業が面倒」29.4%、「領収書を紛失・保管し忘れた際に経費が登録できない」28.2%、「紙で回覧する際、紛失などが発生する」21.2%などが挙げられた(図2)。「申請された経費を確認する作業が面倒」など一部申請された経費を処理するバックオフィス側の意見も見られたが、全体で3位にランクインしていることを鑑みると彼らにとってよほど大きな負担となっていることは間違いない。1位や2位に挙げられた項目は、主に利用している経費精算システムの使い勝手や運用ルールに対してだと予測できるが、特に社外申請ができないことへの非効率さを挙げる声はシステムへの不満として多く見られた。

 一方これらの課題は電子帳簿保存法改正によってここ数年で大きく規制緩和されてきているのも事実だ。特に領収書や契約書、見積書などの紙データをスキャンし電子保存することが認められるようになってからは、バックオフィスを中心とした経費処理担当者にとって紙文書の保管や管理における課題は大きく軽減されつつある。また利用者にとっても領収書をスマートフォンなどで撮影して提出することが可能になったことで使い勝手は向上してもおかしくない。

 こういった背景がありながらも不満に上がる現状の問題は昨今の法令改正に対してシステムや業務フロー改善といった対応が追い付いていないことにあるのだろう。当然予算の都合上システム改修の優先順位はあれど、業務効率の改善や働き方の多様化を背景に企業側は早期に対応を検討していく必要があるだろう。

図2  図2 経費精算業務に課題・不満を感じている理由

4つの改善要望が浮き彫りに 皆が考える経費精算「理想のカタチ」

 最後に全体に対し自社の経費精算フローやシステムに対する改善要望をフリーコメントで聞いたところ、4つの要望に大別できた。

 1つ目は「操作に機敏性があれば良い」「サクサク動く経費精算システムがいい」「モバイル対応くらいできないと社内での申請書作成に時間がかかりすぎる」などの声に見られる経費精算システムの操作性や使い勝手の改善を望む声だ。全体の約6割で導入されており使用頻度も高いシステムだからこそ、効率化を要望する声も多いのだろう。

 2つ目はスムーズな承認フローの整備だ。「承認を電子化したいが領収書など現物添付が必須のため電子化が実現していない」「自社のワークフローの一機能として連携できると良い」など他システムと連携したり法令改正に対応した申請フローを整備することによって、申請から承認にかかる工数を軽減してほしいといった要望が挙げられていた。

 これらシステムや業務フロー改善への要望に付随して3つ目は、経費申請書類の紙運用についての改善要望だ。「紙書類を全廃したい」「紙に印刷するコストもばかにならないため、ペーバーレス化を望む」といった意見が多く見られた。そして最後4つ目は「システムがIEでしか動かない」など利用環境が特定のブラウザに依存する点を不満とする声で、レガシーなシステムを運用し続けているとみられる企業を中心にいくつか声が挙がっていた。

 他方、Webブラウザ経由で利用するクラウド型サービスでは海外製のものなどで文字化けするなど、日本語対応の問題が生じているケースもあるようで、これらの点はシステム導入や改修のタイミングで注意が必要な項目となろう。

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