メディア

見えてきた「5G」の世界、フェーズ1仕様とは?5分で分かる最新キーワード解説(2/4 ページ)

» 2018年07月18日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

「5G」の主な要求事項

 以上のユースケースごとに「5G」の要求事項をまとめたのが表1だ。ただしここに掲げられているのは、いわば努力目標であり、2020年にこの全てが実現するとは限らない。徐々にこうした数字に近づいていけるように、技術開発が将来的にも続いていくという、目安の数字として捉えてほしい。

「5G」通信規格の主な要求事項 表1 「5G」通信規格の主な要求事項

実際の「5G」への移行はどうなるのか?

 さて、ここで気を付けなければいけないのは、こうした性能や機能は「5G」用の新しい周波数帯を用いることを前提としていることだ。

 NR技術は数百MHz帯から30GHz帯までの広い範囲の周波数帯をターゲットにして無線アクセス方式を一から考え直したものである。しかし先進的だからといって、既存の通信サービスをなくして一気にNRに移行する選択は現実的にはあり得ない。そこで、移行シナリオは次のように描かれている。

4Gの拡張、高度化

 現在LTE基地局は4Gコアネットワーク(EPC:Evolved Packet Core)に接続している。その形態のまま、キャリアアグリゲーションや多値変調方式(256QAMなど)による高速化を進めて高度化しつつ、高スループットで面的なエリアカバレージを展開するとともに、NB-IoTをはじめとする低電力・広域利用可能なLPWA領域のユースケースのサポートも果たそうとしている。

5G導入初期段階:LTEとNRの併存、連携

 2020年に商用展開が有望視されているのは、4Gコアネットワークの配下にNR基地局を位置付けるシナリオだ。NR基地局は単独ではなくLTE基地局と連携して稼働するため「ノンスタンドアローン5G」と呼ばれる。既に広いエリアをカバーして安定したサービスを提供している4Gコアネットワークを利用しながら、高速、大容量通信や多端末接続のニーズの高いエリアにNR基地局を立てて、NRならではの優れた特長を生かす構成である(図1のシナリオ0からシナリオ1への展開)。言い換えれば、LTE基地局のカバーエリア内で、ニーズがあるところだけ局所的にNRをアドオンする方法だ。

5G無線/コアネットワーク導入、展開シナリオ 図2 5G無線/コアネットワーク導入、展開シナリオ(出典:NTTドコモ「テクニカルジャーナルvol.25」)

 こうして新規設計や試験などへの投資を抑えながら、安定した品質で「5G」導入がスタートすれば、NRを利用したIoTサービスなどが活発化し、「5G」の技術的トピックの1つである「Massive MIMO」などの技術導入も加速すると考えられる。

5Gコアネットワークへの切り替え

 その後、2020年代のどこかのタイミングで、コアネットワークをNR対応の5Gコアネットワークに切り替える。5Gコアネットワークは、上述した全ての要求条件に対応し、ネットワークを目的に応じて最適に分割して使えるネットワークスライシングに対応するものでなければならない。

 切り替えが実現した時点で「5G」の普及期に突入すると思われるが、どのような形態をとるかは通信業者の思惑次第だ。図2のシナリオ1a、2a、2bに、LTEとの共存シナリオが示されている。5Gコアネットワークを利用した場合でも、LTE基地局をそのまま収容するケース、ノンスタンドアローン5Gを利用するケースがありうる。また、NR基地局がコアネットワークと制御情報もユーザーデータもやりとりする「スタンドアローン5G」(図2のシナリオ3および2a)が登場するのもこのタイミングである。

 なお、高周波数帯を利用する場合、電波伝搬特性から従来のLTE基地局のように広い範囲をカバーできない場合が多いため、「スモールセル」の活用も「5G」のキーポイントの1つになると考えられている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。