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» 2018年08月29日 10時00分 公開

イベントレポートアーカイブ:ROIの高い業務はパンドラの箱、RPAしくじり先生ノート (1/3)

自らを「しくじり先生」と名乗り、自社のRPA導入事例の失敗を語る人物がいる。ディップでRPA導入を進める進藤氏は、自らが経験した苦い教訓を基に、導入を成功させるためのポイントを偽りなく語った。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

 RPA普及が進む中、大きな成果を上げた成功事例が脚光を浴びる一方、その陰で失敗事例も生まれている。そんな「しくじり」事例なかなかは公表されず、教訓を共有する機会も少ない。だが、自らを「しくじり先生」と名乗り、自社のRPA導入事例の失敗を語る人物がいる。

 「バイトル」をはじめ複数の人材サービスを提供するディップで次世代事業準備室の室長を務める進藤圭氏だ。進藤は、「RPAのしくじりはほとんど人の問題」と話し、同社のRPA導入で得た苦い教訓を基に、RPA導入を成功させるためのポイントを偽りなく語った。その中には「ROIの高い順に業務を選んではいけない」など、RPAの通説を覆すような内容もある。以下で詳しく説明しよう。

RPA導入失敗を生む「要注意ワード」のわな

 「弊社はRPAの導入、展開において3つの『しくじり』をした。皆さんは、その失敗からの教訓を生かして、失敗しないRPA活用を明日からでもスタートしてほしい」と、同社で新規事業開発を担当する進藤氏は語りかけた。現在はクラウド型RPAツールを用いて、従業員の時間を創出するなどの成果を出す同社だが、そこに至るまでの道のりは平たんなものではなかった。

 「しくじり」を招いたのは、「働き方改革をはじめよう」「某社の事例では○%の業務改善を実現した」「ROIが大きい業務からRPA化しよう」というワードだと進藤氏は話す。これらの表現は、RPAを語る上で必ず登場するものだが、どのような失敗につながったというのだろうか。

進藤 圭氏 ディップ 次世代事業準備室 進藤 圭氏

本稿は2018年7月4日に開催されたイベント「RPA DIGITAL WORLD」(主催:セグメント)における講演「RPAしくじり先生が語る『ウチでも明日から始められる!』RPA」の講演内容を元に構成した。

「働き方改革」という表現で現場の反発を招く

 1つ目の要注意ワードは「働き方改革をはじめよう」。同社もRPA導入のコンセプトを「働き方改革」に据えてRPAの意義を発信したが、これが失敗を招いた。ともすれば上から目線のニュアンスを含む働き方改革という言葉によって、多くの社員からそっぽを向かれたのだ。

 「『改革』という言葉は、現状に問題があるという意味を含む。働き方改革を掲げることは、現場の仕事の効率が悪いと言うのと同じこと。言われたほうは面白くない」(進藤氏)

 「働き方改革」を掲げる側は気分がよい一方で、言われる側は内心で反発していることが多いと進藤氏は述べる。RPA導入の成否は、現場のモチベーションによって大きく左右されるため、現場がツール利用に反発を感じるようでは効果を出せない。

自社の身の丈に合わない事例を踏襲

 2つ目の要注意ワードは「某社は◯◯パーセントの業務効率化を達成」。よく耳にする文句だが、先行企業の成功事例をうのみにしてそのまま自社に当てはめようとすると、思うような成果を得られないと進藤氏は話す。

 「自社と事業が異なり、規模も違い、社員のスキルも違う企業で成功したアプローチが自社でも有効だと考えると、落とし穴にはまります。特に、優秀で真面目な管理職ほど、先行事例のケーススタディーのわなにはまりがちです」(進藤氏)

 例えば、自社のニーズに合わないRPAツールを採用してしまうというリスクがある。ツールの選定を間違えれば投資対効果は挙がらない。実際に同社も、当初は自社開発のRPA活用を目指し、その後はオンプレミス型のRPAパッケージを試したが、どちらもROIがかんばしくなかった。最終的に、クラウド型ツール(BizteX cobit)の利用を決め、効果を上げている。

 他企業の事例を参考にする際には、「ダイエット」と一緒で、紹介されているツールやアプローチが自社に合っているのか、その企業特有のケースではないのか、背伸びが必要なモデルケースではないかを考える必要があると進藤氏は強調した。

経営陣は成果を待てない――ROIの大きい業務で運用につまずく

 3つ目の要注意ワードは「ROIが大きくなると想定できる業務からRPAを適用しよう」だ。通常、RPA化する業務は、投資対効果の出やすいボリュームの大きいものを選ぶことが定石だ。実際に、テストの段階まではこの方法で成功することが多い。

 しかし、テストでの効果検証が終わり、いざ本格展開に進むとなると、予期しないトラブルによってRPAの改修やメンテナンスが必要になる場面が必ず出てくる。ボリュームの大きい業務ほど改修に時間がかかるため、RPAの導入によって現場が余計に忙しくなるということにもなりかねないと進藤氏は警告した。

 「RPAは必ずミスを犯すので、ロボットの仕事を人が監督し、メンテナンスをすることが必要です。企業はその運用を続ける余力があるかどうか問われることになります。かえって現場の負担が増えるということもあるのです」(進藤氏)

 また、一般に効率化効果の大きいロボットほどコストもかかるため、投資回収には時間がかかる。経営陣は効果が出るまで悠長には待ってくれない。また、仮に開発や運用が現場の手に負えず外注したり、人員を雇ったりすれば、さらなる投資が必要になり、「ダブルコスト」が発生する。

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