特集
» 2019年02月27日 08時00分 公開

裾野拡大が急務となるAR/VRのビジネス利用動向 (1/3)

 VR(Virtual Reality:仮想現実)やAR(Augmented Reality:拡張現実)の技術が広がりつつあるが、実際の法人活用はどんな状況かのか。ビジネス領域におけるAR/VR動向を見ていく。

[菅原 啓,IDC Japan]

 仮想空間をデジタル上に再現するVR(Virtual Reality:仮想現実)や現実世界にデジタル情報を付与することで現実を拡張するAR(Augmented Reality:拡張現実)などの技術がさまざまな場面で利用されている。このAR/VRに欠かせない機器やソリューションの出荷状況について紹介しながら、法人における導入状況や利用を妨げる阻害要因など、調査結果から明らかになったビジネス領域におけるAR/VR動向について見ていきたい。

アナリストプロフィール

菅原 啓(Akira Sugawara):IDC Japan PC、携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト

IDC JapanにてAR/VR、携帯電話およびウェアラブルデバイス(スマートウォッチなど)を担当。同社入社以前も含め、15年以上に渡りIT市場、特にコンシューマー向けデジタル製品市場の分析やコンサルティングを行っている。個人でも5台以上のAR/VRヘッドセットを所有。


 最初に、AR/VR市場を語るうえで重要なインタフェースとなるヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)について、その出荷状況から見ていこう。

AR/VRにおけるHMD台数予測

 AR/VRを語るうえで欠かせないのが、仮想技術を体感するためのデバイスとなるHMD(ヘッドマウントディスプレイの頭文字。VRヘッドセット、VRゴーグルなどとも表現される)だ。主な種類としては、Galaxy Gear VRに代表されるスマートフォンをディスプレイとして使用する「スクリーンレス型」や、HTC VIVEやPlayStation VRなどPCやゲームと接続する「ケーブル型」、Microsoft HoloLensやOculus Goなど単体で動作する「スタンドアロン型」がある。

 これらHMDは、ここ数年間はゲームのインタフェースとして拡大してきた経緯があり、法人市場に比べてコンシューマー市場のほうが大きいのが特徴だ。このAR/VR HMDの世界市場を見ると、VRでは2022年にはおよそ3200万台の市場を形成すると予測している。ただし、従来スマートフォンを購入すると無償でバンドルされていたHMDの提供を取りやめる動きもあるため、直近ではやや停滞気味となるだろう。それでも、2019年以降には再び成長フェーズに入ってくると見ている。ARについては、2020年ごろから離陸をはじめ、2022年には2200万台の市場を形成すると考えている。

AR/VRヘッドセット世界市場予測 図1 AR/VRヘッドセット世界市場予測(出典:IDC Japan)

 日本では、コンシューマー市場におけるVRが堅調で一定の成長が見込まれるが、ビジネス利用のARについては難しい面も。スマートフォンによるAR実装で十分満足しているケースが多く、10万円前後をかけてHMDを購入するまでには至っていないのが現状だ。

海外と日本でトレンドが大きく異なるVR HMD市場

 直近でのVR HMDに関する出荷状況を見ると、グローバル市場ではOculus Goをはじめとしたスタンドアロン型が伸びている状況にあるが、PlayStation VRが強い日本市場ではケーブル型がその中心にある。また日本では、2018年に入ってからvTuberが大きなムーブメントとなったこともあり、ケーブル型のHTC VIVEなどが大きく躍進している。

 今後についても、グローバル市場ではスタンドアロン型がコンシューマー領域で成長し、日本はケーブル型が主導する状況が続くと予想している。ただし、周辺機器と接続せずに利用できるスタンドアロン型のほうが使い勝手もよく、いずれはスタンドアロン型が日本でも広がってくるはずだ。ただし、日本でのシェア拡大を伸ばすためには、家電量販店での取り扱いが大きな鍵となる。VRは実際に体験しないとその良さが分からない面も多く、その機会を創出するためにも実店舗での展示が可能な家電量販店のチャネルが重要になってくるだろう。

規模の小さなAR HMD市場だが期待できる動きも多い

 対してAR HMDについては、VR HMDに比べて市場規模は小さく、グローバルで200万台を超えるVRに対して、4〜5万台の規模にとどまっているのが実態だ。ただし、2019年は日本のベンダーでもARグラスを提供するところが増えてくることが予想されることから、スタンドアロン型を中心に台数の伸びが期待できる。また、2019年2月に開催されるMobile World Congressにおいても、Microsoft HoloLensの第2世代が発表されることになり、値段など気掛かりな面はあるものの、市場的には大きな動きとなってくると考えられる。さらに、ケーブル型ではセイコーエプソンが2017年に発売したMOVERIOの2桁シリーズ(BT-30Eなど)のような製品が日本でも数多く出てくることが予想されるため、比較的安価なもの、プログラミングしやすいものがAR HMDとして登場することで市場が安定的に成長することが期待されている。

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