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5G、約7割は自分が何を知らないかも分からない――日本の経営者の悲しい実態

アクセンチュアは世界の企業経営層や技術担当幹部など1828人を対象とした第5世代移動通信システムに関する調査結果を発表した。日本では約7割の経営層が5Gに関して、「何を知らないかについても分からない」と回答したことも分かった。

» 2019年08月07日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 アクセンチュアは2019年7月25日、世界の企業経営層や技術担当幹部など1828人を対象とした「第5世代移動通信システム」(5G)に関する調査結果を発表した(対象期間:2018年12月〜1月)。同社によると、「5Gについて何を知らないかについても分からない」と回答した経営層の割合はグローバルで60%だったのに対して、日本では68%と10カ国の中で最も高い水準を占めた。さらに日本を含む経営層の多くが「5G関連技術が今後、競争上の重要な意味を持つようになる」との認識を示すなど、5Gに対して漠然とした期待を抱いていることが分かった。

 今回の調査では、5Gに対する理解度や5Gの導入に向けて各通信社が担う役割、5G導入の障壁や期待するメリットなどについて調べた。

調査の概要

 まず5Gに対する理解度は、IT部門の意思決定者が最も高く、従業員が最も低かった。具体的には、5Gに関する文章の中から正しいものを選択する問題で理解度を測ったところ、平均的な理解度の割合はIT部門の意思決定者が33%、経営部門の意思決定者が30%、従業員が18%だった。

 5Gは第4世代移動通信システム(4G)よりも通信速度が高いとの見方は既に浸透しており、IT部門の意思決定者の80%、経営部門の意思決定者の73%、従業員の55%が5Gのデータ送信はリアルタイムだと理解している。

 ただし、5Gを革新的技術と考えている割合はまだ少なく、「リアルタイムなデータ送信が今後5年間で自社の業界に革命をもたらす」と答えた割合は全体の43%であり、5Gが浸透する範囲の広さを革新的だと考える割合は41%だった。さらに、5Gのポテンシャルに対する理解も業界によってさまざまで、5Gが自社に変革をもたらすと考える企業の割合は、デジタル業界が49%だったのに対して、ヘルスケア業界や公共部門では40%にとどまった。

 5G導入に向けて通信事業者の役割について聞いたところ、経営層の72%が「5Gがもたらす将来の可能性と有効な実用例を見極めるには支援が必要」と回答した。さらに経営層の40%が「5Gの導入プロセスでは通信会社との提携を検討する」と回答。しかし、経営層の60%が「自社の業界が直面している課題を通信事業者が十分に把握していない」と回答しており、支援や提携を求める一方でその対応に不満を抱えている企業があることもうかがえた。

 5G導入に向けた障壁として多く挙げられた項目は、「先行投資」(回答者の36%)、「セキュリティ」(同32%)、「従業員の理解」(同30%)だった。特に、経営部門の意思決定者の33%は、「セキュリティへの不安から導入にためらいがある」と回答した。一方で、5G導入のメリットに期待する回答も少ないわけではなく、「5Gの活用によって事業のセキュリティが向上する」と回答した割合は79%に上った。さらに「5Gは一部のスマートフォンユーザーだけではなく、社会全体にメリットをもたらす」と、5G導入の利点を挙げた割合も75%あった。

5Gを導入する際の障壁

 アクセンチュアの通信・メディア・ハイテク本部で欧州の通信・メディア部門を統括するアンダーシュ・リンドブラッド(Anders Lindblad)氏は、「それぞれの理解度にはばらつきがあるにもかかわらず、企業の経営層は5Gがもたらし得る価値に対して大きな期待を抱いている。5Gを巡っては現時点ではリスクや不確実性が懸念されているが、企業は顧客ニーズを理解し、導入への障壁を克服し、パートナー企業との連携を促進できれば、5Gがもたらす潜在価値を引き出せる」と述べている。

 なお今回の調査は、日本、米国、英国、スペイン、ドイツ、フランス、イタリア、シンガポール、アラブ首長国連邦、オーストラリアの10カ国で実施した。

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