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» 2019年07月19日 08時00分 公開

RPA+OCRで残業はどのくらい削減できる? パナソニック ソリューションテクノロジーの事例に学ぶ (1/2)

世に先んじてRPAとOCRの連携に取り組み、業務効率化の効果を出したパナソニック ソリューションテクノロジー。その舞台裏には何があったのか。

[吉村哲樹,オフィスティーワイ]

 RPA(Robotic Process Automation)の取り組みが多くの企業で進み、今後の展望としてOCR(光学文字認識)との連携をしたいというケースも増えてきた。そうした中、いち早くプロジェクトの当初からRPAとOCRの連携に取り組み、成果を出した企業がある。パナソニックグループ内でICT事業を担う中核グループ企業として、幅広いICTソリューションを展開するパナソニック ソリューションテクノロジーだ。

 同社は、なぜRPAの効果を出せたのか。その背景には、情報システム部門を巻き込んだ、セキュリティやガバナンスへの熱心な取り組みや、社内向けのRPA説明会をはじめとする地道な活動などがあった。さらに、OCRを連携させることでRPAの業務自動化の効果をさらに引き出している。RPA+OCRを社内に展開するための土台を着実に作り上げているパナソニック ソリューションテクノロジーの取り組みに学ぶ。

世に先んじてRPA+OCRの取り組みを推進

 パナソニック ソリューションテクノロジーは2017年末、かねてより検討していたRPAの具体的な導入プロジェクトを開始した。社内でのRPA活用の検討を始めるきっかけとなったのは、社外向けRPAソリューションの検討を行っていた事業部門から、間接部門に対する「試験的にRPAを導入してみないか」との打診だったと同社 調達課 課長 中野浩子氏は振り返る。

パナソニック ソリューションテクノロジー 中野浩子氏

 「事業部門では当時、『ROBOWARE』というツールを使ってRPAソリューションの評価・検討を行っていました。そこで、社内でもこれを業務効率化に役立てられないかという相談が寄せられました。私が当時所属していたセールスサポート部では、取引先企業から送られてくる注文書の処理業務を行っていたのですが、これをOCRとRPAの組み合わせで自動処理することで、業務を大幅に効率化できるのではないかと考えました」(中野氏)

 従来、これらの注文書は、特定のメールアドレス宛てにメールに添付されたPDFファイルの形で届き、担当者が内容を1通1通チェックして営業担当に転送していた。受け取った営業担当者は受注システムに注文書の内容を登録し、さらに内容を確認・精査した上で最終的に受注伝票を完成させる。この一連の業務にOCRとRPAを導入することで作業を自動化・省力化し、工数を大幅に削減できるのではないかと見込んだのだ。

 同社は数多くの企業との取引があるが、ある特定のグループ企業との取引が全体の2、3割を占めている。しかもその会社から送られてくる注文書のフォーマットは全て統一されており、OCRによる自動読み取り処理と極めて親和性が高かった。さらにOCRに関しては、同社はもともと自社製のOCR製品を開発・販売しており、豊富なノウハウを有している。

 そこで、RPAがメールに添付された注文書のPDFファイルをダウンロードしてOCRを起動し、CSVデータに出力されたOCRの読み取り結果を、さらにRPAが受注システムに自動入力するという仕組みを構築した。簡易プロトタイプでのテストでは、確かな手応えも感じられたため、本格的な導入検討に至ったという。

情報システム部門の介入で、ガバナンスとセキュリティを確保

 社内への本格導入を検討する過程で、採用するRPA製品はそれまで評価していたROBOWAREから「UiPath」に変更した。背景には、RPAと自社システムとの相性の問題があったと、事業部門で導入作業を担当した同社 オフィスソリューション一部 事業推進課 二係 小倉侑也氏は説明する。

パナソニック ソリューションテクノロジー 小倉侑也氏

 「RPAと連携する弊社の基幹システムの作りが少し特殊で、画像認識技術を使って操作の対象を把握するRPA製品との相性が悪く、システムの画面の構造を正しく認識できないといった問題が発生しました。その点UiPathなら、HTMLの構造も解析して画面の中の操作対象を正確に認識できるため、弊社の基幹システムと組み合わせても安定して動作しました」(小倉氏)

 またUiPathは、ユーザー動作のレコーディングや、GUIツール上でのドラッグ&ドロップ操作だけで簡単にロボットを開発できる点が魅力的だったと小倉氏。ゆくゆくは、事業部門ではなく運用部門でロボットの開発やメンテナンスを直接行えるようにしたいと考えていたため、ノンコーディングで開発ができる点が同社のニーズと合致していた。

 しかし、実際にロボットの設計・開発を行うに当たっては、「基幹システムを直接RPAで操作してはいけない」というパナソニックグループのルールが壁になったという。

 そこで中野氏らRPAの運用部門の担当者と、小倉氏ら事業部門の担当者に加え、情報システム部門の責任者もプロジェクトに参画して、RPAを基幹システムと連携する際のガバナンスとセキュリティの確保に注力した。

 「万が一、RPAが誤動作して基幹システムに過大な負荷を与えたり不正な情報を入力したりしてしまうと、グループ全体の業務に大きな影響を与えてしまいます。これを防ぐために情報システム部門がセキュリティやガバナンス面のチェックを厳格に行うということで、RPAとの連携を認めてもらえました。今回RPAの連携対象となった受注システムは、弊社内に閉じたシステムだったことも幸いしました」(中野氏)

 具体的には、情報システム部門の担当者を交えて要件定義やテスト項目などのレビューを慎重に行うことで、基幹システムを安定的に稼働できるようにした。また、もしロボットに異常が生じたり停止してしまったりした場合は、人手によるリカバリープロセスを走らせられるよう、人が待機していない夜間にはRPAは稼働させないというルールも設けた。

 さらにセキュリティ対策に関しては、ロボットの不正利用や改ざんの防止に注力したという。

 「RPAが操作をするのは、お金を扱う基幹システムなので、ロボットのシナリオが改ざんされて、金額が不正に操作されるようなことがあっては大きな問題に発展します。こうしたリスクを考慮して、シナリオの変更は運用部門では行わず、必ず事業部門に申請をした上で、事業部門側で作業を行う運用としました」(中野氏)

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