連載
» 2018年09月19日 10時00分 公開

電池切れ解消の究極技術「ワイヤレス電力伝送(WPT)」とは?5分で分かる最新キーワード解説(3/4 ページ)

[土肥正弘,ドキュメント工房]

マイクロ波空間伝送型WPTへの日本の取り組みと将来像

 WPT技術開発について日本は世界でも特に積極的だ。内閣府が推進している戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の第2期(2018年から5年計画)が始動しているところだが、その「脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム」領域の重要テーマに高効率ワイヤレス送電技術が含まれている。

 サブプログラムディレクターを務める東芝の庄木裕樹氏は、「WPTはものづくりの方法や概念を変えていく可能性がある」とし、「国際競争力強化のため、既に世界上位にある研究開発、標準規格化への取り組みを強化していく必要がある。WPTの適用範囲の広さに比べて実用化範囲はまだ限定的。遠距離、大電力、高効率のWPT技術開発に、産官学連携で挑戦する」と意気込みを語る。

 このプログラムの中でマイクロ波空間伝送技術を用いた屋内給電と、ドローンへの給電の両技術の研究開発には明確な目標が掲げられている。屋内給電に関しては、最大20ワット、送電可能な時間率50%の達成が目標だ。

 しかも人体や他システムへの影響(健康上の影響や電波干渉など)を避けるための人体検出および回避技術、他システム検出および干渉回避制御技術、高効率化技術、複数端末への同時伝送技術などを同時に高度化していくという。これはオフィス内のスマートフォン全部が無線で常時充電できる夢の世界実現の第一歩だ。

 ドローンに関しては、何と1キロワットクラスの送電を行い、伝送距離10メートルでの受電効率70%が目標だ。これにはビーム方向の精密な制御、機器干渉回避技術の高度化が必要だ。また駐機状態では近距離WPTによる数百Wクラスの電力伝送を目標にしている。

 プログラムの期限である5年後までにこれらの技術開発が進めば、商用化は目前だ。ただし「その前に制度化が必要」だと庄木氏は言う。「世界に先駆けてマイクロ波空間伝送型WPTの制度を2020年に向けて整えるべきだ。20ワットクラスの送電ができれば、10メートル程度離れたところのデバイスで数百ミリワットの受電ができる。センサーなら1ミリワットで十分な場合もある。まずはこのクラスの電力伝送を実現させ、次に屋外利用に進めていきたい」。

 現在のところ、利用周波数帯候補として920MHz帯、2.4GHz帯、5.7GHz帯、空中線電力1〜20ワット、アンテナ利得5dBi〜30dBiを想定した屋内利用技術を開発、実証し、2020年度には実用化・商用化に持っていきたい考えだ。屋外利用に関しては2022年度以降の商用化を見込んでいる。

 WPTに関して日本には世界をリードできる技術が既にあるとはいえ、特にマイクロ波空間伝送型WPTにはより低コスト、コンパクトで大電力が扱えるパワー半導体や各種電波制御技術が必要になり、前途には制度化や安全性確保の方法などの険しい道が待っている。一筋縄ではいかないかもしれないが、早期の実用化に向けて研究が加速することを祈る。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

ホワイトペーパーや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。