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「USB 3.2」発表の裏で「USB4」が登場、規格の整理が追い付かない:505th Lap

PCに周辺機器を接続する手間を大きく軽減させた規格といえば「USB」だろう。正式名称は「Universal Serial Bus」だが誰も気にしていない。2019年2月に最新規格の「USB 3.2」の詳細が明らかになったと思ったら「USB4」も出てきた。

» 2019年03月15日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 USBは1996年の登場からバージョンアップを重ね、USB 2.0、USB 3.0とどんどんデータ転送速度を高速化してきた。2000年に策定されたUSB 2.0規格からは給電規格も整い、電力供給のためにUSBケーブルとACアダプターを使う人も多いだろう。

 2008年のUSB 3.0規格が策定されてから10年が過ぎた。追加で「USB 3.1 Gen 1」やら「USB 3.1 Gen 2」やら「USB Type-C」などが登場し、やや複雑な規格になってしまった感がある。そこにさらに「USB 3.2」が正式発表されたのだからもう大変だ。おや、USB 3.2じゃなくて「USB4登場」の話だったのでは? 少し落ち着いてUSBの規格を整理してみよう。

 2019年3月4日、「USB4が2019年内に策定されますよ」と発表された。その直前、2月25〜28日にバルセロナで開催されたモバイル系の国際見本市「MWC Barcelona 2019」で、2017年に策定されていたものの具体的な製品が登場していなかった「USB 3.2」についての詳細な発表があったばかりだ。

 発表したのはUSBの標準化団体「USB-IF(USB Implementers Forum)」だ。「2019年夏にもUSB 3.2規格対応チップが発売されて、年内に製品が登場する」という。しかもUSB 3.2は、USB 3.1 Gen 2の2倍、20Gbpsの最大データ転送速度を実現する。「これは速い! で、USB 3.1 Gen 2て何?」

 USB 3.0は、当初5Gbpsのデータ転送速度で登場した。速度480Mbpsで「High Speed USB」とされたUSB 2.0より圧倒的に高速だったため「SuperSpeed USB」の別名も与えられた。2013年に登場した後継のUSB 3.1は速度が2倍の10Gbpsになる予定だったが、USB 3.0と完全互換で同速の5Gbpsの速度までしか出ない規格も併存することになった。

 互換性があって同速なので「USB 3.0と同じじゃないか」という話となり、従来USB 3.0と呼ばれてきた規格がそのまま「USB 3.1 Gen 1」とスライドして命名され、速度が倍の規格が「USB 3.1 Gen 2」と呼ばれることとなった。

 つまり、USB 3.0はUSB 3.1 Gen 1とイコールであり、高速なUSB 3.1がUSB 3.1 Gen 2であり、単純にUSB 3.1と呼ばれる規格は本来存在しないというのがUSB 3.1を取り巻く事情の真実だ。そしてUSB 3.0の別名が「SuperSpeed USB」だったように、USB 3.1 Gen 2には「SuperSpeed USB 10Gbps」という別名が与えられた。

 複雑すぎる。USB 3.1規格の分かりにくさは専門家やメーカーも批判するほどだった。年内に登場すると発表されたUSB 3.2の別名は「SuperSpeed USB 20Gbps」だそうだ。「まるで成長していない」ってやつだ。

 さてUSB4だ。詳細な仕様は2019年末に発表されるが、「Thunderbolt 3」と呼ばれていた規格がベースとなる。インテルがThunderbolt 3のライセンスを無償公開し、USB-IFがこの規格を利用してUSB4とするとしたからだ。通信速度は最低でもUSB 3.2の2倍、40Gbpsとなる見込みだ。

 そもそもThunderbolt 3は、USB Type-Cとコネクタの形状が同じで混乱を生んだ。単にコネクタが同じだというだけで完全な互換性はない。だが、幾らかの互換性があったので汎用(はんよう)ポートのようなものを備えるデバイスが少なからず存在する。この結果、かなりややこしい状況になっているが、USB4の登場で解決されることだろう。

 「そりゃいい話じゃないか」と思いきやUSB4の登場で以前のUSB規格がカオスさを増すことになる。お気付きかもしれないが、USB4から「USB」と「バージョン」の間にあった半角スペースがなくなる。そしてUSB 3.0以降の規格の名称が変更されることになる。

 USB 3.0とUSB 3.1 Gen 1はUSB 3.2 Gen 1になり、USB 3.1 Gen 2はUSB 3.2 Gen 2になり、USB 3.2はUSB 3.2 Gen 2x2になり、USB 3.0と3.1はなかったことにされる。あまりにも分かりにくいので表にまとめてみた。実はまとめている私も自信がない。

USB

上司X

上司X: USB4の規格が年内に発表されるっていうけど、その前にUSB 3.2が正式展開することが発表されて複雑ですよっていう話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: 何とも分かりやすいような、そうでもないような……。


上司X

上司X: USB4の登場でUSB 3.2の規格が整理されて、速度ごとのキッチリした区分ができそうだ。


ブラックピット

ブラックピット: でもコネクタもいっぱいありますよね。


上司X

上司X: PC側の平べったい四角いコネクタが「Type-A」。外付けHDDとかプリンタに使われている「Type-B」。給電機能がないからアダプター付きのデバイスに採用されていたが、最近は減ったかな。最新で角丸のコネクタが「Type-C」。裏表がないし、本体と周辺機器で共通だから使いやすい。


ブラックピット

ブラックピット: Androidスマホとかの小さいコネクタは「micro USB」ってやつですね?


上司X

上司X: 「micro USB Type-B」だな。かつてデジタルカメラなどに使われていた「Mini USB Type-B」の発展形だ。今はType-Aとmicro USB、Type-Cが主力だな。


ブラックピット

ブラックピット: これまで気軽に使ってきたUSBも整理してみるとコネクタにしても仕様にしてもいろいろあるんだなあという感じです。


上司X

上司X: キミぐらいテキトーに使っていてもユーザーにとってデメリットよりメリットの多かった規格がUSBだというわけだ。USB4の登場で、さらに盤石の規格になると期待したいところだよ。


川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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