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RPAは使いものにならない……? 導入企業の訴えまとめ【実態調査】

2017年ごろから導入企業が増えつつあるRPAだが、導入企業からは具体的な課題も上がっている。RPA導入の最新事情と、企業が抱える課題について聞いた。

» 2019年02月08日 10時00分 公開
[溝田萌里キーマンズネット]
7つのITトピックス

 2019年に注目すべきITトレンドは何だろうか。キーマンズネット編集部では「セキュリティ対策」「SaaS」「RPA」「改元対策」「EoS対策」「働き方改革」「AI」の7つのトピックスを抽出し、「IT活用状況調査」(有効回答数1541件、実施期間:2018年11月26日〜12月21日)を行った。企業における2019年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。

 第2回のテーマは「RPA(Robotic Process Automation)」だ。

調査サマリー

  • 全体の8割以上がRPAを認知している
  • RPAを知っている企業の3割以上がRPAを実施、大企業から導入が進む
  • RPAを利用している企業の約8割は、業務削減率が30%以下にとどまる
  • 導入企業からは「ロボットが止まる」といった課題も聞かれた

全体の8割以上がRPAを認知理解

 生産性向上や働き方改革の取り組みを背景に2017年ごろから導入企業が増えつつあるRPA。現在、一般企業にはどのように認知されているのだろうか。

 まずは、RPAについての認知および理解度を聞いた。「利用したことがある」と答えた企業は11.2%、「具体的に何をするものかを知っている」と回答した企業は47.0%と最も多く、続いて「名前を聞いたことがある」は23.5%、「知らない」は18.4%だった。まとめると、全体の約8割がRPAを認知理解していることになる。

 PRAが広く認知されていることが明らかになったが、企業はRPAに何を期待しているのか。RPAについて「知らない」と答えた企業以外に質問したところ、「ワークフローの自動実行」40.9%、「集計レポート制作」40.6%、「定型書類のチェック」32.6%、「複数システム間のデータ入出力」28.5%と続く結果になった。定型業務や繰り返し作業を効率化したいと考える企業が少なくないと分かる(図1)。

図1 RPAで自動化したい業務

 情報システム部門で集計した場合は、1位〜5位の全ての回答順が変わり、1位に「集計レポート制作」、2位に「ワークフローの自動実行」、3位に「複数システム間のデータ入出力」、4位に「社内システム向けの巡回、定型データ収集」が加わり、5位に「定型メール送信」が続いた。

 その他、少数派ではあるが「サーバ管理」「OSやミドルウェアのインストール・設定」「ハードウェアの設定」といった、インフラの管理に関わる業務を自動化したいと答える声もあった。

RPAツールに期待するものはやっぱり……?

 RPAについて「知らない」と答えた回答者以外を対象に、RPAツールに期待するものについて聞いた。

 その結果「コストが安い」が61.0%、「初心者でも扱いやすい」が54.9%と上位に上がり、「UIが日本語」43.6%、「ベンダーのサポートが手厚い」39.0%、「GUI操作でシナリオを作成できる」36.7%と続いた(図2)。

図2 RPAツールに期待するもの

 コストの安さはどの技術やツールでも上位に上がるニーズだが、RPAのプロジェクトでは、現場が主導となってRPAを開発するケースも考えられるため、特にツールの扱いやすさ、分かりやすさにも注目が集まっていると考えられる。

 また、経営企画部門で集計した場合、1位から3位は変わらず、4位と5位は入れ替わる程度だったが、「セキュリティ機能がしっかりしている」という回答が8位(20.7%)から6位(27.4%)に浮上しており、セキュリティ機能に対する関心がより高いことが分かった。

 ちなみに、回答グループを経営企画部門とそれ以外(経営・経営企画、情報システム部門、管理部門、事業部門)とで業務領域ごとに分けて比較したが、3位と4位および5位と6位の順番が少し入れ替わる程度で大きな差は現れなかった。

RPAを知っている企業の3割以上がRPAを実施

 続いてRPAについて「知らない」と答えた回答者を除き、RPAの導入状況について聞いた。

 その結果、「導入しておらず、今後も導入する計画はない」と答えた企業が最も多く、31.3%だった。続いて、「既に導入している」が18.7%、「導入予定だが、具体的な計画はこれから」が18.1%、「導入予定で、情報収集中」が16.1%、「導入を前提にトライアルで使用中」が15.8%と続いた。

 まとめると、少なくともRPAを知っている企業の3割以上は、トライアルを含めてRPAを実施しており、同様に3割以上が導入を予定していると分かる(図3)。

 従業員数別の回答では、従業員の多い企業ほどRPAを「既に導入している」と答えた割合が増えた。具体的には、5001人以上の企業は「既に利用している」と答えた割合が33.7%と最も多く、その後は順当に3001人〜5000人の企業が32.9%、1001人〜3000人が25.9%、501人〜1000人が21.6%、101人〜500人が11.4%、51人〜100人が7.8%、11人〜50人が2.1%、10人以下が0%と続いた(図3)。

 一方、「トライアルで使用中」と答えた割合は、1001人〜3000人以上の企業が25.9%と最も多く、5001人以上の企業(21.5%)、3001人〜5000人以上の企業(20.5%)が続いた。規模別によるボリュームゾーンの違いを見れば、従業員が多い企業からトライアルを終えて、順次本格導入に進んでいると考察できる(図3)。

図3 RPAの導入状況

RPAを利用している企業の約8割が30%以下の業務削減効果

 RPAを導入した企業では実際に成果を上げているのだろうか。RPAについて「既に導入している」「導入を前提にトライアルで使用中」と答えた企業を対象に対象業務の削減効果を聞いたところ、「11〜20%」が最も多く27.4%、2位が「0〜10%」で27%、3位が「21〜30%」で24.0%と続いた(図4)。

 世の中では、大きな効果を挙げた事例が話題になる。しかし、アンケート結果ではRPAを利用している企業の約8割が30%以下の業務削減効果にとどまっていた。

図4 RPAの導入効果

RPA活用の障壁は?

 従業員規模の大きい企業から順次導入が進み、効果も上がっているRPA。しかし、世の中では課題や失敗に関する声も聞かれる。RPAの利用企業では、トライアルや本格導入に際してどのような障壁があるのだろうか。

 まずは、RPAについて「既に導入している」「導入を前提にトライアルで使用中」と答えた企業を対象に「トライアル時にどのような障壁があった(ありそう)」か聞いた。

 1位は「導入成果の算出が難しい」で35.7%、2位は「事前準備が面倒(業務の棚卸しなど)」で34.3%、3位は「RPAロボットのスキルを持った人がいない」で32.0%、4位は「導入、開発費用」で27.4%、5位は「ツール選定が難しい」で23.7%という結果が続いた(図5)。

図5 RPAのトライアル時の障壁

 さらに「RPAを本格的に展開する際には、どのような障壁があった(ありそう)」かを聞いたところ、1位は「RPAロボットのスキルを持った人がいない」で34.3%、2位は「ロボットの運用が煩雑」で34.1%、3位は「期待したROIが出ない」で31.1%、4位は「ロボットの管理が煩雑」で30.6%、5位は「ロボットが停止する」で17.1%という結果になった(図6)。

図6 RPA本格導入時の障壁

実際のところ使いものにならない……? 読者から寄せられたRPAのリアル

 フリーコメントでも、RPAのトライアルや本格導入時の障壁を聞いた。特に意見の多かったロボット開発、運用に関するコメントの一部を紹介する。

開発

 RPAの開発は思った以上に時間や手間、スキルが必要だという意見が多かった。中には「意外と開発に時間がかかり、その割にやれることが予想よりも限定される」「期待した効果が得られなかった」「実際のところ使いものにならない」と理想と現実のギャップを述べる声もあった。

  • 業務のシナリオ化という事前準備が大変だ
  • 思っていたよりロボットの作成に手間が掛かる
  • RPAの開発にそれなりのスキルを要する
  • 対象システムの画面変更やアップデートの都度、ロボットの修正が必要である
  • WindowsのUpdate時の対応などが難しい
  • 自社で活用しているツールがIEにしか対応していない
  • ポップアップウィンドウへの対応が難しい
  • PCの型によって、ロボットの微調整が必要である
  • 既存システムとの連携が大変である
  • ロボット用のIDを作成する際、パッケージ製品のライセンス料、IDの体系などが分かりにくい
  • ロボットがうまく動かない

 RPAは、動作する実行基盤や操作する対象のアップデートといった変化の影響を受けやすい。コメントから、WindowsのUpdateや画面変更にも気を付ける必要があると分かる。

運用

 一方、運用面ではロボットの運用ルールの策定や企業の管理外にある「野良ロボット」への対策など、導入後のメンテナンス負荷に関するコメントが目立った。

  • IT部門とユーザー部門の役割分担が難しい
  • 現場部門がRPAを知らない
  • ロボットが業務の変更に追随できない
  • メンテナンスの負荷と自動化による負荷軽減のバランシングが難しい
  • 野良ロボットの対策と運用ルールの策定に苦労する
  • ロボットが放置される
  • 情報共有に苦心する
  • ユーザー教育が難しい
  • 仕事がなくなる、変わることへの不安がある

 導入後にロボットが停止し、ユーザーの利用率が落ちる(放置される)というケースはよく聞かれる。ロボットを作成して終わりではなく、その後のメンテナンスや活用のための組織体制、ルール作りが課題に挙がることも多い。コメントからもその実態がうかがえた。


 今回の調査では、RPAの認知度が上がり、従業員規模の多い企業から順次導入が進んでいると分かった。一方で、トライアルを含め導入企業からは、RPAに関する具体的な課題も寄せられた。

 RPAをトライアルで使用中または導入中の企業の12.7%は、「ツールを乗り換える予定がある」とも回答しており、理由を掘り下げると「ロボットが停止することが多々あり、業務に支障があるため」という意見も見られた。

 こうした課題は導入してはじめて分かるノウハウであり、先行企業では知見が蓄積しているとも分かる。RPAの導入企業は今後も増えると予想でき、その知見に加速度的な差が生まれると話す人もいる。RPAに興味がある企業、導入を検討している企業は、先行企業のノウハウを、自社プロジェクトの参考にしてほしい。

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