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休職者の穴を埋めるストレスその言動が社員をダメにする

残念ながらメンタルヘルス不調者が出てしまった職場。人事部門や産業医と相談しながら対応を進めますが、現場では抜けた1人の穴埋めが大きな課題となります。最終回は管理者の役割について考えてみましょう。

» 2019年01月10日 08時00分 公開
[村田佳子パナソニック ソリューションテクノロジー]

本コラムは2016年10月18日に掲載した「休職者の穴を埋めるストレス〜その言動が社員をダメにする」を再編集したものです。

 あなたの部下であるCさんがメンタルヘルス不調となり、休職することになりました。Cさんが担当していた仕事は、あなたを含め、今いるメンバーで補う必要があります。

 日頃から忙しく働くメンバーに、さらに負荷を掛けなければいけなくなりました。あなたはCさんが担当していた業務の役割分担を各メンバーに指示しましたが、重要なプロジェクトは部署で1番信頼のおける優秀でまじめなDさんにお願いしました。

 快く引き受けてくれたDさんはいつも通り要領よく対応し、不満1つ言わずに仕事をこなしていました。気に掛けた同僚が手伝うことを申し出ても、この仕事は自分が任されているからと1人で対応していました。

 あなたもDさんに負荷が掛かり大変だとは認識していましたが「優秀だから大丈夫だろう」と考えていたのです。しかし彼の負担もピークに達し、ストレスからの体調不良、遅刻や簡単なミスなどメンタルヘルス不調の前兆が表れてきました。

 Dさんがメンタルヘルス不調にならないためにできることは、一体何でしょうか?

「気合いで頑張ろう!」はダメ

 人は減るけれど仕事は増えるという矛盾に「気合いで頑張ろう!」は通用しません。業務をスリム化できないかという観点からの見直しが求められます。不要な手続きはないか、2時間の会議を1時間にできないか、そもそもその会議は必要か、出席すべきなのかなど、時間を有効に使うための見直しも必要です。

 職場異動などの環境変化がストレスの原因になると第2回でお話しましたが、同じ職場であっても仕事量が急激に増えたり、減ったりといった変化もストレスとなります。自身がモチベーションを高く感じ取り組んでいる業務はストレスになりにくいのですが、度を過ぎると心身が疲れ、興奮状態が続くことにより脳の疲れが蓄積されます。

 周囲にサポートするメンバーがいるだけでこのストレスは軽減されます。仕事量が急激に増える場合は体制を明確にして取り組むことが必要です。

 仕事量が急激に減る場合は、第3回で話したマズローの要求5段階説のレベル4に当たる社会から認められているという「自我の要求」、つまり存在価値の薄れへとつながり、モチベーション低下や、やる気の損失となります。

マズローの要求5段階説 マズローの要求5段階説

 創造性の少ない単調な作業をこなす場合も、モチベーションの維持は難しいものです。やり方を説明するだけではなく、作業の位置付けや実施する意味、価値を共有するようにしましょう。無駄な作業はないのです。無駄であればなくせばいいのです。

溜め込まずに小出しにする

 皆がいきいきとするためにも、自分がいきいきとしていることが大切です。常にストレスと向き合って仕事する中で自身がメンタルヘルス不調にならないために、ストレスマネジメントをしっかり行い、セルフケアを心掛けましょう。

 ポイントは「いつでもどこでも簡単にできるストレス発散方法をたくさん持ち、溜め込まず小出しにする」ことです。

 週末にテニスをする、冬場にスキーをするなどとても良いストレス発散方法ですが、その場、その時にならないとできないことだけでなく、ちょっとした時間で毎日できる方法を見つけましょう。以下の視点で考えるとたくさん見つかるはずです。

  • 五感を使う:ハーブティー、アロマなど普段仕事で使っていない五感を使う
  • 発散する:お笑い番組を見て笑う、友人と居酒屋で話すなど溜め込んでいるものを吐き出す
  • 非日常的:いつもと違う道から帰る、ゲームに没頭するなど非日常的な行動を取る
  • 創作活動:手を動かしてプラモデルやパズルを作り達成感を得る
  • 洞窟体験:ドライブ、1人カラオケなど誰にも邪魔されず、空間をコントロールする

 このような対策をとっていたにもかかわらず、万が一、寝付けない、食欲がない、ちょっとしたことでイライラしてしまうなど、メンタルヘルス不調の前兆が出てきた場合は、早めに専門医(健康管理室やEAP)と相談する時間を取りましょう。話すだけでも心が落ち着くものです。

 これまで4回にわたって、メンタルヘルス不調者への対策と職場づくりについてお話してきました。部下との何気ない会話や部下を観察することから、調子はどうか、不満を溜め込んでいないか、いつもと違った点はないかなど気に掛けるようにしましょう。

 第1回でもお話しましたが、メンタルヘルス不調者に気付くのは職場の上司、そして職場の先輩や後輩です。特にメンタルヘルス不調者対応の「要(かなめ)」は、職場の管理者である上司の役割です。上司として部下のやる気を引き出し、組織に一体感を出し、いきいきとした「職場作り」がメンタルヘルス対策になるという意識を持って対応していくことが重要なのです。

 当社が提供する管理者向けのメンタルヘルス学習教材では、「あるあるシーン」ごとに実践につながる具体的な対応方法が学習できます。日頃の取り組みが業務パフォーマンスの向上や職場の活性化につながりますので、正しい知識を身につけて、いきいきとした職場づくりを目指していきましょう。

著者紹介:村田佳子

村田佳子

2006年から、コーチング研修やインストラクター育成を担当。「部下を元気にする」ための研修を新任管理者向けに多数実施。豊富な教育設計の経験を生かし、さまざまなeラーニング教材を開発、受講者から「学んでよかった」と思われる設計ノウハウを指導している。見るのもやるのもゴルフが趣味。競技大会で予選突破することが現在の目標。


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