「大丸」や「松坂屋」といった百貨店、「PARCO」などの商業施設を全国で展開するJ.フロント リテイリングは、2016年にRPAを導入して48業務で年間4600時間分の削減に成功した。順調に思えた業務改善だが、実態は「無人島に取り残されたような状態」に陥った。
山積する課題に対し、「ロボット作成の『内製化』による開発スピード倍増」を打ち出す。ここでいう内製化とは、外注による開発から社内の開発部隊による独自開発に移行することではない。「Microsoft Excelの式は書けてもマクロは書けない」レベルの現場スタッフでもロボットを作れる状態の実現だ。同社の挑戦を紹介しよう。
本稿はRPAテクノロジーズ主催「BizRobo! LAND 2018 Tokyo」で行われた講演「外注依存から脱却しロボット開発を内製化した、その手法にまつわるちょっと技術的な話」を基にしています。
「RPAはコンサルタントの力を借りて導入したのですが、実際の運用フェーズに入るとどこに他のユーザーがいるのか分からず無人島に取り残された状態になります。もっと効率的な方法があるのではと思っても確認のしようがない。RPAの取り組みは常にそうしたジレンマと背中合わせでした」
こう振り返るのは、J.フロント リテイリング 業務統括部 シェアードサービス推進部の石井勝也氏だ。同社のロボット開発はIT部門の4人でスタートしたが、1年あまり運用を続ける中で内製は絶滅の危機に瀕した。
そこで「内製化」を再定義し、今後1年間で100業務を対象として1万時間を削減することを目標と定めた。「内製化とは情報システム部がITベンダーに依存せずに開発するという意味ではなく、ITスキルが高くない人でも開発できることを指します。例えばExcelの式は書けてもマクロは扱えないという人がロボットを作れる状態です」(石井氏)
課題は3つに大別できた。トータルコストが下がるのかを考えずに「何でもRPA化」してしまうこと、社内で設計だけ済ませて後は「何でも社外エンジニア頼り」だったこと、IT部門が全く関与しないところで開発が行われる「技術的な無法地帯」だったことだ。
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