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「人とロボットの協働時代」。人材育成が企業の競争源泉となる ーーRPA BANK独占取材_Neuralify社に聞く

» 2018年12月26日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

RPA BANKが2018年6月、会員企業720社を対象に実施したアンケート調査によると、RPAを本格展開させる上での課題として最も多く挙げられたのは「開発者不足・開発スキル不足」(34%)であった。

RPAの内製化、定着あるいは拡大を図るうえで、人材不足・育成の課題が、日本企業のインテリジェントオートメーション(IA)を促進するうえでの障壁となっていることが明示された結果と言えるだろう。

この人材不足・育成の問題に、RPA教育サービスを通じてユーザーの課題解決に取り組んでいる企業がある。日本ではまだ馴染みのない「Neuralify社」(米国、マサチューセッツ州)だ。

同社は、RPAの導入と運用を定着させるための教育サービスを提供しており、ITサービス産業や企業の分析で世界的な権威でもある調査会社「HfS Research(米国)」が発表した「The HFS Hot Vendors Q3 2018」(2018年10月)において、企業のデジタライゼーションを進化発展させる上で、特筆すべきアプローチと高い効果実績をもたらしているベンダー6社をあげ、その1社に選ばれている。

参考:「The HFS Hot Vendors Q3 2018」HfS Research Ltd.社発行(2018年10月)

今回、RPA BANKでは日本未進出ながら、グローバルで高い評価を受けている同社のCEO、ジョン モネ氏に、日本RPA市場の開発者不足・開発スキル不足の問題と打開策のポイントについて聞いた。

「人材育成」がRPA普及定着の鍵となる

――まずジョン氏のこれまでのキャリアについてお聞かせてください。また、Neuralify社をたちあげられた背景やきっかけについてもお聞かせください。

ジョン モネ氏: 私はこれまで主にソフトウェアを中心とするプロダクト戦略開発のエキスパートとして、様々な企業の経営マネジメントやスタートアップの経営コンサルティングに携わってきました。

Neuralifyを立ち上げたきっかけですが、ホワイトカラーの業務変革を実現するRPAの存在を知った時、次の10年を大きく変える革新的なものになるに違いないという確信を抱くと同時に、これまでのキャリアの経験から、RPAが定着するにはヒトのスキルのアップデート(人材の育成)が欠かせないと感じました。

このRPAに対する期待と越えなくてはいけない人材育成の課題との間にあるギャップを埋めることを使命に、立ち上げたのがNeuralifyです。

RPAに取り組まれているみなさんには周知にことと思いますが、最小限の投資と開発で業務効率化や生産性向上を実現できるのがRPAであり即効性のある効果と自動化をもたらしてくれます。

私たちは、このRPAの取り組みの成功の鍵となるのは、RPAをだれでも当たり前のように使える一般化にあると私たちは見ています。つまり、繰り返しになりますが、人材の育成が重要であると考えています。

RPAのリターンを最大化するには、企業はロボット開発ができる人材、ロボットの運用を担える人材、そしてロボットと人が協働することを前提としたビジネスデザインが描ける人材の教育を行い、RPAをはじめとする今後さらに発展していく様々なテクノロジーを活用できるようにしなければなりません。

しかし、RPAの定着と拡大を阻害しているのは、ベンダーによる支援体制や品質にばらつきのあるサポートに起因するところがあります。

重要なのは、現場従業員に対する適切で、継続的に教育を続けられる環境の提供になりますが、現在のRPA市場の課題が一気に拡大しない課題はここにあります。

「人とロボットの協働」が前提となる時代。継続的に学べる環境が必要

――人材育成のための教育が重要になるということですね。RPA市場にはいくつか教育サービスも展開されていますが、具体的にどのような点に課題があるとお考えでしょうか。

ジョン モネ氏: 現場担当者が、RPAのテクノロジーを活用し、自由にビジネスデザインできるようエンパワーメント(組織の構成員一人ひとりがスキルを身につける)していくことが重要となりますが、課題は2つあります。

1つ目の課題は、RPAの教育コンテンツです。現在のRPA教育コンテンツは、IT部門などエンジニア向けに限定されてしまい、さらにはソフトウェアの機能面を学ぶだけに留まってしまいがちなことです。RPAの本質は、各部門の現場担当者が、自らロボットを開発していく”シチズン・デベロッパー”のコンセプトです。従来のようにITスタッフだけに専門性の高いトレーニングを行うスタイルは、RPAには不向きです。

2つ目の課題は、組織全体に技術の教育を行うのはまだ一般的になっていないという現状です。シチズン・デベロッパー実現するには、これまでよりも大規模に、大量の従業員を教育することが必要になります。一箇所に人員を集めて研修を行うというよう従来の方法では、限界であり、成功には繋がりません。

――御社ではこの課題について、どのようなアプローチをとられているのでしょうか。

ジョン モネ氏: 当社では新たなデジタル学習プラットフォーム「Neuralify University」の提供を通じて、シチズン・デベロッパー実現のお手伝いをさせていただいています。

Neuralify Universityは、オンデマンドで実際に操作して学ぶことを可能にする学習プラットフォームです。実践をベースとしており、専門家によるフィードバックなどサポートを合わせて提供しています。また、実際に触れて覚えられるハンズオン式のトレーニングなどより効率的に多くを学ぶことができる実用的な体験を得ていただけることが特徴です。

  • Intelligent Automation LabやSPECTRE Simulatorの環境においては、スキルをさらに高めるための自動サンプルの提供、そして書かれたコードに対する精確かつスピーディで高品質なリアルタイムの評価、およびそのフィードバックを提供
  • Games Arenaでは、ユーザーが互いに競い合うことのできる課題を提供。
  • 管理職の方に向けたレポーティングおよび分析機能も提供。一人ひとりの技術に関するスキルやパフォーマンス測定について、詳細なデータを確認することが可能。

――ありがとうございます。ここで具体的に、他社サービスとの大きな違いについて教えてください。

ジョン モネ氏: 今回Neuralifyが「The HFS Hot Vendors Q3 2018」にて評価されたのは、RPAユーザー企業におけるRPAの活用を定着させ、加速させることを可能にする点において評価されたと考えています。

Neuralifyのプラットフォームは業界においてもユニークで、信用できるパートナーとともに築き上げた専門知識により、クライアントの皆様のRPA活用を拡大していくことが可能です。

Neuralifyは、非技術分野の現場担当者を含めたあらゆるユーザータイプに対する持続的学習とサポートを世界規模で提供可能にしている点が最大の強みだと捉えています。

RPAの課題を解決できれば、日本の生産性の改善が見えてくる

――グローバルでRPAを見られているジョン氏ですが、先進国の中で最低とされる日本の生産性について、その原因はどこにあるとお考えでしょうか。

ジョン モネ氏: 日本はこれまで、日本市場に特化した独自のITシステムを開発してきました。こうしたレガシーなITシステムの多くはオープンなソフトウェアプラットフォームと互換性がない、ここに生産性が伸び悩んでしまっている原因があると見ています。

RPAにより、日本の生産性成長は革新的変化を遂げるチャンスを得られるでしょう。こうしたレガシーなITシステム間のワークフローを繋ぎ、自動化することで、高い生産性を実現することも期待できるでしょう。

――日本のRPA市場をどのように見ていますか? また、他RPA市場と比べて日本のRPA市場に見られる特徴はありますでしょうか。

ジョン モネ氏: 当社は、日本は米国に続く世界で二番目に大きなRPA市場になると考えています。日本には少子高齢化や労働コストの高さといった課題があります。

一方で、ここに機会があると考えています。これから少子高齢化を迎える国は多くあり、日本はそのモデルとなりえること、そして人を介在したオペレーションを組んでいた多くの単純労働のコストが低減できることから、日本のRPAの取り組みを通じたROI(投資利益率)は他の国よりも平均値よりも高くなることが期待されます。

――日本の市場に対する今後の計画やロードマップがありましたらお聞かせください。

Neuralifyは、世界でも類をみないスピードでRPAが普及している日本市場について、顕在化してきた人材育成という課題に、大いに貢献できる機会があると考えています。

中期計画に基づき、に我々のプラットフォームを日本国内全域でも提供できるよう現在サポート体制の構築を進めています。

――RPAの普及定着において、人材育成の重要性がよく分かりました。本日はありがとうございました。

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