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ライセンス監査を受けた企業の60%以上で追加費用が発生すご腕アナリスト市場予測(5/5 ページ)

» 2018年09月26日 10時00分 公開
[海老名 剛ガートナー ジャパン]
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監査リスクはソフトウェア契約も含めて考えることが必要

 ライセンス監査の実態について見てきたが、監査対応のリスクを考えるためには、そもそもソフトウェアの契約交渉も含めたうえで見ていく必要があるのは間違いない。契約の中で自社の運用に適したシナリオでライセンス契約できれば、監査の際に不正を指摘されたり追加費用が発生したりするようなことには最小限におさえることができるはずだ。

 当然ながら、まずは正しい契約をきちんと行うことが大前提となるが、そのためにも確認しておくべきことや交渉タイミングなども含めたフレームワークを意識しておきたいところだろう。ここでは「契約のタイミング」「契約の条件」「契約の“型”」「“戦術的”な競争環境の創出」の4つがポイントになってくる。

ソフトウェア契約で交渉力を高めるためのフレームワーク 図3 ソフトウェア契約で交渉力を高めるためのフレームワーク(出典:ガートナー ジャパン)

 契約のタイミングについては、当然ソフトウェアベンダーの決算期前に交渉したほうが優位に立てる可能性があり、そのタイミングをしっかり見極めることが交渉力を高めることにつながる。また契約の条件は、解釈の違いが生まれやすい用語についてしっかりとソフトウェアベンダーに確認し、リスクが回避できるような契約を行うことが重要だ。契約の型については、デリバリー方法やライセンス期間、メトリック、メニューなど、オプションも含めて自社が契約できる形態を全て確認し、自社の運用に適した形で契約していくことが大切だ。ソフトウェアベンダーの中にはある特定の方法で契約することを要求してくるケースもあるが、それが自社の運用にとって本当に最適なものなのかをしっかり吟味すべきだろう。そして戦術的な競争環境の創出については、特定のベンダーに頼る状況からは脱却し、たとえ部分的であってもほかのベンダーに切り替える余地を持っておくことが、ベンダーとの緊張関係を生み出し、交渉力を高めることに貢献してくれる。

 ただし、ベンダーとの関係を悪化させるのではなく、ルールに従った形で選択肢を持つことが重要だ。敵対関係ではなく、協力できる環境を作り上げていくことで、適切な緊張関係を構築することが求められてくる。

クラウド時代に備えた人材育成

 多くの企業がクラウドを採用する今の時代にあって、好むと好まざるにかかわらず、最終的にはクラウド化の流れを見据えて現実的な計画を考える必要があり、そのためにはソフトウェアベンダーとしっかり交渉できる専門の人材を育成していくことが重要になってくるだろう。

 ここで、専門人材の育成に関して課題となるのが、専門職に見合った仕事が1年を通じて提供できるかどうかだ。前述した通り、クラウドへ移行すると契約内容に関する交渉の機会や頻度が増えることはもちろん、各ソフトウェアベンダーとの交渉タイミングとしてベストな決算期前も海外ベンダーでは時期がずれていることが多く、年間を通じて専門性を発揮することが可能なはずだ。自社が利用するクラウドサービスを提供するソフトウェアベンダーの決算期をスケジュールに落とし込んだうえで活動計画の中に組み込むことで、専門性を有した人材を育成する価値は出てくるだろう。

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